ドワイト・アイゼンハワー
「太平洋戦争はキングのプライベートwarだ。」
ドワイト・アイゼンハワー(第34代米国大統領)
ドワイト・アイゼンハワーは、1890年~1969年に活躍した米国第34代大統領(1953年~1961年)である。欧州の連合軍総司令官として、国民的人気を博し、戦後大統領に就任した彼が太平洋戦争を評した時のセリフである。
キングとは、米国海軍の頂点に立ち太平洋戦争を指揮した、アーネスト・キング合衆国艦隊司令長官兼作戦部長である。米国には太平洋と大西洋の二つの艦隊があり、それぞれ司令長官がいる。合衆国艦隊司令長官はその上位に位置して、全米国海軍の艦隊を指揮する最高指揮官である。日本海軍で言えば、軍令部総長と連合艦隊司令長官を合体させた様なもので、キングの権限は強く、海軍の全権を掌握していた。
キングは、非常に自負心がで強く、且つ高圧的な人物で、海軍内部での評判は凄く悪かった。行く先々で、上官とぶつかり部下にも好かれなかった。しかも酒好きで、何度も謹慎処分を受けて、女にも手が早い。酒と女はともかく、人間関係を重視する日本海軍では、絶対に出世出来ないタイプである。
ソロモンを落としてから、中部太平洋を攻め上って行くと言う対日戦争のグランド・ストラテジー(大戦略)は、キング自ら立案したものであり、日本を破った最大の功労者である。また、大西洋と太平洋の両洋のバランスをとりつつ、次第に太平洋へ海軍力を集中させて行った事も評価出来る。
元々米国と言う国家全体としては、第二次世界大戦は、アジアよりもヨーロッパでの戦いに重きを置いていた。だから陸海軍を通じても、太平洋での日本軍との戦いに割いている兵力や物量は、米軍の総量の約15%位であった。しかし、ドイツ海軍はそれほど大した敵ではなかった。キングは、同盟国である英国との関係を踏まえ、ヨーロッパ優先の建て前を尊重しつつ、海軍の主力を巧みに太平洋に送り込んだ。これは、キングの功績である。
ノルマンディー上陸作戦を指揮したドワイト・アイゼンハワーがこの様なセリフを吐くのも無理はないのである。米国海軍には、キングの様な強烈な人物がいて、その人間をトップに据えて、太平洋戦争を最初から最後まで任せる所等は、実に米国らしい大胆且つ積極的な人事と言えるだろう。




