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第15話 新しい友達

あっという間に王立大学の入学式当日を迎えた。


大講堂では荘厳な雰囲気の中、式が粛々と進む。


「新入生諸君──この国を背負う者として、誇りを持って学んでください」


学長の言葉は厳かで、どこか選民意識を帯びていた。


「これより暫定的な所属クラスを発表します。正式なクラス編成は三ヶ月後の実技評価をもって決定されますが、それまでは指定されたクラスで授業を受けてもらいます」


読み上げられた名前の中に、「ミナ・タカハシ」という名があり、第二クラスと告げられた。


ざわめく周囲から、耳に残る声が聞こえてくる。


「ねぇ、あっちにいるの、あれよね?あの方の妹がいるクラスじゃない?」


「え、誰?」


「ほら、Sクラス主席で公爵家のご令息、アラン=フォン・エイベル様よ。その妹のファシリア様が今年入学されたらしいわ」


「ああ、性格が最悪って有名な人よね!お兄様はお優しい方だって聞くけど」


「そうそう。でも、妹もSクラスほぼ確定らしいよ」


この大学では、実技試験の結果によって、学生はS~Eクラスに振り分けられる。Sクラスが最も実力のあるクラスで、毎年約300人いる学生の中でも15名に満たないと言われている。


(三ヶ月だけだとしても、面倒くさそうな人と同じクラスになるのは嫌だな。自分を守るためにも、貴族同士の関係や権力図を勉強しておいたほうがいいかも)


視線を向けると、確かに明らかに場慣れした貴族の女性が余裕の表情で座っていた。






暫定クラスごとに分けられ、講堂で待機していると、近くに座っていた茶髪で落ち着いた少女が、やわらかい声をかけてきた。


「すみません。こちら第二クラスの待機場所で間違いないですか?」


「はい、そうだと思います」


「よかった。ありがとうございます。私、セシル・レイドと申します。もしかして、あなたも第二クラスですか?」


「はい!そうです!私はミナと申します」


「よかった⋯⋯!知らない人ばかりで緊張していたので、お話しできて嬉しいです」


──そのとき。


「⋯⋯いまレイドって言ったか?もしかして、お前、一般入試で入ったのか?」


緑の髪を短く整えた男が、腕を組んで不機嫌そうにセシルを見下ろしていた。


この大学は推薦入学が基本で、全体の九割以上を占める。そして、残りの一割は「庶民でも才能があれば入れる」という一般入試制度、いわゆる平等政策枠というものがある。


けれど、その一割に選ばれるには桁違いの実力が必要だ。魔力量も制御能力も、下手な貴族以上の水準が求められる。もし一般入試で入学した子に出会ったなら、その人は間違いなくAクラス以上の実力者だと推測できる。


(セシルちゃん、一般入学なのかな?もしそうなら、かなりの実力者ってことになる⋯⋯けど⋯⋯)


「いきなり何でしょうか?」


「俺は質問してんだ」


「あなたに関係ありません」


(なんでこんな雰囲気悪いの⋯⋯)


二人は知り合いかと思ったけどそうではなさそうだ。


(この人も突然女の子に突っかかって何がしたいんだろう。でも、なぜか悪意は感じない)


さらに背後から、冷ややかな声が割り込む。


「一般入学とか聞こえてきたけど、あなた本当なの?」


(待って。この人ってさっき噂されていた公爵令嬢じゃ⋯⋯ )


「⋯⋯ ファシリア様⋯⋯」


セシルは睨み返しながらも、答えに迷っているように見えた。


「質問に答えなさい」


「⋯⋯はい」


「あら、そうなのね。私、庶民の方と話すのは初めてだわ。一つ疑問があるのだけど、自分が王立大学に入学するのは場違いだと思わなかったの?」


「あ、あの!そんな言い方はよくないんじゃ──」


さすがに我慢の限界を迎え、止めようとしたその時、心配は不要だと悟った。


「いえ、私はきちんと正式な手順を踏んで入学しましたので」


セシルが自分で、きっぱり答えた。


「あら、そう。それであなたは?」


セシルが期待したような反応を見せなかったのが気に入らなかったのか、ファシリアは今度は射抜くような目で私を見た。


「わ、私ですか⋯⋯?」


「あなた以外に誰がいるの?まあ、あなたも見たところ彼女と同じ平民枠でしょうね。わざわざ自分で言うのは恥ずかしかったかしら」


「⋯⋯はい」


(こういう誰にでもつっかかるマウント系令嬢って本当にいるんだ。しかも、私の場合、平民なのに推薦入試で入学したから、バレたらもっとめんどくさいことになりそう。適当に流すのが一番だ⋯⋯)


「ファシリア様はなんてお優しいの!平民にまでお声をかけてくださるなんて!あなたたち、感謝なさい!」


取り巻きが一斉に声を上げる。


「私たちは、どこの馬の骨ともわからない子と同じ教室にいるのは耐え難いの。学長様もなぜ一般入試という入学方式を増やしたのかしら」


「本当よね。後々クラス分けで別になったとしても、三ヶ月同じ教室で授業を受けると思うと寒気がするわ」


あまりにあからさまな悪意に、どう返せばいいのかわからない。


(最悪だ⋯⋯六クラスある中でまさかの彼女たちと同じ第二クラスなのか⋯⋯)


「せいぜい大学生活楽しみなさいね」


ファシリアは鼻で笑い、取り巻きを連れて去っていった。


様子を見ていた、最初に声をかけた緑髪の男がぽつりとつぶやく。


「初日にあいつに目をつけられるなんて、ついてないな」


「あなたが先に絡んできたんじゃないですか」


セシルが即座に言い返した。


「いや、俺はイーサン・レイドって名前を昔、取引商人から聞いたことがあって、関係あるのかと思っただけだ」


「え?父のことを知ってるの?」


「ああ、俺の家の取引先で、世話になったことがあるから」


「そう⋯⋯」


2人の間に沈黙が落ちる。


「俺はディラン」


「⋯⋯セシル」


「小せえ声だな。まあいい、セシルか。いい名前だな。それでお前は?」


ディランがこちらに視線を向ける。


「私はミナです」


セシルがくすっと笑い、私に話しかけた。


「ミナちゃん、これからよろしく」


「こちらこそ、よろしく」


このクラスはかなり大変そうだと思ったが、セシルがいるなら何とかやっていけそうだ。ディランという男も、悪い人ではなさそうだった。

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