17.活用方法
連れて帰って、とは言われたものの、その通りにする義理は全くない。
ティーファはそもそも人間が好きじゃないから。
《組織》は個人主義だったし、一緒に仕事をすることは無かった。
だって、ティーファの近くに居たら炎に巻き込まれるかもしれないから、皆寄って来ないのだ。
ティーファ自身も、近づくなオーラを放っているし。
師匠や名前持ちの数人との関わりはあったけれど、それも気が向いた時だけ。
その他の人間は単に必要なものを奪い取る相手としか認識していない。
そんな彼女だから、謎の少年の世話をしてやるつもりなど全く無かった。
「……ん?」
「ん? じゃないわよ! 着いて来ないで!」
なのに、何故か彼は当たり前のように着いて来るのだ。
「あーもう、ドルクにあげよ」
無事台車も回収できたからそのままギルドへと向かう。
「あのー、ドルクー?」
最早遠慮も何も無い調子でドルクを呼びつける。
「この子、あげるわ」
「は?」
いきなり言われたドルクは驚いている。
「いや、お前が拾ったんだから面倒見ろよ」
「嫌よ。それならあの時焼いて置けばよかったわね。いえ、今からでも遅くないわ。焼きましょう」
世話をするくらいなら殺す、というティーファに、ドルクは慌てた。
「いや、焼くな! もっと穏便な方法があるだろ!」
「ないわ。邪魔だもの」
「邪魔って決め付けるには早いんじゃないか?
ほら、あれだろ、お前は引越してきたばかりなんだから、何か困ってることとかないのか?」
仲裁するドルクは必死だ。
少年の命が掛かっているから。
ただ、それでも自分が引き受けようとはしないのがこの村に住む脳筋の長の考え方だ。
全てを引き受けていたらキリがないから。
「そうね、困っていること……?」
少し考えこんでから、思いついた。
「そういえば、あったわ」
「よし、それをさせよう」
内容も何も聞かずに即決するドルク。
少年は自分のことだというのに全く聞かずにギルドの他のものを見ている。
自分の今後に全く興味が無い、おかしな人間だ。
「畑で出来たものを収穫するのがとっても大変なのよ。物を拾うくらい、誰にでもできるでしょう」
「そうだな、じゃあ連れて帰れ」
なんだか納得いかない気もするが、少年の仕事もありそうだしとりあえず連れて帰ることにした。
ダメならその時点で焼けば良いだけ、そう考えて。
「あっ、いい事思いついたわ」
それだけ言って、浮遊台車へひらりと飛び乗る。
この台車は魔道具で、設定されたものの後ろを付いて動くようになっているのだ。
だから、この道を往復する時には、ティーファが自分で歩くしか無かったのだが。
設定をちょっといじって、魔力供給はティーファだけれど付いていくのは少年にする。
「あなた、この道をまっすぐ歩いてちょうだい」
「……ん。」
大人しく歩き始めた少年のおかげで、ティーファはだいぶラクを出来そうだ。
「走って」
短く命令すると、その通りに走りはじめた。
ティーファだって動きは遅くないが、やはり一歩の大きさが違う。
それに、とってもラクに速く移動できる。
「……悪くないかもね」
その呟きは、風の中に置いていかれ、少年には届かなかった。
 




