風が吹いた【誠~引越しの日】
これでこのシリーズは完結といたします。
優しい風が吹いた。
風がない。
世界の終わりでも予知しているかのような無風の中、水城 誠は空を見上げていた。
今日は朝から風が無かった。
空の上もほぼ無風に等しいのか、真っ白い雲は動こうとしない。
「風がないってのも怖いもんだな」
真っ青な空の下。
川縁の土手の草の上。
いつもは優しい風の通る特等席でぼーっと座っていた誠は家に帰ってやることを思い出し、重い腰を上げた。
今日は引っ越しの日。
またいつここへ戻ってくるかもわからない。
もしかしたら、戻ってこないかもしれない。
最後の見納めに、と日の光を反射して光る川を見下ろしてゆっくりと歩き出した。
その時、一陣の風が吹いた。
強くも優しいその風は草を揺らし、雲を動かし、川に波を付け、反射する光はより一層輝きを増して誠の事を見守ってくれている。
一瞬驚いた誠だったが、その一瞬後には空に向かって満面の笑みで呟いた。
「・・・またね」
さよならじゃない。
またこの風の元へ帰って来れるから・・・。
水城兄妹の不思議な体験はこれで終わりとします。
このシリーズでまだ書いてる途中のものもありますが
それがたまった時にまた新シリーズとして連載しようと考えています。
では、長々と読んでいただきありがとうございました!
またお会いする日まで・・・。