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名ゼリフから読み解く 大東亜・太平洋戦争  作者: 佐久間五十六


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日本国内世論

 「日本は、太平洋戦争において、本当は米国と戦っていたのではない。陸軍と海軍が戦っていた。その合間に米国と戦っていた。」

 日本国内世論

 帝国陸・海軍を問わず当時の指導者達は、"戦争を戦っている"のではなく"自己満足"しているだけであった。可笑しな美学に酔い、一人一人が悦に入っていただけなのだ。

 兵士達は、それぞれの戦闘地域で奮戦したが、餓えや病で死んでいくのに、である。指導者達が専ら会議で論じていたのは、「米国がA地点を攻めてきたから、今度は日本の師団をこちらのB地点に動かし、戦わせよう。」と言うまるで、将棋の駒を動かすような事ばかりであり、二言目には、「日本人は皇国の精神に則り…。」と、精神論に逃げ込む有り様であった。

 物量の圧倒的な差が歴然としてくるにつれ、指導者達は、現実逃避の世界に陥るしか無かった。挙げ句の果てが、陸軍と海軍の"うちわもめ"であった。足を引っ張りあい、このセリフの様に国民に揶揄されるほど、対立を深めて行く。馬鹿げた事に、陸軍と海軍はお互いに情報を隠しあってしまう。その最たるものが「大本営発表」である。

 大本営「陸軍報道部」と「海軍報道部」が、競いあい国民に嘘の戦果を報告するようになった。それがエスカレートして、悪い情報はひた隠しにされた。日本国内には、垂れ流された嘘で溢れていたのである。「大本営発表」の嘘の肥大化は、下らぬうちわもめが原因だったとは…。

 昭和17年の頃の日本は、例えるならば、台風が来て屋根が飛んでしまい、家の中に雨がザーザー降っているのに誰も何も言わない。雨漏りしているのに。わざとそれを見ないふりをして、一生懸命玄関の鍵を閉めて、戸締りに精を出している。

 そんな様な状態であった。つまらぬ足の引っ張りあいが無ければ、日本軍は、もう少しまともな戦い方が出来たかも知れない。そう思うと残念で仕方がない。

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