第23話《嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤》
最古にして、最難関ダンジョンの一柱〝聖域〟。
八階層で構成されたこのダンジョンの特徴は、上から下への降り式。登り式が多い中で、此処のダンジョンは最深部にボス部屋を構える。
湧く魔物の形態は、獣型、異業型、ゴーレム型と様々。属性は、ダンジョンの名前に精通した聖属性。
ダンジョンボスはゴーレム型で、成人男性十人を足して余りある巨体と、防御力と攻撃力の異常な高さから二年前まで突破不可能とされていた。
が、それを、突破したのが——。
「〝——銀色の獅子。あれは実によかった。私達の作品相手に、一撃も喰らわず見事なまでの完全勝利を収めた。なのに、これが同じ人間とは……〟」
〝聖域〟隠し通路。誠にして本命、このダンジョンの
真の最深部にして、正真正銘のボス部屋。
そこは、壁、床、天井、全てに置いて黄金一色で統一された空間。部屋の最奥には黄金の玉座が一つ。天井には大型の魔法陣が三つ。床には数多くの宝物が無造作に転がされている。
そして、壁には——。
「い、たい……いた、い……いたいのは、もう、いや……」
「たすけて……たす、けて……かみさま……」
「あつ、い……さむい……くるし、い……」
「いやだ……しにたく、ない、よぉ……っ」
「もう……ころして……おね、がい……」
王都ゼシアでその名と武勇を馳せるAランク冒険者、聖域の隠しエリアの探索に出向いていた五人の姿。
剣——。槍——。斧——。太刀——。大剣——。
五本の黄金の武器により黄金の壁に拘束された、人の原型を留めない、もう、死に行くだけの肉塊。
黄金の壁を、冒険者の血が伝う。
その行く先は、二つの黄金の杯で、その利用価値は——。
「〝ハハッ。美味い! 美味い! やはり、この人って種族の血は実に美味だぜぇ~。なぁ、姉ちゃん!〟」
「〝下品ですよ、ロア。寝転がっていないで、座って食事にありつきなさい〟」
「へ~い」
食事。生物が生きる上で必要不可欠なエネルギー補給。空腹を満たす唯一の方法にして、至高。
それは、■とて変わらない。
否、■こそが食事という概念の原初にして、生物を肥太らせ、至高の食材に成長させる為に植え付けた概念。
よって——。
「〝とはいえ、本当に美味ですねぇ……。そろそろ、メインディッシュと行きませんか? 私、我慢の限界です〟」
「〝堪え性がねぇな、姉ちゃんは。いいぜぇ? ちょっとばかし早い気もするが、俺も早く肉を食いてぇ〟」
—— ■が人を喰らうのは、この世の摂理。
二つの陰が宙に浮く。目指す場所は、黄金の壁に張り付けにされた冒険者の正面。
向かい合って、冒険者の顔が恐怖に歪む。が、お構い無しに、冒険者の元へと手が伸びる。
場所は、最初は——。
「〝まず、足!〟」
「ぎゃゃゃゃあああああッ!!」
足を掴み、股下から下を引きちぎる。
至高の二品目は、太腿と脹脛。喰らう。
「〝私は腹を〟」
「がぁ……ッ。こひゅ……」
手を腹に突き刺し、腹の肉をくり抜く。
至高の二品目、腹部と胃。喰らう。
「〝ハハハハハハッ!〟美味! 美味! 美味! 次は眼球だぁ!」
「やめ、て……。いややぁあああああ!!」
眼球を指で挟み、抉り取る。
至高の三品目、眼球。喰らう。
「〝ヒヒヒヒヒヒッ! これじゃあ、ロアに言えませんねぇ! 実に美味! 美味しすぎてタガが外れてしまいます! 次! 脳!〟」
「あがぁ……ッ。あぁ……あぁ……」
爪で頭を切り裂き、中身を掻き回す。
至高の三品目、脳。喰らう。
「ハハハハハハハハッ! 腕! 耳! 首!」
「ヒヒヒヒヒヒヒヒッ! 次! 次! 次!」
誰も、抗えない。喰らわれる。
体が次々と欠損して行く。早く死にたい、そんな懇願と強烈な痛みが心身を支配する。
喰らわれる。嗤われながら。喰らわれて行く。
—— ■に喰らわれる。
「〝ハハハハハハハハハハッ!!〟」
「〝ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!!〟」
嗤嗤嗤嗤嗤嗤「いだいッ!いだぁいッ!」嗤嗤嗤嗤「あぁ……あぁ……」嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤「死にだぁい……死にだぁい」嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤「はや、く……こ、ろし、て……」嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤「おか……あさん……」嗤嗤嗤嗤嗤嗤「た……す、げて……」嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤「…………」嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤「…………」」嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤「…………」嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤「…………」嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤「…………」嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤嗤。
「「〝〝ご馳走様でした!〟〟」」




