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ストリートキング  作者: 木山碧人
第四章 イタリア

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第33話 本選準決勝⑨

挿絵(By みてみん)




 武舞台上。眼前には、白いセンスを纏う黒服の女性。


 拳を構え、目つきを一段と鋭くしたラウラ・ルチアーノがいた。

 

(センスが濃い。感覚系か。この短期間で芽が出たようだ……)


 マランツァーノは、洗練されつつある彼女の光を見つめる。


 抜きん出たセンスは濃さ、鋭さ、量の多さ。このいずれに該当する。


 それぞれ特性があり、濃い場合は感覚系。感覚器官が強化される傾向がある。


(強化された感覚に戸惑うか、それとも使いこなせるか、見物ですね……)


 感覚が鋭くなることで、得られる恩恵は大きい。


 動きの先読み、感情の読み取り、五感の強化などがある。


 ただし、デメリットも存在する。それは心の負担が大きすぎること。


 最初は、強くなり過ぎた感性に振り回され、使いこなすまでには時間がかかる。


「……まだ手を抜くつもりか? このままじゃ、お前、負けるぜ」


 奢りか、高ぶりか、はたまた、根拠ある自信か。ただ、どちらにしても。


「面白い。その強気な発言。口だけか本物か、じっくり見定めさせてもらいます」


 ◇◇◇


 目の前の武舞台上には、受けの姿勢に入ったマランツァーノ。


 構えはなく、ただ突っ立てるだけで、こちらの出方をうかがっている。


名前:【ラウラ・ルチアーノ】

体力:【800/1000】

意思:【2043】


名前:【ジェノ・マランツァーノ】

体力:【800/1000】

意思:【2043】


 横目で、数字を再度確認する。


 状況は五分。センスもこちらに合わせてる。


 お前の限界到達点フルパワーなんて、たかが知れてるって言わんばかりだ。


「舐めやがって……。後悔するなよ」


 両拳をぐっと握り込み、思考するのはラウラ。


 理由はよく分からねぇが、体の調子がすこぶるいい。


 負ける気がしねぇんだ。今なら、ぜってぇ不覚は取らせねぇ。


「来るなら、いつでもどうぞ」


 すると、相手はお辞儀をして、誘い込んできやがった。


 罠か、見下してんのか、こっちの底を見抜いたつもりなのか。


 正直、なんでもいい。あいつにやってやりたいことは、たった一つだ。


「じゃあ遠慮なく、そのすました顔面ぶっ飛ばしてやらぁ!」


 ラウラは一歩、二歩と、踏み込み、懐に迫る。


 距離は一気に密着。相手はそこで、ようやく身構える。 


 恐らく、今までと同様、後手で合わせてやろうって魂胆だろう。


「――くたばれっ!」

 

 それでも、先手を仕掛けたのはラウラ。


 繊細さなんて微塵もない、野蛮な右拳を放つ。


 狙いは顔面。種類はストレート。愚直なまでの一撃。


「お手並み、拝見っ!」


 対するは、マランツァーノが放つ右拳。


 上から叩きつけるような形で、迎撃してくる。


 このままいけば、同じことの繰り返しなのは明らかだ。


(……同じ手は食らってやらねぇよ)


 ラウラは拳をかざしながら、相手を観る。


 瞳孔の動き、体の運び、呼吸の仕方、センスの流れ。


 一挙手一投足を見逃すまいと、コマ送りのカメラのように注視する。


(……ここだな)


 観た情報を総合的に判断し、肌感覚がある場所を指定する。


 拳が交差する接点。そのほんの数ミリずれた場所。何もない空間。


 ただ、感覚がここに打て。と頭に語りかけてくる。だったら、従うまでだ。


「「――」」


 拳と拳はかち合い、白と黒の光がせめぎ合う。


 ここまでは今までと同じ。なんの変化もない攻防。


 だが、異変は訪れた。反発するはずの拳が、突き抜ける。

 

 突き抜けた拳は交差し、勢い止まらず、互いの体へと迫っていく。

 

「「――っ!!」」


 スパンと小気味のいい音が鳴り、拳は止まる。


 相手の拳は肩。こっちの拳は敵の頬に当たっていた。


 狙い通りで、感覚通りで、予想通りで、手応えありってやつだ。


「ぶっ飛べっ!!!!」


 地平線まで殴り飛ばす勢いで、ラウラは叫ぶ。


 ラウラの些細な拳の調整。それが噛み合った結果の出来事。


 拳はズレを生み、交差し、思い描いた通り、相手の顔面をぶっ飛ばした。 


『ヒットとクリティカルヒットを確認。マスターに50、敵に200のダメージ』


 そこに聞こえてくるのは、アイの声。


名前:【ラウラ・ルチアーノ】

体力:【750/1000】

意思:【2128】


名前:【ジェノ・マランツァーノ】

体力:【600/1000】

意思:【1948】

 

 表示されるのは、明確な差。違う数字。


 ラウラ・ルチアーノが一歩リードした瞬間だった。


「……お見事」


 ただ、相手もただものじゃねぇ。


 拳の衝撃を、センスで緩和し、受け身。


 足で地面を滑りながら、舞台際で止まっている。


 まぁ、今ので決まるほどの雑魚じゃねぇのは分かってた。 


 ――だからこそ、言ってやりてぇことがある。


「もう一度言う。このままじゃ、お前、負けるぜ」

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