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第20話《屋敷会議〜マト投げ祭りに向けて〜》


「さて、朝食も済んだ所で、今から屋敷会議を行う。……今年も、あのマト投げ祭りの時期がやってきた」


リフィクトリーテーブル。お金持ちのテーブルと言えばこれ、の机上で両手を組み、私は従者諸君にこのダイニングルームに招集した理由を打ち明けた。

マト投げ祭りって何?の疑問に関しては追って説明させて貰う事とする。どうせ、この場の半数の人達から声が上がるだろうからね。


「あ、あの……マト投げ祭りって何ですか? ご、ご主人様」

「我も聞いた事がない。何をする祭りだ」

「いい質問だね、ウルカ、レオン。……私もよく知らないから、説明をお願いサリーネ」


それっぽい雰囲気を出して置いてなんだけど、私はマト投げ祭りについて〝マト〟を〝投げる〟の大雑把な事しか知らない。

マト投げ祭りに関しての伝統だの目的などは全くもって知識外。

こういう時は、頼りの綱であるサリーネに全振りだ。


「では、少し長くなりますが、一から説明させていただきます。マト投げ祭りは、バレンシア王国の建国記念日に此処ゼシアで開催される年に一度の催しです。バレンシア王国の繁栄を願い行われるお祭りで、そのお祭りと言うのも奇怪……斬新なものです」

「サリーネ穣ちゃん、今奇怪って言ったな……」

「言いましたね……」

「我も聞こえた……」


うん、私もハッキリと聞こえた。

まぁ、奇怪と呼ぶ理由は分からないでもないけど……。


「こほんっ。……このマト投げ祭り、通称マト祭は、その名の通りマトを投げ合うお祭りになります」

「マトって、あの赤い色の着色料にも使われているマトの実ですか?」

「そうです。このバレンシア王国では、色鮮やかでいてバリエーション豊かな衣服が有名です。その着色料として使われるマトの実が年に一度、とある森で農家の人達だけでは収穫し切れないほど多く実ります」

「此処から三刻、アテンの森だな」

「正解です、レオン殿。それを採取するのが本祭の二日前、十三日後ですね。それを前祭と評し、ゼシアの住民、他地域の住民、冒険者、騎士団と、多くの人達でアテンの森に向かいマトの実を収穫します。勿論、農家の人達にはその収穫量の四割の金銭をお支払いし、マトを頂く形となります」


そして、そのマトの実を使い、本祭にて。

——誰もがあの地獄絵図をその目で見る事になる。


「そして、本祭当日……他地域から集まった人達とゼシアの住民達、去年で言えば百二十万人。集まった多くの人達が此処ゼシア全体を駆けずり回り、マトの実を全力で投げ合います。最後まで純白の衣服を赤く汚さなかった者が優勝者となり、豪華景品を手に出来ます。それが、マト投げ祭りになります」


全部の要点に触れつつ、実に簡潔で分かりやすい説明だった。

サリーネの説明に関心した様子の面々。この後を引き継ぐのはめちゃくちゃやりにくいけど……。

私は両の掌を打ち、皆の注意を私に向けた。


「で、だ。そんなマト投げ祭りにずっと参加を渋られて来た我々が、遂に参加していいという許しが降りた」

「おぉ、やっと参加していい事になったのか。長かったな」

「なんか、その渋られていた理由、察しが着いた気がします……」

「我もだ……」

「二人とも、察しがいいですね。あれは五年前、ミューネ様が殆どの参加者を血祭りに上げ、過去最短記録、過去最高虐殺数で優勝してしまったのが原因です。ですので、参加拒否というのも我々というよりミューネ様単体ですね」

「言い方言い方……」


そう、それ以来、私は父上直々にマト投げ祭りへの参加を全拒否され続けて来た。

顔を隠し、認識阻害のマントも羽織ったりと策を施して参加してみたりもしたのだが、父上の命令でやって来たミューに即座に見つかり、父上の元まで連行された。

その時は、流石私の妹と賛辞を送ったが、それから毎年毎年とミューに監視され続け、それ以降の参加が出来なかったのはちょっとだけ恨みもした。

だから、やっとだ。爪を噛み、王城のバルコニーから眺める事しか出来なかったマト投げ祭りに、私は五年ぶりに参加する事が出来る。


「だけど、その甲斐あって私はハンデ付きなんだよね……」

「そうなんですか?」

「うん……。魔法禁止と投げるの禁止……」

「投げ祭りとは!?」


私が父上からハンデの話を聞いた時と同じ反応でウルカかがビックリしてくれる。本当に、投げ祭りとは、だよ。


「だが、主ならそれでも優勝してしまいそうなものだが……」

「あ、分かっちゃう? 勿論、参加するからには優勝を狙う。……でも、今回ばかりはそうもいかないんじゃないかなぁーて思ってるんだよね」

「「「「?」」」」


魔法禁止と投げるの禁止。父上がくれたこのハンデに、私は少しだけ期待している。

自分で言うのもなんだけど、私はこの世界の誰よりも魔法に長けている自信がある。魔法を極めたとされる魔王レオンにさえ、意味不明と言わせるだけの独自の完結された魔法理論がこの頭の中にはある。

この世界に転生してから今まで、私には敗北がない。それだけ、私の魔法理論が突出しているからだ。

だから、私は父上に感謝せざるを得ない。魔法以外の勝負でなら、私は誰かに負ける事だって出来るかもしれないのだから。

そして、その相手になるかもしれない者は——。


「ウルカ、レオン、リューガ、サリーネ。君達がいるからね」


魔王序列一位のレオンと魔王序列三位のウルカ。その二人に劣らない戦闘能力を持つリューガとサリーネ。

もしかしたら、この中の誰かが私の人生初の敗北相手になるかもしれ——。


「え? 私達も参加するんですか?」

「斬新な祭りだとは思うが、特に興味はない」

「俺はパス。一応、マトの実は食べもんでもあるからな。料理人として食材を投げるのは気が引ける」

「汚れるので嫌です」


と、言う事らしいです……。

ミューネ陣営からの出場者、ミューネ・ウィル・バレンシア、一名。

どうやら、マト投げ祭りを楽しみにしていたのは私一人だけだったらしい……。

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