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第1話「地球は愛の星」前編

 美しい惑星、地球——。

 古来からその星では多くの争いが起きていた。

 それは人間同士だけでなく、強大な力を持った怪物やそれを使役する悪の組織、地球を侵略しようとする異星人たちとの争いでもあった。

 人々は争うことをやめて力を結集し、怪物や侵略者からこの星を守ってきた。

 幾度となく繰り返されてきた正義と悪の戦いは、500年近く前に起きた”大決戦”によって、幕を閉じることとなった。

 正義のヒーロー側の巧みな連携と絆の前に、数で勝っていたヴィラン軍はこの戦いで大敗を喫した。

 そして怪物は正義のヒーローたちによって倒されるか封印され、悪の組織の構成員や異星人の過半数が倒され、遠い宇宙の星へと逃げ帰った。


 ”大決戦”の後、世界の国々は国際的な会議を行い、「力の使い方」に関する協定を結んだ。

 人々が誤った力の使い方をしないように、と厳しく項目が選定された。

 日常生活の中での力の行使は一部の状況を除いて全て犯罪行為とされたため、一般の人々は力を使用する機会が無くなっていくのだった。

「ヴィランの残党や怪物が現れたときにどう対処するのだ」

 といった不安の声もあったが、それに応えるように組織されたのが「国際ヒーロー部隊」である。

「国際ヒーロー部隊」とは、その国で起こるヴィラン犯罪や怪物襲撃などの対応にあたる、各国50名の選ばれたヒーローたちのことである。

 50名という制限が設けられているのは国際的な力の均衡を保つためであり、1人1人が厳しい審査を経て選出される。


 こうして「国際ヒーロー部隊」が設立されてから500年の間、各国はヴィラン犯罪や怪物襲撃に対処してきた。

 ”大決戦”の後も、ヴィランの残党が徒党を組んで新たな組織を名乗り、世界征服を企んだことも何度かあった。しかし、それらは全て「国際ヒーロー部隊」によって鎮圧されてきたのだった。



 そして現在——。

 500年間力を使わなかったため、世界中のほとんどの人間がかつて自分たちの先祖が持っていた特殊な力を失っていた。

 100年前に国際ヒーロー部隊のヒーローは、各国50名から10名まで縮小されていた。

 平和な時代が訪れ、大規模な戦闘が久しく無くなっていたためである。

 そんな中、世界征服を宣言する「ディボーチ帝国」と呼ばれる組織が日本に出現したのだった。

 日本でヴィランが大規模な組織的活動をするのは約100年ぶりである。


 だが、もちろんこの日本にも「国際ヒーロー部隊」がいる。

 それこそ「愛力戦隊 ラブレンジャー」である。

 これは美しい地球、そして愛する祖国である日本を守るために戦った愛の戦士たちの物語である。



 ~日本の都内某所~


「きゃああああ!」

「うわあああ!」

 人々の悲鳴が町のいたる所でこだましている。

 逃げ惑う人々を追いかけるのは、全身黒ずくめの戦闘服、そして狸のような仮面をつけたディボーチ帝国の戦闘員「ヨーク」たちだ。

「アーッ!!」

 と、独特な叫び声を上げ人々に襲い掛からんとしている。


「そこまでだ! ディボーチ帝国!!」

 その声にヨークたちの手が止まる。

 声のする方を振り返ると、そこには5人の若者の姿があった。

「みんな行くぜ、変身だ!」

「ラブ注入!ラブリーチェンジ!」


 5人の若者はそれぞれの色に輝く指輪を嵌めた手を胸に当てて叫び、天に掲げる。

 辺り一帯が眩しい光に包まれ、音が流れ始めた。

 ラブラブ~♪ ラブラブ~♪ ラッブラッブ~♪ ラブラブリ~♪ チュッチュ

 そして音と光が収まるとそこには、カラフルな戦士たちの姿があった。


「燃える愛は炎の如く! 熱きハートの愛戦士! ラブレッド!」

「清らかな愛は水面の如く! 麗しきハートの愛戦士! ラブブルー!」

「鮮烈なる愛は雷の如く! 激しきハートの愛戦士! ラブイエロー!」

「癒やしの愛は山の如く! 優しきハートの愛戦士! ラブグリーン!」

「一途な愛は花の如く! ときめきハートの愛戦士! ラブピンク!」

「愛の力は無限大! 世界を愛で包み込む!」

「「「「「愛力戦隊! ラブレンジャー!!」」」」」

 ラブレンジャーの気迫の籠った変身を目の当たりにして、人々は歓喜し、一方のヨークたちは取り乱した。

「よっしゃ! 覚悟しやがれ!」

 ラブレッドの掛け声とともに、ラブレンジャーたちは次々とヨークたちを打ちのめしていくのだった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 OP

(OPテーマ:「愛力戦隊!ラブレンジャー」)

(作詞:ラブレンジャー 歌:ラブレンジャー)


「くじけそうな時だって~♪ 逃げだしそうな時だって~♪」

「みんな~♪ がいるから~♪ 大丈夫だよ~♪」

「強大な欲望が迫るとき~♪ 愛が包むさ~♪」

「ラブリーガン♪ ラブリーソード♪」

「いっせーのーで~♪ ラブ注入~♪」

「愛を伝え合おうよ」

「悲しみも~♪ 苦労も~♪ 愛のハートで~♪」

「愛さえあれば~♪ 負けないさ~♪」

「ラブ~♪ ラララ~♪ ラブ♪ ラララブ~♪」

「キュンときて~♪ ほんわかして~♪ キュウっとなって~♪」

「ギュッとして~♪ ぽかぽかして~♪ チュウっとして~♪」

「無限の愛を~♪ 力に変えて~♪ 闇を払え~♪ ラブレンジャー♪」

「愛~♪ 愛~♪ 愛~♪ 愛の戦士~♪ 愛力戦隊~♪ ラブレンジャー♪」

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ~都内某所、ラブレンジャーの基地 作戦会議室~


「いや~、今日も楽勝だったな~!」

 椅子に腰を下ろしながら元気よくそう言ったのは、ラブレッドこと赤木炎児(あかきえんじ)。彼は若いながらもこのラブレンジャーのリーダーに選ばれた男だ。


「でも油断は禁物ですよ、炎児さん。今回はヨークだけだったから簡単に倒せましたが……」

 炎児の言葉に最初に反応したのは、ラブブルーこと海藤水希(かいとうみずき)だ。

 水希は女子校に通う高校生でありながら、類まれなる身体能力と明晰な頭脳を評価されてラブレンジャーの1人に選出された。


「はいはい、水希は相変わらず心配性だな。俺らならいつだって楽勝だろ?」

 神妙な顔をしている水希の頭をポンポンとしながらはにかむのは、ラブイエローこと黄島電輔(きじまでんすけ)

 整った容姿と調子のいい口調から軽薄な印象を受ける者もいるが、その実、誰よりも熱心に平和のために戦う心を持っている。


 そして3人の様子をコーヒーを口にしながら優しく見守っているのは、ラブグリーンこと緑川駿也(みどりかわしゅんや)だ。

 争いを好まない心優しき青年だが、その落ち着きと冷静な判断力を買われてラブグリーンに選ばれた。


「そうよ。私たちならどんな敵が来たって、力を合わせて乗り越えていける! だよね!?」

 両手のこぶしを握りながら明るく微笑んだのは、ラブピンクこと桃山桜(ももやまさくら)だった。彼女もまた高い素質を見込まれてラブレンジャーに選出されているが、中でも弱き者を労わり、命を守ろうとする優しさを高く買われている。


「ああ! 桜の言うとおりだぜ! 日本の平和は俺たちが守るんだ!」

 炎児が4人の顔を見まわしながら力強くうなずくと、彼らもそれに応えるようにうなずき返した。



「おっ、すでにみんな揃っているようだな」

 その声は低く、雷鳴のように会議室に響いた。

 振り返った5人の目に映ったのは、背筋の伸びた白髪の男——秩父恒太朗(ちちぶつねたろう)

 国際ヒーロー部隊日本東京支部総司令である。

 かつては彼も国際ヒーロー部隊に所属し、『鋼鉄のチチブ』と呼ばれた凄腕のヒーローだ。


 今日はちょうど半月前から出現した、日本を活動拠点としているヴィランの組織「ディボーチ帝国」に対する対策会議が行われることになっていた。

 この対策会議にはラブレンジャー5人の他、秩父総司令、そしてラブレンジャーのスーツの開発者でもある根盛堅一(ねもりけんいち)が参加する。

「ああ、すまんすまん! ワシが最後か」

 額の汗を拭きながら根盛が小走りで自分の席に座ると、秩父総司令の号令で対策会議が始まった。


 ディボーチ帝国の正確な組織規模は不明だが、それほど巨大な組織ではない、というのが国際ヒーロー部隊調査隊の報告だ。

 彼らのリーダーはマモンと名乗っているが、その姿や能力についての情報は一切不明である。

 またエヌ、ハイパ、ディスペラドと名乗る3名の幹部も存在しており、彼らが主に作戦を立案していると推測されるとのことだった。

 そして彼らが使役するディボーチ怪人、そして戦闘員のヨーク。

 ディボーチ怪人の戦闘能力はそれなりに高いが、ラブレンジャーたちが力を合わせれば問題なく撃破できるレベルのものであり、戦闘員に関しては一般の人間より少し身体能力が高い程度であり、高い脅威とは言えない。


「今現在のところ、奴らがそれほどの脅威になるとは考えにくいが、それでも油断せずに平和を守って行こうじゃないか」

 秩父総司令の言葉に、ラブレンジャーの5人は大きくうなずく。

「もちろんだ! 俺たちはディボーチ帝国を絶対に許さないぜ!」

 そんな炎児の言葉に他の4人も力強く頷いた。



 その数時間後、町にディボーチ帝国の怪人「オッカネー」が現れた。

 オッカネーの発する音色を聞いた人間たちは理性を失い、まるで金の亡者のようにATMや銀行を襲撃しお金を奪い合う。

「お金があれば何でもできる! そうだろお前たち! さぁ、奪え奪え! お前らの欲望を叶えるのだ!!」

 オッカネーの煽動に人々は歓喜の声を上げる。


「金だ……金があれば……!」

 サラリーマンがネクタイを引きちぎり、ATMに拳を叩きつけた。

 通行人たちの目は焦点を失い、笑いながら札束を奪い合っている。

 その中心で、怪人オッカネーが恍惚の笑みを浮かべた。

「ハハハ! これが人間の真実の顔よ!」


 しかし……。

「そこまでだ! ディボーチ帝国!!」

 と、そんな混乱の中に現れた5つの影。ラブレンジャーである。

「悪党どもめ! このラブレンジャーがいる限り、お前らの好きにはさせないぜ!! 覚悟しろ!!」

 炎児の言葉に、ラブレンジャーたちはポーズと決め台詞を決めていった。


「ラブ注入!ラブリーチェンジ!」

 ラブラブ~♪ ラブラブ~♪ ラッブラッブ~♪ ラブラブリ~♪ チュッチュ

 音と光が収まるとそこには、カラフルな戦士たちの姿があった。

「燃える愛は炎の如く! 熱きハートの愛戦士! ラブレッド!」

「清らかな愛は水面の如く! 麗しきハートの愛戦士! ラブブルー!」

「鮮烈なる愛は雷の如く! 激しきハートの愛戦士! ラブイエロー!」

「癒やしの愛は山の如く! 優しきハートの愛戦士! ラブグリーン!」

「一途な愛は花の如く! ときめきハートの愛戦士! ラブピンク!」

「愛の力は無限大! 世界を愛で包み込む!」

「「「「「愛力戦隊! ラブレンジャー!!」」」」」


「ええい! 怯むな! やれ!」

 そんなオッカネーの号令で、戦闘員たちがラブレンジャーに襲い掛かった。

「行くぜ! みんな!」

 ラブレッドの言葉に他の4人が大きく頷く。そして各々が得意とする攻撃を放ち戦闘員のヨークたちを打ち倒していく。


「ラブファイヤー!」

 ラブレッドが手から火を放つ。

「ラブウォーターシャワー!」

 ラブブルーが手を掲げると、鋭い雨がヨークたちに降り注ぐ。

「ラブサンダー!」

 ラブイエローが雷でヨークたちを打つ。

「ラブヴァインウィップ!」

 ラブグリーンが地面から突き出した植物で、ヨークたちを薙ぎ払う。

「ラブリーフラワータイフーン!」

 ラブピンクが鋭い花びらで、ヨークたちを包み込む。

 ヨークたちはあっという間に全滅し、残るオッカネーのみとなった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

第1話後編もお読みいただけますと、幸いです!

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