靄
彼を推して、はや5年になる。最初は、ほんの暇つぶしだった。巷ではやっているアイドルグループをなんとなく調べ、なんとなく彼らの歌を聞き、なんとなく見ているうちにファンになっていた。知らぬ間にドップリはまっていたのだ。そのグループの中でも、私が一番好きな○くんは、天然キャラなのに時々見せる漢らしさで、ファンを魅了している。部屋の一角には、彼のグッズが飾られている『神棚』ができあがっている。そこだけが別の次元にあるかのようで、神聖な空間のように感じられた。どれぐらい彼にお金を費やしたかわからない。CDやDVDが出るとすぐ予約し、ライブにも毎公演かならず参戦する。彼が出る番組はすべてチェックし、カレンダーに書き込んでいく。大それたかのように言っているが、私はただの一ファンだ。古参ぶるつもりもなければ、応援年数でマウントをとりたいわけでもない。推しの声を聞き、元気な姿をみているだけで満足だった。・・・はずなのに、最近になって彼に対して不満が出てきていることに気がついた。それはライブに参加したときによく感じること。ひしめきあう観客席はほとんどが女の子で埋まっており、みんな、自分の大好きな人がステージ上で歌って踊っているのをキラキラした瞳で見つめている。『今日、ファンサもらえた』『何回も目が合った』『手を振り返してくれた』という声に対し、『こんなにアピールしてるのに』『どこ見てるんだろ』『絶対嫌われてる』、そんな会話もよく聞く。応援し始めた当初は、全く気にはしていなかったが、だんだん自分も思うようになってきた。
「私、推しからファンサもらったことない・・・」