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眼鏡をこよなく愛する人畜無害の貧乏令嬢です。この度、見習い衛生兵となりましたが軍医総監様がインテリ眼鏡なんてけしからんのです。  作者: 甘寧


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episode.14

思っていたのとだいぶ違う言葉に、自分の耳を疑った。


「……えっと~~……なんと?」

「すまなかったと言っている」


良かった、幻聴じゃなかった……いや、違う違う!!私は一体、なぜ謝罪をされているんだ!?


「……帰城して気が焦り少しばかりキツい言い方になってしまった……」


少し分が悪そうに言うが、シルヴィにとっては青天の霹靂。

まさか謝罪されるとは思いもしていなかったから、なんて言ったらいいのか分からず言葉に詰まってしまった。


黙っているシルヴィを見て「まだ気落ちしているのか」と勘違いしたアルベールだが、こういう時どうすればいいのか分からない。


二人して黙ってしまい沈黙が部屋の中に続く。

初めに沈黙を破ったのはシルヴィ。


「あ、あの!!た、確かにあの時は落ち込みましたが、今はもう大丈夫ですよ?」

「……そうなのか?」

「ええ、というか、あの場合私が悪かったので総監様が謝る必要はないかと……」

「いや、それは君がな──……」


”泣いたと聞いたから”と言いそうになり、慌てて口を詰むんだ。

シルヴィは「?」と首を傾げているが「何でもない」とそっぽを向いてしまった。


「あ~……まあ、その、なんだ?……とりあえず、戻るか……」

「え、あ、そうですね」


頭を掻きながら重い腰をあげ、ようやく医局へと向かうようだ。


「シルヴィ・ベルナール」

「はい?」

「……手間をかけさせた……礼を言う」


そう言いながらシルヴィの横を通りざまに頭にポンッと手を置いていった。

それは本当に一瞬の出来事だったが、確実にアルベールの手がシルヴィの頭に触れた感覚がある。

それに気づいた瞬間、ガクッと膝から崩れ落ちた。


あ、あああああ頭ポンッだとぉ!?!?こんな低俗凡人な自分が受けて良いサービスなのですかぁ!?

と言うか、これ、絶対無自覚!!この人、無自覚で人を殺める人や!!一番タチ悪いぃぃ!!でも、ありがとうございますぅぅ!!


涙を流しながら悦ぶシルヴィ。


「おい!!どうした!?」


一方のアルベールは、また自分が何かしたのかと不安げにシルヴィを呼び続けた。が、その声は中々届かない。


「おい!!聞いているのか!?」


はぁぁぁ……今日も顔が良い、眼鏡がよく映える……


そんなやり取りを数分繰り返し、ようやく職場である医局部に到着した時にはげっそりとしたアルベールと満足気でやる気に満ちたシルヴィの姿があった。それを見た医局の者達は一様に「ああ~……」とアルベールに哀れみの目を向けた。




◈◈◈




遠征から第二部隊が帰ってきて数日。


大怪我を負ったライアンは熱も下がり起き上がれるまでに回復した。

ただ寝ているだけはつまらんとボヤくので、シルヴィがちょくちょく顔を出しては話し相手をしてあげている。

決してサボりでは無い。


「──そういや、前から聞きたかったんだけどシルヴィはアルベール総監とマティアス大佐のどっちが好みなんだ?」

「は?」


今日も今日とてライアンの暇つぶしに付き合ってやろうと病室を訪れたら唐突にそんな事を言われたシルヴィ。


周りの者もその答えが気になるらしく、ガヤガヤしていた病室が急に静まり返った。


「どちらと言われましても、お二人とも推しには変わりないので」

「いや、だから、推しだ推しだって言うけどな、好みぐらいあるだろ?例えばどっちと付き合いたいとかさ」

「ん~~そうですねぇ~~……………」


顎に手を置き考えるシルヴィに息を飲んでその答えを待つ人達。なんとも言えない空気感が流れる。


「まず、推しを恋愛対象で見ていないので、私の中では有り得ないですね」

「「はぁ!?」」


その場にいた全員が叫んだ。


「推しと付き合った時点で推しではなくなるんですよ?つまり、推しを推しとして推していたい私がそんな邪な気持ちで見ていたら失礼だと思いませんか!?」


力強く宣言するシルヴィだが、周りの人間は何かに同情するかのように憐れみの表情や悩ましげに顔を歪めていた。


「あのな、お前だって良い年頃だろ?推しだとか言ってる場合じゃなくて結婚とか考える時期じゃないのか?」

「ああ、その辺は考えてますよ」


そのシルヴィの言葉にまたもや病室内が一気に注目した。


「うちは貧乏なので、援助してくれる方の後妻か愛人になるだろうと。まあ、貰ってくれるのなら何処でも──……」

「お前は馬鹿なのか!!!」

「そうよ!!ここは優良物件の宝庫なのよ!!」

「なんで後妻か愛人限定なんだよ!!」


流石に口を挟まずにいられなかったのか、四方八方から言葉が飛んできた。


「ちょっと、これは不味いわよ」

「ああ、まさかこうも無関心だとは思わなかったな」


ヒソヒソと話し合う病室の者らだが、シルヴィは何がなにやら。

その内、散り散りに別れライアンも大人しくベッドに戻ってきた。

そして、ゴホンッと咳払いをするとシルヴィに進言した。


「シルヴィ、お前に任務を科す!!」

「なんで?」

「いいから!!次の休みにここに書いてあるものを街に行って買ってこい!!」

「だから何で?」

「うだうだ言うな!!いいな!!絶対だぞ!!」


──いや、だから何でだよ。

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