クラウゼヴィッツ
「戦争は、防御から始まる。」
クラウゼヴィッツ
クラウゼヴィッツは、プロイセン王国の軍人であり、軍事学者であり、ナポレオン・ボナパルトの時代の人である。名著「戦争論」は、あまりにも有名である。現代でも通用する総合的な視点で、戦争と言うものを論じており、戦争とは何か?リーダーシップとは何か?と言う事を本格的に論じた近代初頭唯一の人であった。
「戦争の経過や勝敗の決定が、戦争の担い手であるところの政治家・将兵及び上級・下級指揮官・一般の兵隊並びに国民に与える様々な精神的影響に、戦争心理学的或いは、極めて特殊な人間学的分析を施している。」
その根底において、そもそも人間とは何か?と言う人間そのものに対する鋭い洞察、さらに戦いを巡る人間的な色々な問題についての冷徹な分析も「戦争論」には秘められている。と、翻訳者の篠田英雄は語っている。そして、このクラウゼヴィッツの「戦争論」で、最も核となる重要な部分がこのセリフである。
「攻撃は闘争よりはむしろ、敵国の領土の略奪を絶対的目的とするからである。それだから、戦争の概念は防御と共に発生するのである。防御は、闘争を直接の目的とするからである。この場合に防御、即ち敵の攻撃を拒上する事と、闘争は明らかに同一人物である。」と、クラウゼヴィッツは、こう述べている。いくら攻撃側が暴れ回っても、相手の抵抗がない事には、戦争状態を作り出す事は出来ない。
確かに戦争になるかも分からないが、最後の決め手を握っているのは、攻撃側よりは攻撃を受ける防御側なのかもしれない。太平洋戦争の時の帝国陸海軍はそれとは真逆で、「攻撃は最大の防御なり。」を実行してしまった。元々、近代日本の戦略思想の中には、「防御の思想」そのものが無かった。満州事変から太平洋戦争に至るまで、政治戦略の外へ外へのエネルギーのエスカレーションは、まさしくこの攻撃防御思想によるもので、地政学的に大きい欠点を持つ日本が外へ外へと向かって行き最終的に米国とぶつかる最悪のシナリオになったのである。




