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名ゼリフから読み解く 大東亜・太平洋戦争  作者: 佐久間五十六


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陸軍省軍事課幕僚

 「議会が何を言おうが、関係ありません。我々が文書を使って、天皇の下にいる侍従官に強く言い置きを渡しておく。それで、判を貰って"勅命"として実行すれば良いだけの話だったのですよ。」 陸軍省軍事課幕僚

 米国の「飛び石作戦」は、昭和18年の終わりまで続けられ、ブーゲンビル島を制圧。トラック諸島を射程圏内に入れた。日本の定めたばかりの「絶対国防圏」のほんの目の先まで来ていたにも関わらず、日本軍首脳部大本営は、有効な手一つ打てずにいたのである。

 この頃既に「大本営政府連絡会議」や「御前会議」と言う日本の意思決定最高機関自体が混乱し、体を成していなかった。「御前会議」は、「連絡会議」で決まった事を只追認するだけの会議であり、また「連絡会議」にしろ、例えそこに軍部が言った事を否定したとしても、軍部は天皇の所に持って行き勝手に判を貰ってしまう。そうすればそれで、「勅令」として実行出来る。

 このセリフは、そんな状況を平然と術懐したものである。昭和天皇は太平洋戦争中、大権を持つ者として、天皇の名の下に署名していたと言う事を意思表明をする「詔書」は、「宣戦の詔書」と「終戦の詔書」の二つしか出されていない。(ただし、政府や陸軍大臣の要請により、戦功のあった者を激励するなど、事務的なものはいくつか出している。)

 国民に対して意思表明する「勅語」は20程出しているが、これ等の多くは帝国陸海軍の下僚達が一方的に下書きをして、それを天皇陛下が形式的に「勅語」とするものであった。特に大本営の作戦部は、現場の状況を鑑みる事無く、また米国海軍の動きを精査する訳でもなく、「絶対国防圏」を盾に闇雲に数合わせの為に部隊を動かしているだけであった。戦争の終わらせ方を帝国陸海軍人達は知らなかったのである。

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