2日目 彼女は服を手に入れる①
日が昇ると男子たちが目を覚まして動き始めた。私たちは結局昨日のかずみちゃんのびっくり発言で目がさえてしまって寝るに寝れなくなってしまった。おかげで少しだけ体がしんどい。まあ、よく分からないままびくびくしながら森の中を彷徨ってきたことを考えるとましなのかもしれないけど、このままの生活が続くようだと絶対に体調を崩すと思えるコンディションだ。
「朝ごはん食べる?」
山本君が何かの肉を入れたスープを持ちながら明るい声で聞いてきた。
「うん。」
私がそう言うと山本君は頷いてスープをよそっては私たちに渡して来た。
「それじゃあ、食べようか。」
山本君がそう言うとみんなが食べ始めた。
「ん。」
井上君が無表情のままそっと木の棒に巻きつけられたパンを差し出して来た。
「あ、ありがとう。」
私は受け取ってすぐにいつきたちに渡そうとしたが、いつきが首を横に振るので食べてみた。
「おいしい。」
すごく原始的な見た目に反して非常においしくて思わず声が出てしまった。
「だろう!うちの部長はこう見えてもなんでもおいしく作ることに長けてるんだよ。まあ、こっちに来てから知ったんだけどな!」
山本君が自慢げに言った。
話を聞いてみると今食べているスープも他の2人が作ると同じものを使っても不味くてとても食べれたものじゃないけど、井上君が作るととてもおいしくなるらしい。
「先輩今日は何をしますか?」
松本君が井上君に問いかけると井上君は真剣な顔になりすこし考える素振りをみせた。
「まっちゃんはとりあえず彼女たちの服を作って。僕とやまちゃんは食料調達と周囲の開拓をするよ。」
「分かりました。」
「おう!」
松本君と山本君は元気よく返事をした。
私たちがおいしいと思いながら食事をしている間にどんどんと決まっていきあっという間に男子が食べ終えて動き始めた。
「あ、まちゃん。クロスケ置いて行くから何かあったらクロスケと協力して身を守ってね。」
井上君は淡々とした口調でそう言うと2振りの剣を持って出て行った。
「それじゃあ、行くわ!」
山本君は巨大なハンマーと巨大なピッケルを担いで井上君を追うように出ていった。
「さて、服を作るようにと言われたわけですが、僕にデザイン性は一切ありません。」
2人が出ていくのを見送ってすぐに松本君が私たちの方を見ると胸を張ってそう宣言した。
「……。」
あまりにも唐突にしかも予想していない宣言だったのでみんなで顔を見合わせて固まってしまった。
「固まっているところ悪いですが、蛮族みたいな服になる可能性が高いのでデザインを各自で考えてください。そうしたら僕がそこら辺にある毛皮とそこの機織り機(笑)で作った布を使って服を作ります。」
松本君の宣言を聞いてみんなで驚いた。
「作れるの?」
誰かがそう言うと松本君が頷いた。
「こう見えても先輩たちの服や僕の服も僕が作ってますよ。」
松本君にそう言われて改めて松本君の服を見ると少しだけ荒いがそれでも買い物に行った先で売っていてもおかしくないと思うレベルだ。
「普通にいいと思うけど……。」
「あ、ちなみにこれが僕が思うままに作った服です。先輩達には蛮族や野盗と間違われそうだから着ない。って言われたんですよ。」
そういわれながら見せられた服は毛皮と何かの鱗がついた服でとても防御力はありそうだけど見かけたら通報するレベルだ。
「分かった。とりあえずデザインを考えたらいいんだよね。」
「はい。」
松本君は私の問いかけに頷くと紙とペンを渡して来た。私たちはそれを受け取ると一般的な女性ものの服のデザインをみんなで手分けして書き始めた。
「ところで、サイズって分かるの?」
色々な服のデザインを描いているとふとマキが顔を上げて松本君に聞いた。
「分かりません。なので、ぴったりじゃないといけないデザインの服は採寸させてください。別にぴったりじゃなくてダボっとしたデザインの服ならなんとなく見た目から予測がつくのでそのサイズで作ります。」
「そっか……。」
松本君の返事を聞いてマキは小さくつぶやいた。そして、みんなもダボっとしたデザイン以外の服にはバツ印を入れ始めた。どうやらみんな同じことを考えたようだ。




