東条英機
「物理的な戦力比が1対4ならば、日本は人の精神力で勝っている筈だから、五分五分で戦える。」
東条英機陸軍大将
太平洋戦争開戦直前の日米の戦力比は、陸軍省戦備課の内々の試算では、その総戦力比は何と1:10(日:米)であったという。「1:10」と言う数字自体も大分身びいきされて出された数字だが、そのデータを元に軍事課では、戦闘開始以降の日本の潜在的な国力、また太平洋に動員出来る地の利も考慮すれば日米比で、「1:4」が妥当な数字だとされ、陸軍大臣である東条英機に報告がなさりれ、その結果発言されたものである。
首相であり、陸軍大臣でもあった開戦時の日本の顔であった彼が、米国の戦力比をいかに甘く見ていたかと言う事が伺いしれる。甘く見積もって国力10倍の米国に対して、どういう計算をすれば、戦力比が五分五分になるのだろうか?
別に東条英機一人がその様な誤った考えを持つ事自体は問題ではない。しかしながら、最も冷静で合理的な判断をしなくてはならない筈の国の指導者がその様な安易な精神論に走ってしまったのが、敗戦の要因の一つであると考える。
大東亜・太平洋戦争における日本軍の間違った精神主義の諸悪の根源は、東条英機と言う男に由来していたのかもしれない。そもそもが、この様な甘く安易な精神主義がまかり通っていたのは、日露戦争に起因する。
国力10倍のロシア相手に、開国間もない近代日本が勝利した。その成功例を後世の人間は、拡大解釈してしまった。それを米国にも適用したのが、失敗の本質なのではなかろうか?
精神主義もある程度は必要だが、東条英機の場合は、行き過ぎの害悪にしか成り得なかった。彼の様な甘い考えのリーダーは、国政を謝るのだ。