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名ゼリフから読み解く 大東亜・太平洋戦争  作者: 佐久間五十六


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チェスター・W・ニミッツ③

 「日本の戦術や考え方には、一定した型がある。二つの目的を持ち、再び部隊編成の複雑性が見られ、またも日本は挟撃作戦と、包囲作戦をやろうとしている。」

 チェスター・W・ニミッツ米国海軍大将

 1942年(昭和17年)5月6日から8日にかけて、オーストラリア北東の珊瑚海で史上初の日米による空母機動部隊同士の艦隊決戦が行われた。日本海軍は、軽空母祥鳳が沈み、対する米国海軍は、正規空母レキシントンが沈没、空母ヨークタウンは中破して、ほうほうの体で退却した。戦闘においては、日本海軍側の判定勝ちであったが、ポートモレスビー上陸支援は出来ず、目下の目的は果たせなかった。

 本来なら連合艦隊参謀の黒島亀人少将は、これを過として学ばねばならなかった。複雑な黒島戦術が成果を収める為には、分散した兵力の相互支援が完璧なまでに適切である事、充分に緻密な連絡をとる事、索敵を充分にする事、これら3つの条件が満たされた時でなければ、不可能である事を思い知らねばならなかった。

 同じ事をもう一度。それがミッドウェー海戦であった。参加艦艇200隻以上の大艦隊が10のグループに分かれ、太平洋上の北から中央にかけて展開し、上陸作戦開始日に合わせて、それぞれが決められた作戦計画通りに進撃するのであった。珊瑚海海戦で失敗した共同作戦が今度は上手く行く。と、黒島亀人少将は考えていた。山本五十六元帥も、この計画を承認して、例によって徹底しようとはしなかった。

 一方の米国太平洋艦隊司令長官チェスター・Wニミッツ米国海軍大将は、珊瑚海海戦の経緯をきちんと分析して、そこから数多くの戦訓を得ていた。チェスター・W・ニミッツ米国海軍大将は、このセリフを部下に喝破する。戦う前にこう見透かされていたのが、ミッドウェー海戦であったのである。 

 暗号がどうのと言う前に、日本艦隊の敗北は決していたのである。しかも、あろう事か第一次攻撃隊をミッドウェー島に発進させる直前の南雲忠一中将の敵情勢判断はひどかった。米国海軍空母はいないと頭ごなしに決めつけて、思い込みやりきれぬ程、惜別の想いに囚われるのみである。それが必敗の司令官の心情なのだろう。

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