32.取り分
ダンが台車と共に戻ってきて、手早く解体して乗せていく。
大人二人が乗れるほど大きなものだけれど、氷結狼と水狼全部を載せられるほどでは無かったから、水狼の方はザンザたちのパーティーメンバーにも手伝ってもらった。
「これだけあれば祭りが出来るな!」
肉の山を見て歓声を上げるが、ティーファは冷たく対応する。
「あら、ダメよ。これはダンが食べる分なんだから」
「全部か?」
「……ん。」
こくりと頷くダンは肉が楽しみな様で手早く解体していた。
革は食べられないから要らないと判定されて捨てられていたが、立派に素材として役立つし買取もして貰えるため、ザンザが回収していた。
全部をティーファ達だけで持って帰れはしないから好きにさせておく。
「よし、じゃあ帰るか!」
ザンザのひと声で隊列を組み直すあたり、手練の冒険者パーティーと言えるだろう。
単に並んで歩いているだけのティーファ達とは大きな違いだ。
「じゃ、またね」
森を抜けた所まで来たら、ティーファの家はすぐ近く。
わざわざギルドまで行く必要性もないので別れようとしたら。
「買取に出さなくていいのか?」
「何を?」
「これは、君らの素材だろう?
運搬は俺らがしたが、それは援護どころか助けてもらったんだから相殺しても余るほどだ。
だからこのまま買取に出すかと思っていたんだが、どうする?」
「んー、どうする、って……。
ダン、あなた、あの肉も欲しい?」
「……んん」
「そこまでの量は要らないみたいだし、買取してもらいましょうか。手間賃とか、取りたいなら取ってもいいわよ」
誠意あるパーティーのようだし、ティーファには相場が分からない。彼らは要らないと言ってはいるが、社交辞令かもしれないし。
なんて考えるのが面倒だから、丸投げしてしまう。
「買取な。俺らは手間賃は要らねぇよ。命があるだけで充分だ。
ちなみに、討伐証明を出さないといけないのは知ってるか?」
「何それ?」
無知だとは思っていたがここまでとは、と盛大にため息をつきたくなったが、助けてもらったことに変わりはないし、彼女らがこれからも活動してくれたら良いこともある。
教えておいて損はないだろう。
「とにかく、それごとギルドへ行くぞ。話はそれからだ」
ティーファにはよく分からないが、倒してそれで終わり、とはいかない様子。
知っている人がやってくれそうだから、大人しくついて行こうとしたが。
「あっ、ダンは来なくても大丈夫よね?」
「ああ、君だけでもいいが」
「じゃあ収穫やっといて! 忘れて全部枯らしちゃう所だったわ!」
「……ん。」
氷結狼という魔境のヌシを倒したことより今日のご飯が心配な二人を相手にして、やっぱりため息をつきたくなるザンザだった。
 




