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ストリートキング  作者: 木山碧人
第四章 イタリア

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第69話 決勝戦⑩

挿絵(By みてみん)




 頭が熱い。視界がぼやっとしてきやがる。


 足元は砂場の上にいるような感覚。ここは一体、どこだ。


「ラウラ、気分悪そうだけど、大丈夫……?」


 聞こえてくるのは、ジェノの声。


 視界は少しずつ鮮明になり、開けてくる。


 見えたのは武舞台に立つ、ジルダとボルドだった。


「ここは、ギリシャ劇場か……」


 そこで頭がようやく状況を理解した。


 今は、『ストリートキング』決勝、大将戦だ。


 先鋒戦は勝ち。中堅戦は負け。優勝するかはここで決まる。


「何、当たり前のこと言ってるのさ。そろそろ始まるよ」


 ジェノは横目でこちらを見て、呆れたように語る。


 その手には、青銅色の鏡。『八咫鏡』を持っていた。


(……いつ、こんなもん手に入れた)


 それが妙に気にかかる。記憶が一部欠けてるような感覚だ。


「待て。ここに来る前、何があったか説明してくれ」


「……え? それ、こんな大事な時に、やらないと駄目?」


「いいから、言え! 今は実況がペラペラしゃべってるから暇だろ」


 響くのは、無駄に熱い実況の声。


 つまり、試合はまだ始まってすらいねぇ。


 ごちゃついてる思考を整理する時間くらいはあった。


「えっと、ここの地下に神殿があって、『八咫鏡』があったから回収した」


 ジェノは戸惑いながらも、簡潔に説明する。


 あまりにもシンプルで、なんの起伏もないストーリーだった。


「……いや、もっとあっただろ。中でなんかなかったのか?」


 思い出そうとしても、頭がずきんと痛むだけ。


 その違和感を探るように、口調を強めて問いただした。


「知らない。外には白教の信徒がいたけど、中はラウラが入るなって言ったから」


 ジェノは淡々と当時の状況を思い出しながら、答えていく。


 言われたことで、ぼんやりした記憶が少しだけ蘇るような気がした。


(確かに、言った。それは覚えてるが……)


 ただ、肝心なところが抜け落ちてる。


 中で何があったか、まるで思い出せねぇ。


 漫画の山場部分を丸々破かれたような気分だ。


「……いや、だったら、『八咫鏡』は誰が持ち出したんだ」


 覚えてないもんは、気にしても仕方がねぇ。


 ただ、ジェノは、『八咫鏡』を手に持っている。


 つまり、入手した前後の出来事は知っているはずだ。


「誰って、そりゃあ、ラウラしかいないでしょ。忘れちゃったの?」


 しかし、返ってきたのは、謎を深める回答。


 忘れちゃいけねぇことを忘れちまってるような気がした。


 ◇◇◇


 ギリシャ劇場。武舞台。時刻は夜。


 夜空には、綺麗な三日月が浮かんでました。


(……ここで負ければ、ボクの夢は叶うんですよね)


 天を仰ぎながら考えるのは、将来の夢のこと。


 お父様と一緒に暮らす。そんな平凡な日常が欲しい。


 それ以外、何もいらないって今までずっと考えてきました。


 だから、『シビュラの書』の予言に従い、不義理なこともしました。


(でも、それは本当にボクが欲しかったものだったのでしょうか……)


 チームのお二人と出会ってから、本当に色々なことがありました。


 嬉しかったこと。苦しかったこと。楽しかったこと。悔しかったこと。


 どれもかけがえのない思い出です。色褪せることのない刺激的な毎日でした。


(夢か、現実か……。戦いの中に答えはあるのかもしれませんね)


 勝つか、負けるか。不義理を働くか、否か。


 心の内側を理解するにも、現実に目を向けました。


「いい顔をしている。出会った頃に比べて、凛々しくなったな」


 そこにいたのは、青い民族衣装を着るボルドさんでした。


 白いグローブに、黒いゴーグルをつけた、対戦用の衣装です。


 手を前に突き出し、体の奥がむず痒くなる褒め言葉をくれました。


「……当然です。ボクは、こう見えても、れっきとした男の子ですからね」


 対する返答は、これしかありませんでした。


 可愛いも嬉しいですが、凛々しいも捨てがたいですね。


「な、ぬっ!?」


 すると、ボルドさんはなぜか、目を見開き、明らかに動揺していました。


 よく分かりませんが、戦うことに変わりありません。手を前に突き出しました。


名前:【ジルダ・マランツァーノ】

体力:【1000/1000】

勝率:【0勝4敗0%】

階級:【木】

実力:【1273】

意思:【未測定】


名前:【ボルド・ガンボルド】

体力:【1000/1000】

勝率:【13勝0敗100%】

階級:【聖遺物】

実力:【2161】

意思:【2821】


 こうして、試合は始まったのです。


 このチームで戦うことができる最後の試合が。

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