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第19話《私のルーティン》


私には、日々の中で逃れる事の出来ないルーティンがある。

朝の起床時間、朝食の時間、昼食の時間、夕食の時間、そして王女としての気品とやらを学ぶ教養だ。

別に、そこに不満や苦痛はない。前世でも、学生なんていう縛りだらけの生活を送っていたくらいだ。

今更、縛られた人生なんてものに不満を感じたり、苦痛だなんて微塵も思ったりはしない。

だけど、前世が男だった私的にこのルーティンだけはいつまで経っても慣れない。

意識が覚醒して一発目、極めて近い距離で、甘ったるい香りがした。


「……サリーネ。近いんだけど……」

「おはようございます、ミューネ様」

「あ、うん……。おはよ、サリーネ」


目を開けると、直ぐ間近にサリーネの顔があった。

ベッドの上にプラチナブロンドの髪を広げ、濁りのないルビーの瞳でじっと私を見つめている。

本当に間近、鼻先が触れているレベルの至近距離だ。可愛い女の子は大好きだけど、流石にここまで接近されると戸惑ってしまうものがある。


「取り敢えず、離れようか」

「はい、ミューネ様」


これが、私の起床と共に訪れる毎朝の外部的強制ルーティンである。

私のベッドに不法侵入したサリーネをベッドの上から下ろして、私もまた体を起こしてベッドから立ち上がる。

それから、作業机、兼、身支度をする机へと移動。椅子に腰を下ろしたら、後の事はサリーネがしてくれる。これもまた、私のルーティンの内の一つだ。

優しく、串でサリーネが髪を溶かしてくれる。気持ちいい……。


「ミューネ様、今日は如何なされるおつもりで?」

「んー、そうだね……。マト投げ祭りも近いし、朝食の時にでも皆と打ち合わせして、後は、久々にギルドに顔を出しに行ってこようかな。丁度、用事もあるし」

「畏まりました。朝食の場に、全員同席させるように致します。……ギルドへは、どういったご用事で向かわれるのですか? お邪魔でなければ、私も同席したいのですが」

「用事に関しては内緒。同席に関しては構わないよ。サリーネこそ、ギルドに何か用事?」

「冒険者カードの更新を、と思いまして。こないだ、リューガ殿に力で押されてしまいましたので、訛った体を解すついでに魔物狩りでもと」

「あぁ……。それ、根に持ってたんだ……」


ていうか、サリーネが魔物狩りって……。周辺一帯の魔物が狩り尽くされないか心配なんだけど……。


「一応、忠告ね。やり過ぎない様に」

「畏まりました。被害は最小限に留めます」


言い方言い方。被害って……。別に間違ってないから、何も言えないんだけどさぁ……。

と、そんな風に話している間に髪が溶かし終わる。

席から立ち上がり、私はバンザイのポーズ。服からズボン、ブラジャーからパンツに至るまで、全てサリーネに替えをやって貰う。本当に何から何まで、である。

ちなみに、私の外着は動きやすさ重視。今日の装いも至ってシンプルなもので、短パンに、局部の真っ赤なリボンがチャーミングな白のブラウスだ。


「おっと、忘れる所だった……」


と、着替えも済んだ所で、だ。

お待ちかね。毎朝のルーティンで何よりも大切な習慣を、今日も今日とてやって行きまーしょう!。


「!?」


椅子に座り、ハンカチを手元に用意し、ズボンとパンツを下ろして、私は大胆且つアバウトに股下に顔を振り下ろす。

いきなりの奇行にサリーネが肩を跳ねさせるが、私は構わずそれを確認する。

生い茂った芝生と、今ではそこにない懐かしのブツ、その代わりとなって存在する割れ目を。


「よし、今日も問題なしっと……」


顔を上げ、鼻から垂れる血をハンカチで拭き取る。

今日も今日とて、一切の問題なし。私は、女性の体になっても変わらず女性の体に欲情出来ている。

私は、下ろしていたパンツとズボンを履いた。


「……気は済みましたか?」

「うむ!」


ドン引き不可避。美人な顔が、真顔を保とうとする理性と抑えきれない嫌悪感に物凄い事になってしまっている。

かれこれ、十年来の付き合い。そろそろ慣れて欲しい所なんだけどね……。


「髪型はどうなさいますか?」

「んー。別に、このままでいいよ」

「そうですか? 編み込みとか、カールしたりとか、色々アレンジ出来ますけど?」

「……ぶっちゃけなんだけどさ。私の場合、ヘアセットしても直ぐに崩れちゃうんだよねぇ。飛んだり、走ったりするから……。短くしたのも動きやすいからだし」


本音を言えば、ロングヘアーが好みだ。ミューネ・ウィル・バレンシアとしての容姿、欠点を探しても何一つとして見つからないこの顔は世界一と評してもいい。

着せ替え人形の様に自分を着飾った時期もあったけど、ロングヘアー、ドレスなんかはやはりと言って邪魔なのだ。勿論、可愛いんだけどね?。


「なら、仕方ありませんね……。ヘアセット有りきで、ミューネ様の可愛さが薄れる事はありませんし」

「あら、お上手ですこと。そんなサリーネに一つ……パンツ見せて?」

「はいはい。馬鹿言ってないで、早く顔を洗って来てください。朝食に向かいますよ」

「はーい」


サリーネの、いつも通りのすげない対応。洗面台に向かい、顔と歯を手入れしてから、私はサリーネと一緒にダイニングルームへと向かった。

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