目覚まし時計
水城 誠はその日、明け方近くになってもなぜか眠れずにいた。
明日(今日?)も学校なので寝なきゃいけないのだがなかなか眠れない。
時計を見ると6時近くになっていた。
「・・・今から寝たら朝起きれないな」
誠は寝るのを諦め、近くに置いてあった本を開いた。
三十分ぐらいたっただろうか、隣の部屋から。
・・・ピ・・ピピ・・・ピピ・・・。
と微かに目覚ましのベルの音が聞こえた。
隣は妹の麻衣の部屋だ。
朝が苦手な麻衣がセットしたのだろう。
・・・ピピ・・ピピ・・ピピピ・・・。
・・・・うるさい・・・。
いつまで鳴らしておくつもりだ?
早く起きろよ麻衣。
・・・ピピピ・・ピピピピ・・ピピピピ・・・。
いつまでも時計の目覚ましを聴いていると頭が痛くなりそうなので、気を紛らわせようと読みかけの本に目を落とした。
・・・ピピピピ・・ピピピピ、ピピピピ・・・。
・・・・。
気のせいだろうか・・・目覚ましの音が次第に大きく・・・近づいて来ているように聞こえる・・・。
・・ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ・・。
誠の耳に間違いはなかったらしい。
音は確実に麻衣の部屋から誠の部屋へと近づいて来ている。
ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ‥。
今は廊下で鳴っているらしい。
ピピピピ、ピピ・・・。
規則正しく鳴っていた音は・・・誠の部屋の前で止まった。
「・・・・・」
・・・・・。
止まった・・・?何で・・・。
・・・・・。
耳を済ませてしばらくじっとしていたが、音が鳴る気配はない。
よかった。
ふと窓を見ると、カーテンの隙間から光が漏れてきている。
夜明けだ。
止まったのはこれのお陰かな・・・・?
・・・時計・・まだ廊下に在るのかな・・?
ソロっとドアへ近づくと静かに開けてみた。
そこには時計はおろか、ゴミ一つ落ちていないまっさらな廊下が広がっている。
「あれ?時計どこだ?」
誠は廊下に出て近くを探してみたがそれらしい物はなかった。
「麻衣、お前昨日目覚ましセットしたろ?」
それから何分かして下に降りてきた誠は朝食を食べていた麻衣に聞いた。
「・・・目覚まし?そんなん持ってないよ?最近は朝起きれるように努力してるんだから」
後半はなぜかエッヘンと威張ったように麻衣は言った。
「目覚まし・・・無かったのか・・・?」
「だからそう言ってんじゃん」
じゃあ、あの音は・・・?
・・・ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ・・・。
そのあと、学校へ向かった誠の部屋で、在るはずもない目覚ましの音が姿もなく鳴り響いた。
設定は夏のはず・・・?じゃないと時間的に合わない気が^^;