表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ストリートキング  作者: 木山碧人
第四章 イタリア

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/83

第74話 決勝戦⑮

挿絵(By みてみん)




 砂塵が晴れ、視界は鮮明になっていきます。


 天を仰ぐ状態で見えたのは、水色に染まる空でした。


 戦ってたのは夜のはずです。明らかに変なことになってました。


(あれ……? 何が、起こったです……?)


 背中には、ザラッとした砂の感触があります。


 頭はフワッとして、目の前の情報が理解できません。


 拳を振り上げたのは覚えてますが、その後がぼやけています。


(もしかして、あのまま気絶して、朝に……)


 ふと頭に浮かんでくるのは、あり得ない予想でした。


 自分でも馬鹿だなって思います。でも、他に考えられません。


 悔しいですが、きっと負けてしまったんです。相手が一枚上手でした。


(もうちょっと早くから、本気を出していれば……)


 敗北した事実を受け止めながら、地面の砂を握り込みます。


 ですが、握った砂は、サラサラと手からこぼれ落ちていきました。


 掴むのが遅かった。気付くのが遅かった。ただ、それだけのことなんです。


『クロスヒットとダウンを確認。敵に50。マスターに100のダメージ』


 そんな時、耳に直接響いてきたのは、アイさんのアナウンスでした。


 ドクンと心臓が高鳴るのを感じます。血が巡り、体に活力が戻るのを感じます。


(……まだ、終わってないですっ!)


 すぐさま身を起こし、拳をバッと構えます。


 カウントされるよりも早く、試合に復帰するためです。


 空が明るいのは、よく分かりませんが、戦えるなら問題ないです。


『続行可能だと判断しました。試合を再開してください』


 すると、すぐにアイさんは対応してくれ、復帰可能となりました。


 よし、と声を上げたいところですが、ひとまず状況の確認が最優先です。


名前:【ジルダ・マランツァーノ】

体力:【850/1000】

意思:【BFN1】


名前:【ボルド・ガンボルド】

体力:【750/1000】

意思:【3012】


 視界の端と端に見えたのは、ステータスの簡易表示です。


 故障でしょうか。よく分からない数字が表示されていました。


(画面が変、ですが……そんなことより……)


 違和感はありましたが、気にすべきことは他にあります。


 きょろきょろと視線を動かし、破片まみれの舞台を見回します。


「……三武踊まで受け切ったのは、貴公が初めてだ」


 中央には、上半身の衣装が弾け飛んだ、ボルドさんの姿がありました。


 強気に振る舞っているように見えますが、額には冷や汗をかいています。


 表情には余裕がなく、顔色はどことなく青冷めているようにも見えました。


「ボクもあそこまで追い込まれたのは、初めてかもしれません」


 不思議と緊張感が高まっていくのを感じます。


 相手の底が、まだ見えていないせいかもしれません。


 実際、先ほどよりも強力であろう四武踊目が残っています。


 脅威でしかありません。さっきのでもギリギリだったんですから。

 

「光栄ではあるが、口三味線に乗せられるほど、身の程知らずではない」


 すると、ボルドさんは、よく分からないことを言ってきます。


 もしかしたら、実力を過信しないための、謙遜なのかもしれません。


「……口三味線? あの、実際にボクを追い込んだのは事実だと思うですが」


 ただ、あまりにも卑屈が過ぎるような気がします。


 普段の態度なら、賛辞を受け取る余裕はあったはずです。


 さっきまであった自信は、どこへ行ってしまったのでしょうか。

 

「まさか、気付いていないのか……? いや、そんなはずは……」


 ボルドさんは、辺りを見渡し、怪訝な顔つきをしています。


 なんでしょう。砂塵も消えてますし、周りには何もないはずですが。


「ハッキリ言ってくださいです。ボクには、なんのことだか分かりません」


 ここまでくれば、無性に気になってきました。


 試合も大事ですが、遅かれ早かれ、決着はつきます。


 だったら、後顧の憂いを断ち、全力で試合に臨みたいです。 


「拙者はこんな化け物を相手取ろうとしているのか……。空は何色だ?」


 額に手を当て、呆れた果てたように、ボルドさんは尋ねます。


 不意打ちの可能性も考えましたが、言われた通り、上空を見ます。


「水色、ですね。それが、どうか……」


 なんてことない見慣れた空のはずでした。


 でも、言いかけた途中で、気付いてしまったんです。


「舞台全体を覆い、空が変色したように見える光。その全てが、貴公のセンスだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ