米国世論
「ダーティ・ジャップ」 米国世論
真珠湾攻撃の成功に日本中が喜んでいた頃、時同じくして米国では、駐米日本大使館の職員が、大失態を犯していた。
それは何かと言うと、米国へ渡すはずの開戦通告書の手交を遅延させてしまったのである。外務省本省が電報で送った、米国への開戦通告も在米日本大使館で、正式にタイプするのに手間取り、結果的に真珠湾攻撃開始から55分も遅れてしまった。
在米日本大使館では、その重大性を理解しなかったのが故に起きたものであった。一説によると、このタイプを担当する職員は、前日に飲み会に参加していたとも言われ、これは、完全なるヒューマンエラーであったのだ。
真珠湾攻撃の指揮を採った山本五十六連合艦隊司令長官も、開戦通告がきちんと米国側に伝達されているのかを心配していたが、最悪の結果になってしまった。結果的にこの55分の遅れは、米国人に「日本は卑怯な騙し討ちをされた。」、「ダーティ・ジャップ」と、米国に対日強硬論を抱かせる事になる。
だが、日本が鬼畜米英ならば、米国はダーティ・ジャップで対抗するという訳ではなかった。他国の事には、不介入とする米国のモンロー主義を転換するかどうかで、世論は割れた。結局、米国は対日参戦への理由付けに、まんまと利用される結果になってしまったのである。
開戦通告と言うのは、戦争をする上で欠かせない国際法に明記されている、ルールである。武士の世界で言えば、果たし状の様なものであり、いつ何処を攻撃するかを伝えるものである。
戦争開始のフローとしては、最後通帳→最後通告→開戦通告と言うフローは、理由はどうあれ、絶対に欠かしてはならない最低限のマナーであった。日本の真珠湾攻撃は、卑怯な騙し討ちと言うレッテルは拭えない事実である。一部の人間のミスで民族や国家の品位が落ちてしまう事も、日本人はきちんと認識すべきであった。何よりも戦争中だから何をしても良いと言うのは、武士道に反する。




