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第1話「地球は愛の星」後編

「くそぉ……ラブレンジャーどもめ! 所詮はお前らだって金のために戦っているくせに!金は良いぞ! 正義のために戦うよりも、よっぽど楽しいじゃないか! そうだろお前たち!」

 オッカネーの呼びかけに人々は歓喜の声を上げる。

 人々の目にはいつのまにか妖しい輝きが灯っていた。


 人々を前にオッカネーは続ける。

「金があれば何でも手に入る! お前らだって欲しい物が買えるし、行きたい所にも行けるだろう? 美味しい食べ物だって食べられる!」

 オッカネーの言葉に人々は歓喜の声を上げる。

 そんな人々の様子にオッカネーはほくそ笑んだ。

 人々が目をギラギラさせて金や食べ物に思いを馳せているのを見て、オッカネーはニヤリと笑う。


 そして人々にさらに言う。

「いいかお前たち! 今、お前たちが欲しいものを言ってみろ!」

 人々は即座に答えた。

「お金!」

「食べ物!」

「豪邸!」

 オッカネーは更に続ける。

「今、お前たちが言ったものは金で全て手に入るんだ! さぁ金を奪うのだ!」



「いいや! 金で買えないものがこの世にはあるぜ!それは愛だ! 金では買えない、愛こそが、本当に大切なものなんだ!」

 ラブレッドの言葉に人々は一瞬動きを止める。


「お金さえあれば、幸せになれる!」

 群衆の中から誰かが叫んだ。

 その声に引きずられるように、人々の瞳がさらに濁っていく。


「みなさん思い出してください! 子供の頃はお金なんかなくたって毎日楽しかったはず! それはお母さんやお父さん、家族がいて、友達がいたからじゃないですか!?」

 ラブブルーの言葉に人々ははっとする。


 だが、ラブブルーの言葉が街に響いた瞬間——。

「……子供の頃……そんなもの、もう忘れてたな」

 老人の頬を、一筋の涙が伝った。


「みんな、思い出してくれ! 思い出を! 懐かしい場所や楽しい出来事を!」

 ラブイエローの言葉に人々は過去を振り返る。


 そして、ラブイエローの言葉にラブグリーンも続く。

「ぼくらの心には愛がある。みんなの心には愛がある」


「愛はお金より大事な物だと私は思うわ。だから愛が溢れるこの世の中を守るために、ラブレンジャーとして私たちは戦う!」

 4人に続いたラブピンクの言葉に、人々の目に光が戻ってくる。


「……楽しい……出来事……」

「わたしたちの心に……愛……」

 そしてついに正気を取り戻した人々が叫んだ。

「そうだよ皆! 思い出したよ! もう目先の金なんかいらないさ!」


 オッカネーはそんな人々の変貌ぶりに一瞬戸惑ったが、すぐに邪悪な笑みを取り戻した。

「何をバカなことを言っているんだお前たち! 愛なんて下らないもののために、金を捨てていいのか!?」

 しかし人々は、もうオッカネーの声に耳を傾けなかった。

「よぉし、世界を愛で包み込もうぜ!」

 ラブレッドが力強く叫ぶ。


 その時だった。

 金色の紙幣がふわりと宙に舞い、風が止む。

 空気が、まるで冷たく張りつめたガラスのように凍りつく。

「愛、愛、愛って……怪しい宗教みたいで笑えるね」

 オッカネーの後ろから漆黒のドレスに身を包む、白い髪と白い肌の美しく若い女性が現れる。

 その声は、微笑みと冷気を同時に含んでいた。


「エ、エヌ様!」

 オッカネーは即座にその女性の前に跪き、深々と頭を垂れた。

「だ、誰なの?」

 ラブピンクは、怪人が女性に平伏している様に驚いている。

「怪人オッカネーの発言から、彼女はディボーチ帝国の幹部の一人……エヌと思われます!」

 ラブブルーがピンクの問いに答えつつ、女性を警戒したように構える。


「へぇ……私のこと知ってくれてるんだ? 初めましてラブレンジャー。私はディボーチ帝国の大幹部、憎悪のエヌだよ。よろしくね?」

 エヌはにっこりと妖艶に微笑んだ。そしてオッカネーの隣に立ち、

「今日は挨拶に来たんだ。ヨークたちは簡単にやられちゃったけど、コイツはそう簡単にはいかないよ?」

 と言ってオッカネーにチラリと視線を送った。


「へっ! 金が一番大事なんて言ってる怪人なんかに俺たち愛の戦士が負けるか!」

 ラブレッドは自信に満ちた声でオッカネーを指さす。他のラブレンジャーたちも力強く頷いた。

「ふぅん。でもお前ら人間にとってお金は大事なものだよね。お金がないとできないことだらけじゃない? ご飯も食べられないし、家も借りられない」

 エヌの言葉に、ラブレンジャーたちは思わず怯む。


 しかしラブレッドが拳を握って叫んだ。

「確かにお金は大事だ! でも俺たちには愛がある!」

「あっはっはっはっはっ! 愛ねぇ。耳障りのいい言葉だけで私たちディボーチ帝国から世界を守れるのかな?」


「愛と正義の前に不可能はないんだ!」

 ラブレッドが言うと、ラブブルーも続く。

「そうです! 愛の力で我々はディボーチ帝国を打倒すると誓いました」

「へぇ、もっと問答してもいいんだけど……。今日は挨拶だけのつもりだったからねぇ。私はこの辺で失礼するよ。……おいオッカネー、この愛の盲信者どもを始末しろ」

「はっ!」

 エヌが命令すると、オッカネーは即座に立ち上がる。エヌの方は空間の裂け目のようなものの中に姿を消した。


「正義? 愛? そんなものは腹の足しにならねぇ! 金があれば飢えた子も救える! 愛じゃ腹は満たされねぇだろう!」

 オッカネーの声には妙な説得力があったが、ラブレンジャーたちの信念は揺るがない。


「よっしゃ! まずはアイツをなんとかするぞ!」

 ラブレンジャーたちはオッカネーに向かって構える。

「行くぜ! みんな!」

 ラブレッドの言葉に他の4人も力強くうなずいた。


「ラブリーソード!」

「ラブリーガン!」

 それぞれの攻撃がオッカネーを捉える。しかしオッカネーは怯まない。


「喰らえ! "マネースラッシャー"!」

 と手を横一文字に振るう。すると衝撃波がラブレンジャーたちを襲った。

「うわあああああ」

「きゃああああ」

 オッカネーの攻撃にラブレンジャーたちは吹き飛ばされる。

「ハッハッハッハッハ! どうだこれが金に物を言わせる力だ! "マネー大放出"!」

 オッカネーが両手を広げると、大量のお金や財宝が空から落ちてきた。そしてそれらはあっという間にオッカネーの体に吸収される。


「"マネーボール"!」

 すると今度は巨大な金貨や宝石の類が大量にラブレンジャーたちに襲い掛かった。

 その攻撃にラブレンジャーたちは再び吹き飛ばされる。

「どうだ! これが金の力だ!」

 オッカネーの勝ち誇るような声。


 しかし、その時だった——。

 人々が口々に叫ぶ!

「頑張れラブレンジャー!」

「負けるな~!!」

「愛の力で怪人をやっつけてくれ! ラブレンジャー!」

 その声援を受けてラブレンジャーたちは立ち上がる。


「聞こえるよな! 皆の愛の声援が!」

 ラブレッドが言うと他の4人もうなずく。

「行くぜみんな!」

 そして5人はオッカネーに立ち向かっていく。


「マネーボール!マネースラッシャー!」

 しかし今度は、オッカネーの攻撃をガードして凌いだラブレンジャー。 

 お返しとばかりにラブリーソードとラブリーガンで攻撃する。


「ラブウォーターシャワー!」

 ラブブルーの放った水流が、オッカネーの足元を濡らす。

「炎児さん、今ですっ!」

「サンキュー! ラブファイヤー!」

 その瞬間、水面が蒸気となり、視界を奪う。

「見えないだと!? くそっ!」

「これが愛の連携だ!」

 ラブレンジャーたちの連撃に、オッカネーはあっという間に追い詰められていった。


 オッカネーは、起死回生の一手としてお金の衝撃波をラブレンジャーたちに向けて放つ。

 しかし、その一撃を躱したラブレンジャーたち。

 その瞬間ラブレッドが叫んだ。

「今だ!みんな!」


 すると他のラブレッドを含めた5人が一箇所に集結し、それぞれのラブリーガンを合体させる。

 そして——!

「「「「「くらえっ!! 愛の一撃!! スーパーラブスターマイン!!!」」」」」

 ラブレンジャーの放った愛の波動砲が、オッカネーを貫いた。

「ぐわあああああああああ」

 オッカネーは断末魔の叫びを上げ、そして爆散した。


「「「「「愛は全てを救う!!」」」」」

 ラブレンジャーたちは勝利のポーズを決める。

 オッカネーの洗脳も解け、彼らを讃える人々のラブレンジャーコールはしばらく鳴りやむことはなかった。


「ふんっ……覚えてろよラブレンジャー……」

 その映像をディボーチ帝国のアジトで見ていたエヌは、不快そうに吐き捨てた。

 そしてオッカネーが彼女のために作ってくれた宝石を手に取る。

「敵は討ってやるから安心しな……」

 顔の前に掲げて呟くのだった。



「よっしゃ~!今日も俺らの大勝利!!いやぁ~疲れた疲れた~」

「やったな! これで今日も日本の平和が守られたな!」

 ぐ~っっと伸びをする炎児にハイタッチしながら電輔が声を掛ける。


「でも今日の怪人のように、人々の心の弱みにつけこむ敵がまた現れるとなると……私たちも油断せずに頑張らないといけませんね」

 勝利を喜ぶ2人とは対照的に、水希は真面目な表情を崩さない。


「水希ちゃんの言う通りかもしれないね。でも、今くらいは勝利に酔ったって罰はあたらないんじゃない?」

「駿也の言う通りだよ水希ちゃん。難しく考えすぎるとせっかくの可愛いお顔に皺が増えちゃうわよ~?」

 駿也が水希の頭に手を置き、桜は水希のほっぺをむにむにと揉む。


「ちょ、ちょっと! 子ども扱いしないでくださいよ2人とも!」

 水希が恥ずかしそうに言うと2人は笑った。最年少の水希は他のメンバーたちにとっては、妹のような存在だ。

「はは、ごめんごめん」

「もう///……でも、ありがとうございます」

 2人の優しさに水希も思わず笑みを漏らす。

 そんな3人のやり取りを見て、炎児と電輔もニッコリと笑った。


「なんだなんだ? ずいぶんと楽しそうじゃないか?

 待機室に入ってきた秩父総司令は、5人に声を掛ける。

「あっ!秩父総司令!」

 炎児が敬礼すると、他の4人も同様に敬礼する。


「ハハ、そうかしこまるなと何度も言っているだろう。仲が良いのはいいことだ。それでこそ愛の戦士だからな」

 総司令は歯を見せて笑った。

「でも、いつもこうやって戦い続きじゃ大変だろ? ちゃんと休めているか? 今日みんなでご飯でも行かないか?もちろん私が奢るぞ」


「え!? マジですか!?」

 炎児が嬉しそうに言うと、他の4人も口々に食べたいものを言い始める。

「お、おいおい……。まったくしょうがない奴らだ」

 総司令は困ったように頭を掻くが、その顔はどこか嬉しそうだ。

「よし、じゃあ行くか!」

 総司令がそう言うと、5人は大きく頷いた。そして彼らは仲良く食事に出かけたのだった。

 


 ~こうしてラブレンジャーとディボーチ帝国の戦いが幕を開けた。

 そしてこの戦いが、後に”第二次大決戦”と呼ばれる大きな動乱につながっていくことを彼らはまだ知らない。

 だが今は疲れたその体に、栄養補給が必要だ!

 この世界にラブレンジャーがいる限り、悪は栄えない!! 愛は世界を救うのだ!~

 

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ED

 

 ラブラブレンジャー♪ ラブレンジャー♪

 ♪♪♪

 ラブにラブってラブラブラブ♡愛は地球を救う♡

 キミにギュギュってハグハグハグ♡愛は世界を包む♡

 Ah~今もしもキ~ミが~、一人で泣いてる~なら~

 Ah~僕たち愛の戦士が~、キミと一緒にキミと一緒に、泣いて笑ってあ・げ・る~♡

 ラーブーラーブ~♪ 愛という名の奇跡~♪

 ラーブラーブ~♪ それは大いなる、チ~カ~ラ~♪

 ♪♪♪

 ラブラブレンジャー♪ ラブレンジャー♪

 ラブラブレンジャー♪ ラブレンジャー♪

 ラブラブレンジャー♪ ラブレンジャー♪

 あ・い・し・て・る・よ♡

 

(EDテーマ:「Ah……Love Love Ranger!!」)

(作詞:ラブレンジャー 歌:ラブレンジャー)

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「よぉ、みんな! ラブレッドだぜ! 今日の敵はお金で人を洗脳する卑怯なヤツだったな! 来週もどうやら人の心の弱みに付け込む敵が登場するみたいだ。けど俺たちはディボーチ帝国なんかに負けないぜ!

 次回『勇気を出して愛を叫べ』せ~の! ラブ注入~!」

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

次週もよろしくお願いします!

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