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眼鏡をこよなく愛する人畜無害の貧乏令嬢です。この度、見習い衛生兵となりましたが軍医総監様がインテリ眼鏡なんてけしからんのです。  作者: 甘寧


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episode.19

シルヴィはアルベールの執務室の前で来て、重々しい雰囲気漂う扉をノックするのを躊躇っていた。


扉越しからでも分かる!!これは声をかけちゃいけないやつだ!!


そんな事を思ってても、この扉を叩かなければ先には進めない。

ゴクッと喉を鳴らし、いざ!!開かずの間へ!!


コンコン……


シーーーーーン


当然の事ながら返事は無い。


フーと息を吐き、心を落ち着かせてノブを手にしようとした瞬間、キィと扉が開いた。


「あ、総か、んさ、ま……………ッ!?!?!?!?」


顔を出したアルベールを見て驚愕した。


そこには遠征から帰ってきた時より更に酷い状態のアルベールがいた。

頬は痩け窪んだ目の下には隈が色濃く付いている。更にヨレヨレの白衣は色んな薬品で汚れて白衣の意味を成していない。


しかし、こんな時でも「弱ってる推し……!!」と内心歓喜してしまうのは、シルヴィの悪い癖。


「………何の用だ………」


今にも倒れそうな身体を扉を掴む手で支えながら、振り絞るような声で言われた。


「あ、あの、実はお話が……」


恐る恐る伝えると、アルベールは眉間に皺を寄せ心底面倒な顔したが「……入れ」と部屋に入れてくれた。


中はまあ、酷い状態だった。

一瞬、荒らされたのか!?と錯覚してしまった程だ。


「適当にかけてくれ」と言われたが、長椅子にも書類が散乱していて座れる状態では無い。

長居するつもりはないので、立ったまま話を進めることにした。


「あの、実は、お暇を頂きたく……」

「は?」


物凄く不機嫌そうな返事が返ってきて、思わず肩が跳ねた。

だが、ここで負けてはならない。


「実は、急遽実家の方へ帰らねばならない用事が出来てしまって」


”実家”と言う単語を出せば大抵揉めることなくすんなり話が進むという事をシルヴィは知っている。


──……ただ、条件は余計な事を言わなければの場合のみ。


「……はぁ~……それならば仕方ない……いつからいつまでだ?」


アルベールも早く終わらせて申請の書類を確認したいと見えて話の切り替えが早い。


「ありがとうございます!!えっと、お見合いの日が明後日なので明日から一週間程……」

「ちょっと待て、今なんと言った?」


顔を綻ばせて言ったシルヴィの言葉の中に気になる言葉が聞こえ、すぐに聞き返した。


「え?明日から一週……」

「その前だ!!」

「え?お見合い?」

「そうだ!!君は見合いをするのか!?」


何故か慌てたように言うアルベールを不思議に思いつつ「ええ」と伝えた。


「まあ、結婚は追々と考えていましたが、貰ってくれる方がいるのならこの機を逃す手はないと思いまして」

「君はライアンの事を慕っているのでは無いのか!?」

「少佐ですか?ええ、まあ、兄の様だと慕っておりますが?」

「は?」

「え?」


ここでようやくアルベールが勘違いしていることに気がついたシルヴィが誤解を解くべく説明した。


「──……なるほど、ライアンの件は分かった。だが、見合いとはどう言う事だ?」

「いや、ですから、我が家は援助を受けなければ潰れそうな家なんですよ。そんな我が家を助けてくれるという奇特な方は早々居ないんです」


説明するシルヴィの話を黙って聞いていたアルベールだが、話が進むにつれ眉間の皺が濃くなっていき明らかに不機嫌になっているのが分かる。


何故!?と思いつつ、了承を貰えなければここを出れない。なのでシルヴィは頑張った。


「申請時期だと言うことも承知の上です。こんな私の手ですら借りたい状況だという事も重々承知しています。ですが、両親も今回の縁にすべてを賭けている手前、引くには引けず……あの、四、五日程度でもいいんです!!お暇をください!!」


威圧感半端ないアルベールにはっきりと伝えた。


アルベールは黙ってシルヴィを見つめている。その目は鋭いが、冷たいものではない。冷たいというより怒気を含んでいる様に感じる。

そりゃ、こんな戦場みたいな状態の現場を放り投げて実家に帰省しようとしているんだ。多少怒られるのは覚悟している。


「………………要は、家の為に結婚をすると言うのか?」

「まあ、そうなりますかね」

「なるほど……君は結婚相手は誰でもいいと言うことか?」

「まあ、私に選ぶ権利はないですけど、嗜虐癖を持っている方はちょっと……」


流石に痛いのは嫌だし、どうせ貰われるのならちゃんと愛されたい。

贅沢を言わせて貰えば、歳があまり離れていないと尚可。


大きな溜息を吐きながら頭を抱えたアルベールを見て、怒号が飛んでくると思い身構えた。


が、聞こえてきたのは耳を疑うものだった。


「…………………分かった。君が家の為にどこの馬の骨か分からない者と結婚すると言うのなら、私が相手になろう」

「…………………………………?」


何を言った?あれ?幻聴?


シルヴィは自分の耳が信じられなくなり、再度聞き直した。


「あの、すみません。もう一度よろしいですか?」

「私が君の婚約者になる。そう言ったんだ」


──聞き間違えじゃなかったァァァ!!!!!!




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