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殺戮人形産のおいしい野菜はいかがですか?〜最強美少女はふつうの農家を目指してるけど、やっぱり最強だったみたい〜  作者: ことりとりとん


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16.連れて帰ってねぇ

 


 魔農家応援セットの魔導書は家に置きっぱなしだったから通知音は聞こえなかったが、間違いなくもう収穫時期。

 昨日の反省を活かして、まずは麦を全力で刈り取る。


 ブォンブォンと威勢のいい風きり音が響く。

 本来、柔らかいものを切り裂くのは非常に難しいことなのだが、ティーファは器用に刈っていく。


 鎌の刃を熱して、ほんのちょっとだけ燃やしながら切るようにすると、全部燃えてしまわないし上手く切れるのだと、昨日気づいた。


 麦は散乱したままだがとりあえず成長は止められたのでそのままにして、次は野菜引っこ抜き。


 こちらは裏ワザなどなくただひたすらに抜いていくだけ。後で回収すればいい、と抜いた端から打ち捨てて次へいく。


 それを繰り返すこと20分ほど。ようやく全部の収穫が終わってからふと気づいたことがある。


「台車を忘れて来ちゃった」


 少年を載せて行って、そのまま置いてきてしまったのだ。これでは納品物を持って行けない。


「まあいいわ、どうせ行かなきゃいけないんだし」


 そして、次の種を蒔いておこうかと一瞬考えたものの。


「いえ、もう今日は終わりにしましょう。

 もう一度やるのは、辛すぎるわ」


 ティーファは魔力はほぼ無限に持っているが、体力は他の人と比べてもあまり多くない。

 そんな彼女にとって、野菜引っこ抜きはかなりの苦行だった。


 それに、この麦も刈るのは楽しいが、その後に集めるのは大変。なんでここは魔法が使えないの? とセットの製作者に文句の一つも言いたくなるほどだ。


 畑は何かに荒らされたかのような惨状だが、そのままにしてギルドへ向かう。


 ……一体この道を、一日何往復するのだろうか。



「お邪魔しまーす」


 病院の玄関付近には誰も居なかったのでそっと声を掛けてから中に入る。

 用事がなかったらそのまま帰っているところだが、残念ながらそうもいかない。


 絶対に、荷台だけは取り返さないといけないから。


「あらー、おかえりなさい〜。

 あの子、目が覚めたのよぉ。ただねぇ、あの子、喋れないみたいなの。

 あなた、何か知らなぁい?」


「私の家の割と真ん前に倒れてただけよ。

 でもそうね、行きには居なかったから、あそこに居た時間は一時間もないくらいだと思うわよ」


「あらぁ、そうなのぉ。あなたのおうちって、どの辺り?」


「魔ノ森の方です」


「それはおかしいわねぇ。それなら、村の中央を通ったはずだけど、その時は誰も気づいていないんでしょう?」


 狭い村だし、居るのは冒険者ばかり。パーティーやレイドを組むことも多いから、皆仲間意識が強いのだ。

 知らない人が居たら絶対に誰かが気づいているはず。誰にも気づかれずに村を突っ切ることはなかなか難しいだろう。


「じゃあ、魔ノ森から来たのかしら。そんなことって、ある?」


「ないでしょうねぇ。そんなの、生きていられないもの。それにね、彼、魔力がないの。それも変な所なのよね……」


「へえぇ〜。どうやって生きてきたんでしょうね」


 通常、生き物には全て魔力がある。

 それがないというのは、生きていると言えるのか? というレベルで変わっているのだ。


 そんな話をしていたら。


「……ん?」


 魔法適正のない黒髪黒目の少年が起きてきた。

 少年と言いつつ15.6歳くらいで、見た目はティーファより年上っぽい。

 無言で辺りを伺う動きは特に強そうでもなく、《組織》なら名無しレベルの腕かな、という印象。


「まぁねぇ、分からないことを考えても仕方ないわぁ。動けるのなら、もう大丈夫ねぇ。

 じゃあ、連れて帰ってねぇ。ばいばーい」


「はっ? えっ?」


 まだ若干フラフラしている少年を押し付けられてしまった。どうしよう。


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