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名ゼリフから読み解く 大東亜・太平洋戦争  作者: 佐久間五十六


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山本五十六⑤

 「これからはもう、戦艦なんか要らん。君達も近いうちに失業だな。」 山本五十六元帥

 山本五十六は、大正期に長く米国に滞在して、ウィリアム・ミッチェルの航空国防論の影響を強く受けて、日本海軍を航空機部隊主力にすべきだと、主張する。戦艦「大和」の建造にも反対で、基本設計主任の福田啓二を捕まえて、この様なセリフを言ったと言う伝説もある。大鑑巨砲より、航空機と言う訳である。

 ウィリアム・ミッチェル(1879~1936)は、米国陸軍准将で、第一次世界大戦の航空戦で活躍し、大戦終結後には空軍の創設を主張したが、周囲からは、何を荒唐無稽な事を言っているのかと、嘲笑された。1925年には軍法会議にまでかけられ、陸軍を除隊。1936年に不遇のまま世を去っている。

 第一次世界大戦の頃の飛行機と言うのは、翼は羽布張りで、小型の爆弾を吊り下げて飛んでいる様な代物であった為、とても戦艦を沈められる様な兵器ではなかった。戦艦と戦うには戦艦しかない。これは圧倒的な当時の常識だった。昭和8~9年の時点で、日本海軍の主力戦闘機は90式艦上戦闘機と言う複葉機で、せいぜい100~140機程度しか製産されておらず、とても航空機がそこまでの力を持つとは思われていなかった。

 多分、航空派でなくとも、第一次世界大戦後は優秀な海軍軍人ならば、皆飛行機が海上作戦の花形だ。との納得はあったであろうと推測されている。戦闘の要素は突き詰めれば「集中」と「分散」である。分散して制圧され難い味方ユニットを狙った敵ユニットへ、早く集中して破壊力を及ぼす。そのスピードを考えたなら、戦艦よりも「空母+飛行機」の方が、イニシアティブを取りやすいユニットであるという結論は出るだろう。

 しかし、それでも各国海軍はこぞって大鑑巨砲にこだわったのは、政治力。即ち水上艦は予算の総額も多いし、予算に付随する人員数や、高級ポストも多かったけれども、飛行機はそれが逆で、しかも平時の将校の死亡率は高い事か。比較されての事ではなかっただろうか。それだけ巨大戦艦は、ステイタスが高く影響力のある「巨大利権」だったのである。

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