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名ゼリフから読み解く 大東亜・太平洋戦争  作者: 佐久間五十六


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山本五十六②

 「種々考慮研究の上、結局開戦劈頭有力なる航空兵力を持って敵本営に斬込み、彼をして物心共に当分起ち難きまでの痛撃を加わるの外無しと考えるに立ち至り候次第に御座候。」

 山本五十六元帥

 山本五十六は、あくまで避戦派の人間であった。米国と言う国家と戦う事になれば、国を滅ぼす様な戦いになる事は、充分に分かっていた。それでも国内世論と国際情勢が、山本五十六に戦争を決意させる事になる。

 このセリフは、山本五十六の決意を表したものである。このセリフで言う所の航空兵力とは、空母を中心とした機動部隊を指す。これにより米国は転び簡単には立ち上がれない様な攻撃を加える。つまりは奇襲作戦に近いプランを練っていたと思われる。

 そして山本五十六は、出来るだけ早い時期に講話を結ぶ為のプランを確実に用意していたと、思われる。だが、山本五十六の思う様な展開にならなかったのは、歴史が証明している。連合艦隊司令長官と言う立場にありながらも、山本五十六の分析力と言うものは、その先見性には目を見張るものがあった。

 それが存分に発揮出来なかったのは、山本五十六の責任と言うよりは、大日本帝国海軍と言う組織の限界にあっただろう。少なくとも人事においては、連合艦隊司令長官に任命権があっても良かっただろうし、あまりにも大日本帝国海軍と言う組織は、応用力を欠いていた。それが直接的に、間接的に日本軍を敗退の道へと追いやる事になる。

 山本五十六の意外性が通用したのは、精々山本五十六の言う通り、半年から一年であった。それが日本軍の勢いをそのまま表している。航空兵力を整え無いまま、じり貧であった石油も底をつき始める。敗れるには敗れたが、もう少し質の高い戦い方を日本軍は出来たかも知れない。何よりもあれだけの犠牲者を出す事は避けられたかもしれない。

 それらは仮定の話であり、歴史を語る上では禁じ手なのだが、そう言わざるを得ない事を日本陸海軍はやっていた。日本が負けたのは兵器の質ではなく、ヒューマンエラーによるものが大きい。

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