表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/36

9.収穫の苦労

 


「よし、じゃあこの種をパラパラしていけばいいのね」


 買ったばかりの種を、出来たばかりの畝に蒔く。

 麦をメインに、にんじんとキャベツ、玉ねぎだ。


 しばらく見つめているうちに、ぴょこりと芽が出てきた。


「あら、かわいいわ。元気に育ってね」


 破壊の限りを尽くしてきた自分が、植物を育てるなんて。

 人生変われば変わるものだ。


「次は、水やりをするのね。自力で撒くか、魔法を使うか。魔法を使いましょうか」


 ティーファはその華奢な見た目通り、筋力には自信がない。

 その代わりに有り余る魔力があるのだから、そちらを使うのは当たり前だ。


「井戸の水を汲み上げる、と」


 それも魔法で出来た。

 魔力が少なければ手動でも出来るらしい。


「それで、えい」


 指示通りの動きで杖を振ると、溜まった水がぶわあっと宙に浮き、畑に降り注いだ。


「なるほど、凄いわね!」


 まるで水魔法も使えるようになった気分で楽しい。


「これで、しばらくは置いておけばいいのね。じゃあその間にお家の中のものを見てこようかしら」


 さっきはちらっと見ただけで、倉庫の中身なんかはまだ見れていない。


 馴染みのある武器の手入れ道具もあったし、見たことはあるが使ったことのないものも多い。


「これは良く使いそうね」


 大きな魔導式の荷台だ。

 収穫出来たものをこれに載せて運ぶのだろう。


 倉庫をひとしきり漁ってから、ベッドルームを多少綺麗にしていたら、もう夕方だ。


 ちりん


 鈴のような音が鳴ったから何かと思ったら、魔導書から鳴ったようだ。


「あら、もう収穫の時間なのね。急がないと」


 夜は魔獣が活発に動くから危険、という理由ではなく、魔導書によると、放置しすぎると育ちすぎて枯れてしまうらしい。

 そうすると種が出来て次に使えるらしいが、全部が種になってしまっては困る。


 畑に出ると、黄金色の麦と、丸々と肥えた野菜が並んでいた。


「いい出来栄え、なのかしら? とにかく収穫してしまわないと」


 作物の出来栄えが良いかどうかはティーファには分からないが、作業はしてしまわないと。


 そして、残念なことに。


「これは、魔法は使えないのね……」


 繊細な作業だからだろう、魔法で一気に全部収穫、とはいかないようだ。


「早くしないとっ!」


 そういえば、『魔農家のススメ』にも書いてあった。収穫は手作業だから、計画的に植えましょう、って。まさに今がその状況だ。


「もういいわ! ええいっ!」


 麦はとにかく切断してしまえばいいはず。

 ということで、倉庫にあった大鎌をブンまわして足元から刈る。

 柔らかいものを一気に斬るのは難しいことだが、ティーファにとっては簡単だ。


 野菜はそう簡単にはいかないから一つずつ抜かないといけないが、麦ほど沢山はないからどうにかなりそう。

 何とか全部を抜き終えて、そのあとで散らばった麦をかき集める。


「農家って、こんなに大変なのねっ……!」


 慣れない作業にゼェハァと息を切らすティーファ。

 農家の大変さとはまた少し違う気もするが、まあ仕事とはどれも大変なものだろう。たぶん。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ