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名ゼリフから読み解く 大東亜・太平洋戦争  作者: 佐久間五十六


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東条英機⑦

 「天皇陛下は神であって、天皇陛下に帰一していれば、国体の輝くこの国は敗ける訳が無い。戦って未だかつて負けた事の無い国なのだから。」

 東条英機陸軍大将(元首相)

 このセリフこそ、東条英機の意味不明な理論の根底ある考え方であった。事ある毎に東条英機は、こう語っていた。当然こんなリーダーだから国民も嘘の情報に振り回されていた。

 最も国民自身が客観的にものを見る習慣が無かったのだから、上からもたらされる"主観的な言葉"にカタルシスを覚えてしまっていた。言うなれば、「今は大変だけれども、いずれは勝つんだ…。」そうした考えに陥ってしまったのである。

 恐るべきドグマが社会の中に全体化していった。それが、昭和18年と言う年だった。もし、ありとあらゆる情報を既に知っていて、この様な意味不明の精神論を振りかざしていたのだとすれば、それは"確信犯"であろう。国家の大事をその様な人間にしか任せる事が出来なかったのは、国民の責任でもある。昨今よくリーダー不在を嘆く論調は多い。

 しかし、よく考えるべきである。リーダー不在の状況を生み出したのは、他の誰でもない国民であり、国民の責任においてリーダーと言うものは、政治及び軍事力を、大きなリーダーシップによって、それらを行使していくものである。だから本来ならば、敗戦して裁かれるのは、A、B、C級戦犯者ではなく、国家国民が等しく受けるべきものであった。

 しかしながら如何様な事は、物理的に無理がある。だから戦争犯罪人と言う分かりやすい形で、代表者に制裁を加えた。只、それだけの事であった。多くの戦犯者は、日本国民を代表して刑に服した。にもかかわらず、彼等に対して我々日本人は、もう少し温かい眼を持つべきではないか。

 日本人の美徳の一つは、他者をおもんばかる事の出来る"配慮"の心にあるであろう。だから戦犯者を見る目も少しは変わって来るだろう。

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