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ストリートキング  作者: 木山碧人
第四章 イタリア

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第22話 好敵手

挿絵(By みてみん)




 コロッセオ地下。チームモンゴル選手控室。


『他の追随を許さない、確かな実力を兼ね備えた正体不明のこのチーム。予選では輝かしい活躍は見られなかったが、本選では、間違いなくのダークホース。匿名希望がまたもや勝利を手中に収めたぁ!!!』


 熱のこもった実況が、モニターを介し、赤い室内に響き渡る。


 室内には、ソファに寝転ぶオユンと、地面にあぐらをかくザーン。


 そして、立ったまま腕を組み、苦い顔をしているボルドの姿があった。


「ふむ。やはり、このチームが勝ち上がるか……」


 試合の結果を受け、真っ先にボルドは反応した。


 本選は全三回戦。四回戦目は決勝となり、舞台が変わる。


 現在行われているのは二回戦中盤。左側のトーナメントが進行中。


 こちらは右側のシード枠に位置し、そろそろ試合のお呼びがかかる頃だろう。


(……決勝で相まみえると思っていたが、厳しいか)


 次の三回戦目では、チームラウラと匿名希望がぶつかり合う。


 こちらも順調に勝ち進めば、勝った方と決勝で相手することになる。


 ただ、試合内容を見る限り、匿名希望の方が一枚も二枚も上手のように感じた。


「適者生存はこの世の摂理……。蟲毒にまぐれはない……っ!」


 トーナメントを蟲毒と表現するのは、オユン。


 独特な言い回しだったが、的を射た発言のように思える。


「強い奴、勝つ。弱い奴、負ける。それだけ。難しく言う必要、あるか?」


 そこに、喧嘩を吹っ掛けるように、ザーンは口を挟む。


 水と油のような関係。ただ、不思議と喧嘩が起こったことはない。


 ある意味では言いたいことを言い合える良好な関係、なのかもしれなかった。


(弱い奴は負ける、か……。人様の心配をする余裕はないやもしれぬな)


 ただ、どちらにせよ負ければ終わり、先はない。


 人のことを考える前に、やらねばならぬことがあった。


「……拙者らも勝たねば先はない。まずは目先の二回戦。そちらに集中しようぞ」


 ボルドは考えを切り替え、そう話を締めくくり、来たるべき時を待った。


 ◇◇◇


 コロッセオ、二階。一般観客席。


 席は満員。次の試合は二回戦の最終試合。


 それも相まってか、会場のボルテージは上がっていた。


「どけ、どけ! ぶっ飛ばされたくなかったら、どきやがれ!」


 その最前列に、荒々しい声が響く。


 声の主は、黒スーツを着た女性。ラウラ。


 後ろには気を揉んでいるジェノと、ジルダの姿があった。

 

「……なんだよ。こっからがいいとこなのに」 

 

 すると、ラウラに気圧されたのか、観客が三人。席を離れていった。


「ほら、空いたぞ。あいつらの試合は特等席で見ねぇとな」


 空いた三つの席の中央に座るラウラは、ぽんぽんと両隣を叩く。


「……いいのかな。こんな乱暴な真似して」


「モニターで見ても良かった気がしますです」


 二人は遠慮しているのか、せっかくの特等席を拒んでいやがる。


 どうやら、試合を間近で観戦することの重要性を分かっていねぇらしい。


「ばーか。僕らが勝たなかったら、最悪、世界が滅びるかもしんねぇんだぞ。勝つための手段なんか、選んでられるかよ。それともお前らは、明日死んでるかもしれねぇやつに遠慮して、世界が滅びる寸前で後悔するのが趣味なのか?」


 説明するのは、起きうる最悪の状況のこと。


 優勝できなきゃ、少なくねぇ確率で起こっちまう。


 なんつっても、白教が裏で関与してるのが確定したからな。


「……まぁ、一理あるか」


「それは……そうかもですね」


 すると、二人は重く受け止めたのか、納得し、席につく。


『二回戦第四試合。予選を最高成績で勝ち抜いた、最後のシード枠の放出だぁ!』


 そこに、暑苦しい実況が、会場内外に響き渡る。


 一階の武舞台からは、白い煙が噴き上げ、現れたのは三人。


(……きたな。そのお手並み拝見させてもらうぞ)


 赤青黄のモンゴルの民族衣装を着た、チーム。


 一時は共闘関係を結んだ仲間。浅からぬ縁がある相手。


『チームモンゴル! 謎に包まれたベールが今、明かされるぅ!!!』


 力の入った実況と共に、会場は熱気に包まれ、二回戦、第四試合は始まった。

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