第七十九話「集合」
最近また自分の中でsumikaブームが来てる
「……」
ピンク髪の男は、ボロボロになった結輝の髪を掴み、自分と同じ目線の高さまで持ち上げた。
「あそこに誰か居るぞ。二人か?」
走りながら、いの一番にトパーズが結輝達に気が付いた。
「ん……? あ、あれは……!」
『ユウキッ!?』
「誰かに掴まれてやがるッ! 敵かッ!? 《弾む盾》ッ!!!」
トパーズは背負っていたエメルを下ろし、黄盾を出現させ、それを蹴った勢いで結輝の元へ高速移動しようとした。が、黄盾は出てこず、《弾む盾》で蹴り飛ぶ気満々だった為、スカッと空を蹴り、転んでしまった。
「クッソ!! 盾が出ねぇ!?」
「駄目です、私の能力も……!」
幸志郎も、さっき光を消費し過ぎたせいか、能力を発動することが出来なかった。
「ルーシィ、行けッ!!」
ここに居る中で、一番の速さを持つルーシィを結輝の元へ向かわせた。
「おい! お前が能力使ったら、裏切った事がバレちまうぞ!? それに、お前が能力者だって事も───」
「大丈夫だ。この格好じゃ、誰かまでは特定出来ない」
リアムは、膝下まであるグレーのロングパーカーを着用しており、フードを深く被っていた。これなら大丈夫だろうと踏んだのだ。
しかしピンク髪の男もまた、エメル達に気付いていた。
「人数が多すぎる。ここは一旦引くか───」
男が能力を発動させようとしたその時。
「音が、どんどん近づいてる……!?」
エメルの言葉の通り、男と結輝の隣のビルから、恐ろしいスピードでビルを突き抜けて飛ばされるシオンと、それを追う壊斗が姿を現した。
『か、カイト……!』
壊斗の姿が見え、皆は歓喜した。だがそこで、トパーズだけが違和感を感じた。
───いや、何かが違う……あれは本当にカイトか……!?
トパーズは、直感でそう感じた。目に映った壊斗の姿は、いつもの壊斗とは比べ物にならないくらい、どす黒く、まがまがしいものだった。
横切る際、壊斗と目を合わせたピンク髪の男は、体が石のように硬直し、一歩も動けなかった。
殺される。それが、男が初めて壊斗に抱いた感情だった。
その時、背後から他の男が現れ、唸り声を上げながらピンク髪の男を抱え上げ、最大出力で跳び上がった。
「間一髪ッ!! 逃げるぞユイガッ!!!」
「ジェイス……?」
「あッ!? テメ、さっきのッ!!」
そこに現れた男は、エディを抱えて逃げた男であるジェイスだった。
「ルーシィッ!!」
リアムの声を聞き、ルーシィは飛び上がった。男の足に噛み付き、絶対に逃がすまい。と。しかし、ルーシィの跳躍でさえ、あと一歩のところで届かなかった。男たち二人には、早々に逃げられてしまった。
「アイツを人質に……」
結雅と呼ばれた男は、ジェイスに助けられた際、咄嗟に結輝を離してしまったのだ。
「馬鹿言うんじゃねぇッ! まずは俺らの命が最優先だッ!!」
ジェイスは、より一層結雅をガシッとホールドし、逃げ果せた。
「リアム! アイツら撃ち落とせねぇのかッ!?」
「悪い。弾切れだ」
「それじゃ、仕方ありませんね……」
「クソ……逃がした……! だが、結輝は回収出来たッ!! エメラルドッ! まだ力使えるかッ!?」
「うん……大丈夫……!」
皆は直ぐにボロボロの結輝の元へ駆け寄り、エメルが回復させるのを見守った。暫く回復を続けていると。
「クッ……うぅ……」
結輝はゆっくりと意識を取り戻した。
「治ったか……!? おいユウキ、何があったんだ……」
「まだ意識を取り戻したばかりです。安静にさせてあげましょう」
そう言うと、幸志郎は結輝を背負った。
「急ぎましょう。壊斗さんの元へ」
「あぁ、カイトを追うぞッ!!」
…
シオンは、壊斗とやり合っているうちに、段々の動きが読み取れてきていた。
「おいクザキィ……こんなもんか……!?」
シオンは既に、鼻は潰れ、歯は根元から何本もへし折れ、口から血を垂れ流しているのにも関わらず、狂気的な笑みを浮かべながら戦いを楽しんでいた。さっきまでのクールなシオンからは想像もつかない姿だ。
ただ、シオン自身気付いていた。体力の限界が近い事に。それに伴い、壊斗の動きも鈍くなっていることにも。それは、双方体力の限界に近い。という事を表していた。
「クザキィ……お揃いになろうぜッ!?」
両手首を掴み、顔面を砕く勢いで壊斗に頭突きを食らわした。シオンの頭突きは壊斗の鼻を直撃し、ブシッと血が吹き出した。
続けてシオンは、指2本を壊斗の目に突き刺し、下に殴り付けた。
「どうだ、これでもう何も見えねぇだろ?」
一気に鼻と目を潰された壊斗は、平衡感覚を失い、よろけた。
「おらッ!!」
その隙に、シオンはバックエルボーを命中させた。弾き飛ばされた壊斗は、膝を震わせてその場に立ち尽くした。
「お前が二人目だ……俺をここまで追い詰めたのは……十分やったよ。もう倒れちまいな」
そう相手に敬意を表したシオンも、フラフラとよろける。踏ん張っていなければ、今にでも倒れてしまいそうだった。
「もう……終わりにしようぜ……」
シオンはゆっくりと歩く。男と男の戦いに決着をつける為に。その時。
「───ぶっ!?」
目を閉じ、その上、血で視界を奪われているはずの壊斗の一撃が、シオンの顔を的確に捉えた。
壊斗の思いがけない攻撃に、ガクッと力が抜け、膝から崩れ落ちてしまった。
「───ア゙アア゙アアアア゙アアァァァッ゙!!!」
シオンは跪きながら両手を地面に叩きつけ、喚き散らかした。
「なんで!! 目は潰したはずだろうがァ!!! なんで見える!? 俺に当たるッ!? ……あ」
その答えに、シオンは気づいてしまった。野生的。野生の勘。ただの勘なのだ。ただの勘に、自分は負けた。その事に気づいたシオンからは生気が抜け、人形のように動かなくなった。
───助けて……兄ちゃん……
それが、シオン最後の思考だった。
壊斗は、動かなくなったシオンを蹴り飛ばした。そして、倒れたシオンに馬乗りになって、恐ろしい音を奏でながら、何度もシオンを殴り続けた。理性を無くした壊斗による、止まることの無いパウンド。シオンの顔は見る見るうちに潰れ、腫れ上がり、色が変わっていった。
しばらくすると、シオンの身体は、痙攣を始めた。口を半開きにし、いびきのような音を立て、白目を剥きながら。そこで、壊斗は意識を取り戻した。
多分次回、エマルカ抗争編完結です!




