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開幕
王は飽いていた。
五百年余り続いたココラヘン=ヨミナガセ帝の治世。その
衰退を記した『賢帝奥秘記』はこの一文で始まる。
曰く、賢帝として君臨し、栄華を極め、たった一人独裁にて正しく国を治め続けた帝はある日を境に狂ってしまったと。
交流のあった東之国と、戦争を始めようとした。
国中の美女を集め、醜悪な魔物の生き餌とした。
侍女の産み子を攫い、それを召使いに喰わせた。
そこに記された内容の多くが根拠のない俗説。いわゆる眉唾ではあるが、ただ1つ。その凶行が伝説として語り継がれ、真実たらしめんとされるものがある。
帝国王城御前死合。
異界還りの勇者。
東之国渡りの侍。
王家直属の聖騎士。
天衣無縫の武闘家。
頂点たる魔法使い。
禁忌を見た禁術師。
神の手先、執行官。
個の軍勢、召喚師。
当代最強と謳われた者たちの殺し合い。その果て、勝ち残った者のあらゆる望みを叶えよう。
但し、余を楽しませてみせよと。
これはその記録の話である。