東久遷之宮稔彦
「何を言うか。"敗戦"じゃないか。"敗戦"と言う事を理解する事から全てが始まるんだ。」
東久遷之宮稔彦(元首相)
帝国陸海軍が完膚無きまでに敗れた事を認めたくない人間は、それなりにいた。原子爆弾2発を食らってもまだ、まだ戦えると徹底抗戦を訴える強硬派が居た位である。それを一喝したのが、この東久遷之宮稔彦(元首相)のセリフであった。
戦いは終わった。のではなく、敗戦した。それを理解する事から全ては始まる。それは、日本が新たな社会へと生まれ変わる為の意思表示だったのかもしれない。終戦直後の日本人は敗戦を受け入れられなかった。何故なら、大本営が嘘をついていたからである。帝国陸海軍は大陸でも太平洋でも、全戦全勝。負けなど有り得ない。と言われ続けた末路が国民を絶望の淵に追いやったのだ。
納得がいかないのは、陸軍も同じだった。このセリフは、日本国民向けに発せられたものではない。嘘をついた張本人である大本営のエリート達に向けて発せられたものである。日本は負けた。その前提がなければ、日本はいつまでも先に進めない。ここで、大日本帝国の歴史が終わるかも知れない。
しかし、そこに住む国民と国土はこれからもあり続ける。未来が見えぬ中にあって、まず敗戦した事を受け入れる事から全ては始まって行くのだと。敗れる事は恥ずべき事ではない。どんな強国もいずれは敗れ衰退していく。大日本帝国は70年しか持たなかった。それでも先人達は、新しき日本を米国と共に築いてきた。新しき日本は平和な住み良い国である。一度の敗戦くらいで落ち込むのは間違いだ。これから始まる占領政策に従い然るべく施しを受ける事になる。
それでも、東久遷之宮は、まずは日本国民が敗戦した事を自覚させなければ、新しき日本は作れない。東久遷之宮のセリフは、その事をよく教えてくれる。唯終わったのではなく、敗けて終わった。否定したくても出来ない、厳しいまでの現実がそこにはあったが、この事実からは目をそらす事は何人たりとも出来ない。




