マスコミ(世論)
「動機が正しければ、道理に反する事も仕方ない。」
マスコミ(世論)
有名なマスコミの煽り立ての一つである。第一次世界大戦の戦後大恐慌で株価が暴落、取り付け騒ぎが起きて、支払いを停止する銀行も現れていた。さらに追い打ちをかける様に、大正12年には、関東大震災が日本を襲う。国民生活の疲弊は、深刻化していたのである。
昭和に入ると、世界恐慌の波を受けて、経済基盤の弱い日本は、たちまち混乱状態に陥った。「5・15事件」の前年には、満州事変が勃発。関東軍は何の承認も得ず勝手に、満蒙地域に兵を進め、満州国を建国した。中国の提訴により、リットン調査団がやって来て、満州国からの撤退などを要求するも、日本はこれを拒否。昭和8年には、国際連盟を脱退してしまう。
だが、これら軍の暴走、国際ルールを無視した傍若無人ぶりな態度にも、上記のセリフの様な事を言って、快哉を呼んでいたのである。その象徴的な社会問題とも言えるのが、憲法学者美濃部達吉による「天皇機関説」問題である。
天皇を国家の一機関と見る美濃部の学説を、貴族院で菊池武夫議員が、「不敬」に当たると指摘。ただ、天皇機関説は、言ってみれば学門上では当たり前の認識として捉えられていた。天皇御自身が、側近に「美濃部の理論で良いではないか?」と洩らしていたほどであった。
しかし、それが通用しない程ヒステリックな社会状況になってしまった。天皇機関説は、国体明徴論から、天皇親権説へとエスカレートしていく。これは、この時代狂信的に「天皇親政」を信仰する軍人、右翼が多く台頭する事を助長してしまう事になる。
マスコミの煽り立てによって、戦争への道を突き進んだのは明らかである。勿論、直接的に戦争を行ったのは、大本営であり、大日本帝国陸海軍である。それでも、時代の息苦しさだけで、戦争になった訳ではない。本来冷静であるべきマスコミが戦争を煽り立てた事は、大いに反省すべきである。