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名ゼリフから読み解く 大東亜・太平洋戦争  作者: 佐久間五十六


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チェスター・W・ニミッツ②

 「テキサス男が何故海軍に興味を持ったのかと言うと、海老と言う海の動物を見たからだった。海の王者とも言われる海老は、体の殻が生まれ変わる時は、岩穴に潜んで時を待つと言う。諸君、騙し討ちにあった我々は、今その海老なのである。一刻も早く殻を生え変わらせて再び、海の王者として君臨しようではないか!」

 チェスター・W・ニミッツ米国海軍大将

 このセリフは真珠湾着任直後のクリスマスの晩に、将校クラブでニミッツが行った演説であり、有名なモノである。その第一声がこのセリフだった。ニミッツはユーモアを交えつつ、信念を堂々と述べている。

 真珠湾の不運は、誰の身にも起き得た事と、キンメル元司令官の時代の幕僚達の責任を追求する事無く、ほぼ人事は引き継いだ事も好感視され、敗北感一色だった太平洋艦隊の士気と規律を一気に回復させたと言う。

 米国海軍においては、平時でさえ長官と幕僚はセットで異動する事が多かった事を考えれば、この人事は極めて異例の措置であった。幕僚達はもう一度よし、名誉挽回この指揮官の為にも!とばかりにやる気を起こした事であろう。人間心理をとらえ、協調性に富むニミッツならではの判断であった。

 しかしながら、米国太平洋艦隊司令長官ニミッツ大将が、負わされた責務は誠に重いモノであった。何故ならば早晩始まる日本海軍の次なる作戦によって、もし米国海軍空母機動部隊を、日本の連合艦隊に撃滅された日には、米国本土太平洋側を襲撃される可能性が高まるからである。そして日本海軍連合艦隊がパナマ運河に迫るとなった時、米国の戦争遂行の努力、そして米国民の意識は太平洋に集中し、欧州から遠ざけられる。

 つまり、第二次世界大戦の全局面が変わってしまう可能性があった。もしこの時日本海軍が自信と慢心によって、作戦を見誤る事がなかったとしたならば、もしかすると歴史は変わっていたかもしれない。その位重要な時期であった事は確かだ。歴史にIFは禁じ手ではあるが。日本軍は、米国をこの時本気にさせた事は言うまでもないだろう。

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