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ストリートキング  作者: 木山碧人
第四章 イタリア

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第50話 表と裏

挿絵(By みてみん)




 ギリシャ劇場。観客席の裏手。公衆トイレ前。


 そこにいるのは、ジェノ、ジルダ、メリッサの三人。


 中堅戦による熱気が、後ろの観客席から、伝わってくる中。


「ジルダさんを未来に返さないと、宇宙が滅びる……? どういうこと?」


 メリッサの口から語られた、悪い知らせ。


 その内容を確認するように、ジェノは尋ねていった。


「……聞いたら後戻りはできないっすけど、話してもいいんすか」


 こうなると見越していたのか、メリッサは低いトーンで反応する。


 それぐらい重い話なんだろう。聞かなくても、ある程度は想像できる。


(リーチェさんの能力と同等か、もしくはそれ以上か……)


 師匠――リーチェは、思ったことを反転させる能力を持っている。


 一緒にいたいと思えば、その相手を意図せず殺してしまう類のものだ。


 あれは世界規模の能力だった。聞く感じ、それ以上の能力なのかもしれない。


「……覚悟はできてる。だけど、ジルダさんは聞かない方がいいと思うよ」


 似たような経験があったからか、前向きに受け止められた。


 ただ、ジルダは別。内容によっては受け止められない可能性もある。


 どう転んでも悪い知らせだし、聞かないで済むならそれに越したことはない。


「え? どうして、です?」


 聞くつもりでいたのか、ジルダはきょとんとした様子で反応する。


 知らない方が良かった。っていう経験があまりないのかもしれないな。


「もし、不幸な出来事全てがジルダさんのせいだとしたら、耐えられる?」


 見聞きした知識を噛み砕いた上で、ジルダにも分かるように伝える。


 リーチェのことは話せない。だから、これぐらいの塩梅がちょうどよかった。


「……あ。それは、無理かもです」


 それで伝わったのか、どことなくしょんぼりした顔で、ジルダは語る。


「だったら、聞こえないよう耳を塞いでて。言えることなら後で話すから」


 本当なら、聞こえない距離まで、離れてもらった方が無難だった。


 だけど、白教がいつ来てもおかしくない状況で、遠くに行かれると困る。


 だから、耳を塞いでてもらう。それが、現状で考えられる一番安全な案だった。


「……はい、です」


 ジルダは指示に従い、両耳を手で押さえていく。


 これで、余計な心配はなくなったし、聞く準備は整った。


「お待たせ。もう話していいよ」


 すぐにメリッサの方へ視線を向け、話を振る。


 後は、事情を詳しく聞いてみないと何も始まらない。


「覚悟は、いいんすね。じゃあ……」


 メリッサは重い腰を上げるように、語り出そうとする。 


「それ以上は禁句だ、姉御。パクれなかった時点で、引くべきだ」


 すると、突然、メリッサの背後から男性の声が響いてくる。


 ちょうど物陰になっていて、ここからだと暗くてよく見えない。


(刺客? いや、でも、この声って……)


 聞き馴染みのある声に、戸惑いを覚えながらも、目を凝らす。


「……あなたは」


 薄っすら見えたのは、黒いシルクハットと、短い銀髪。


 闇に紛れるような黒スーツ姿で、狼のように鋭い瞳は青色。


 間違いない。予選初に戦った相手。ジャコモ・ラグーザだった。


「あー、やっぱ、そうっすよね……。すません、ジェノさん。一時退却するっす」


 メリッサは納得したのか、両手を合わせ、謝ってくる。


 それも、すぐさま背を向け、ここから立ち去ろうとしていた。


「ま、待ってよ。――メリッサは敵か味方、どっちなの?」


 なんとか反射的に呼び止め、出てきたのは、シンプルな質問。


 ジルダのことが聞けないなら、二番目に聞きたかった内容だった。

 

「あーっと……。ジェノさんは味方っすけど、そこのジルダはうちらの敵っす」


 すると、メリッサは一瞬だけ悩んだ後、結論を述べる。


 頭が情報を受け止めた頃には、メリッサたちは闇夜に消えていった。

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