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名ゼリフから読み解く 大東亜・太平洋戦争  作者: 佐久間五十六


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山本五十六⑨

 「中央では、ガダルカナル島の将兵の三分の一は大丈夫、撤退出来るなどと、相変わらず楽観的な事を言っているが、その判断は甘過ぎる。運有らば兵力の五割、六割を撤退させうるかどうかである。しかし、ガダルカナル島は元々海軍が始めた戦だ。連合艦隊司令長官としては、陸軍に対する責任がある。動ける駆逐艦を全て投入して救出作戦を成功させる。三回に分けて大発(大発動機艇)ではなく、全て駆逐艦で行うものとする。結果、水雷戦隊の半数を失う事になるかもしれない。だが、作戦は何としても成功させねばならないのである。」 山本五十六元帥

 米国海軍太平洋艦隊司令長官ニミッツが「天晴れ、御手上げ。」と呼び、米国の戦史家モリソンが、「世界海戦史において、これ程見事な撤退戦は無かった。」と、激賞の辞を惜しまなかったのが、日本海軍のガダルカナル島撤退戦であった。

 日本陸軍の兵士を乗艦させる為に、水際で停止するのは撃沈される可能性が、極めて高い命懸けの撤退作戦であった。危険と困難を極めるこの作戦に、山本五十六元帥は、虎の子の駆逐艦22隻を投入する事を決定する。しかも、珍しく廢下の水雷戦隊の将兵全員にその意思を明確に示した。これは、多くを語らずとも救出作戦に懸ける山本五十六元帥の覚悟がいかに強いものかを示して余りある結団であった。

 作戦は、三回おきに三往復して救出をはかる事に決定。第一回は1943年2月1日、第二回は2月4日、第三回は2月7日に実施して撤収を終了しようとした。だが、第一回は無事に成功しても、第二回は、同じ事の繰り返しだ。果たして無傷で成功出来るのか?いわんや三回目に至っては失敗する可能性が高い。

 そんな心配を他所に、現実は何と全三回を通じて駆逐艦一隻が沈没。一隻が大破。になったのみで、作戦は成功。ガダルカナル島にいた陸軍と海軍の1万652人(うち海軍848人)を救い出した。制空権が敵にある中で、この成果は奇跡的な撤退作戦といえるべきものであった。この作戦に参加した全ての者達が、最大限の任務を遂行したまごうことなき、未曾有の撤退作戦であった。

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