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名ゼリフから読み解く 大東亜・太平洋戦争  作者: 佐久間五十六


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堀栄三

 「でも、確実だと分かっている情報でも、作戦部では、見向きもしてくれませんでした。彼等は自分の頭の中にある考えだけが全てであり、例え私の持っていた情報が正しくても、相手にしてくれませんでしたね。」 堀栄三

 昭和18年春から参謀本部の情報部に籍を置いていた堀栄三は、当時"日本のマッカーサー"とあだ名されていた。何故なら米軍が次に何処に行くか、攻めてくるのかを、ことごとく当ててしまったからである。

 何故その様な事が可能だったのか、彼に言わせると簡単な事だと言う。様々な情報を分析する分かると言うが、例えば以下のような方法を用いた。参謀本部の情報参謀の元には、米国の放送を傍受した内容が毎日の様に届いた。その中には天気予報や株式市場の状況等も含まれており、何気なく、毎日それらを眺める様に聞いていた。

 すると、堀栄三はある一つの法則を見出だしたのである。それは、米軍の新しい作戦が始まる前には、必ず薬品会社と缶詰会社の株が急騰する事であった。堀栄三は、恐らくきっと兵士に持たせるマラリアの薬と食糧を軍が大量購入するからだ。と、予測した。

 また、米国の放送は今何処の部隊が休暇中であるかを、報道する。その休暇中の部隊がどの戦線に出てくるか、次の作戦展開の場になる地域を見抜いたのである。ところが、この堀栄三のセリフが示す様に、折角の堀栄三の情報が活かされる事は無かった。

 いくら素晴らしい武器を保有していても、それが使われないのであれば、宝の持ち腐れである。この時期は、一体誰が、どの機関が戦争戦略方針を決めていたのかも、分からなくなっていた。言うなれば、軸がなく無責任にフラフラ動いているだけであった。

 情報も、立派な武器であり、戦争の行方を左右する重大要素の一つである。目には見えない実体の無いものだが、これ等は戦争において一番軽視してはならない要素なのである。

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