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垣根の上のキミ  作者: 霧島遠夜
プロローグ
1/11

魔女さまの序章

初投稿になります。拙い文章なので、苦手な方はお戻りください。

気軽、手軽に楽しんでいただけると嬉しいです。

 深紅の絨毯と幾重にも重なる刺繍の施されたカーテン。大理石でできた白く輝くつるつるの床。豪奢な調度品と立ち並ぶ近衛騎士。しかし絨毯の先、中央の壇上にある椅子だけは簡素な造りで、少しくすんでいる。いくら丁重に扱っても200年以上使われ続けた椅子はくすむのだ。これがトトロフ王国の玉座であり、そこに座っているのが現国王である。

「しかし、あれだな。あんなちっちゃかったルハナンが、立派になったもんだよなあ……」

 しかし彼は威厳ある国王というよりも、近所の酒場のちょっと太いが気前のいいおっちゃんに似ている。わたしにしみじみと語りかけながら、目が赤くなっていた。

「あなた、お祝いを言うのが先ですよ。ルハナン、今日から正式な精霊魔術師ね。おめでとう。私、とっても誇らしく思っているわ」

 嘆息まじりに国王に言いながら、傍に控えていた王妃が微笑えんでくださった。30歳半ばでいらっしゃるけれど、若々しい……というより、とても可愛らしい。そんな風に微笑まれると、わたしがどきどきしてしまう。王妃がユリの花なら、わたしはきっとじゃがいもだ。せめて花のほうではいたいけれど。

「ありがとうございます。頑張ります」

 裾を震える手でつまんで正式な礼をとる。緊張しすぎて微妙に返答が噛み合わないけれど、大目に見ていただきたい。

 わたし――ルハナン・クロストは、今日から正式な精霊魔術師だ。魔術師になるためには、師匠のもとで幼いころから修行をし、成年で国家試験を受けなければならない。合格してはじめて正式な資格と魔術を扱う権利が与えられる。資格なく魔術を行えば、長い地下牢生活が待っているのだ。

 しかし、なってしまえばこっちのもん、とは師匠の言だけれど、多くの特権と国からの給与がある。元々は特権もなくたいした額ではなかったらしいが、魔術が消え始め魔術師がレアになり始めているので、今ではしっかり裕福層。基本魔術の好きな研究をしながら、たまに来る依頼をこなす気ままで皆の人気職業だ。

 魔術の素養を見出され、生まれたときから師匠のもとで修業してきたから、この日が待ち遠しくて長かった。

 国王はすっと玉座を降り、階下のわたしへ小箱をぽんぽんと手渡す。

「ピアスだ。これがお前の魔術師の証明で、まぁ、お守りにもなるな。龍の血ってよばれる珍しい鉱石だからかっこいいけど重いぞ。耳、気をつけろよ」

「あなた!もうちょっと渡し方があるでしょう!せっかくの任命式で、ルハナンだって記念の日なのに。もっと嬉しくなるような演出くらいして下さい」

 あまりの気軽さに王妃が目を吊り上げる。でも怖くない……というか、やっぱり可愛く見えてしまうのを王妃は知らないのだろう。

 わたしのために怒ってくださることをちょっと嬉しく思う。

「いえ、十分嬉しいです。ありがとうございます」

 だから今度は緊張せず、自然に笑顔になりながらお礼を言えた。小箱をしっかりと胸に抱く。

 国王はそんなわたしに目をうるうるさせながら、

「旅は辛いだろうが……いつでも帰ってきていいんだぞ?たまには城に顔を見せるんだぞ?知らない人についていっちゃだめだぞ?ご飯はしっかりたべて、体調管理が大事だからな?」

 なんだか幼児の親みたいな発言はおいといて、

「……わたし、旅をする予定なんてあるんでしたっけ?」



 基本は教えたし、試験勉強は自分でやるものよー。

 との書置きを残し、師匠が蒸発したのが2年前。当然教えてもらえなかった魔術師新人研修大陸ぐるっと一周の旅を出発前日に聞かされた。

 新魔術師は修行がてら大陸を1周するのだと。

 魔術師の試練で、旅費は国負担だけれど、危険さゆえに帰還者は少ないのだと。

 もう生きてはいないと思われるころにひょっこり帰ってくる人も多いとか。

 ちなみに師匠は1年で帰ってきたとか。

 よし、わかった。わたしは半年で帰ってきてやる。それがわたしの目指す『魔女』への第一歩。

 

 これは海の果てにある隠された大陸で旅をはじめた、『魔女』を目指すわたしの、きっとサクセスストーリー。


 

 

緊張している主人公より緊張して投稿中です。

権威(王妃)の前ではおとなしいけれど、きっと次回から暴れる主人公。応援してやってください。

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