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名ゼリフから読み解く 大東亜・太平洋戦争  作者: 佐久間五十六


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ウィリアム・ハルゼー②

 「撃墜した獲物の鴨の中に、孔雀が一羽混じっていたようだな。おめでとう。」

 米国海軍大将ウィリアム・ハルゼー

 山本五十六機撃墜の作戦の報を聞き、作戦を指揮していたウィリアム・ハルゼー米国海軍大将が作戦部隊の指揮官であるミッチェル攻撃隊長に打電した祝電が、このセリフである。

 作戦を計画した時から、狙いは敵将山本五十六であった。米側で言うなればニミッツやアーネスト・キングと言う大物を仕留めたに等しい功労であった。これで日本軍は、将棋で言えば詰んだも同じ状態になった。この日米にとって分岐点となった山本五十六機撃墜事件であるが、実は山本五十六はまだ生きていたと言う説がある。捜索に来た日本軍の医師が、山本五十六を診察したが助かる見込みはないと判断した為、山本五十六は近くにいた兵士に介錯を頼んだと言う。結局山本五十六は、この作戦により命を落とした訳である。

 が、船乗りが舟の上で死ねなかったのは、皮肉以外の何物でもない。最も山本五十六は、航空戦力推進派の海兵ではあったが…。司令塔を無くした日本軍は、ここから何かがおかしくなって行く。言うなれば、死した山本五十六が日本の舵取りを最後の命果てるまで、ギリギリで操舵していたとも言える。特攻だ、玉砕だ、と言う様な事は山本五十六がいれば、許すはずはなかった。ポーカーやブリッジと言ったギャンブルが大好きだった山本五十六ですら、命を捨てに行く様な作戦は絶対に認めなかっただろう。

 暗号の解読と言った戦争における最も基本的な戦術のミスで命を落とした山本五十六だが、日本軍全体を通して、米国側に対して優勢になれる分野が無かったと言う事も、敗戦の主たる原因であると考えて良いだろう。鴨を狩に行って孔雀が得られるなど、有り得ぬ話である。それをあえて行ったのが、米国であった。余程確信的な作戦だったに違いない。山本五十六は遂にこの戦争の結果を知る事無く、南方のブーゲンビル島の海に散って行った。

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