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名ゼリフから読み解く 大東亜・太平洋戦争  作者: 佐久間五十六


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戦時下スローガン②

 「欲しがりません。勝つまでは…。」

 戦時下スローガン

 日本国民がこの時代ほど、総力を結集した事は今だかつて無かった。日本国民はこれらのスローガンの元、貧しさに耐え装飾品の類いは、軍需物資になるため、全て軍に供出した。そして、女性達は出征した兵士の為に千人針を縫い、国民学校の学生もが、皆工場で働いた。国民学校と言えば現在の小学生である。

 日本国中がただひたすら勝利の為だけに邁進していた時期であった。その結果が、並外れた視野狭窄と言える"集中力"を生み出していた事を否定する事は出来ない。しかし、結局総力を結集した方向が「お国の為に死ぬ事」になってしまったのである。

 果たして国の為に死ぬ事が正義なのであろうか?私はそうは思わない。生きて国の為に忠義を尽くす事の方が、本来の尽忠報国であり死ぬ事で貢献出来る事等無い。国の為に尽くしたいと思うのは立派だ。その志を否定する気はない。

 しかし、それは時に人を暴走するトリガー(引き鉄)に成りかねない。死ぬ事で満たされるものがあるとすれば、それはもうヒロイズムによった自己満足でしかない。明らかにテロとは違うが、自己満足と言う点で見れば同じである。目的達成の為に死をも辞さない姿勢は、非常に危うい事である。

 それが最も端的な形になったのが、神風特別攻撃隊を始めとした自爆攻撃である。戦闘員が戦闘員や兵器を狙った自爆攻撃の為、テロとは違うのだが、それでも、未来ある若者を何千人も失った事は大きな代償であった。しかも、その命をかけた特攻も、成功率は約25%と決して高くはなかった。その事実を知らずに、精神論で特攻を語るべきではない。その暴走を止めるべき銃後の国民は、あろうことか、大手を振って若者を戦地に送り出し続けてきた。

 戦時下スローガンを掲げ、一致団結するのは構わないが、それに注力するあまり、必要とされる筈の冷静力や思考力が停止してはいけない。日本国民は、その事を反省し次に活かすべきである。

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