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成り行きで異世界転生 〜チート能力、期限付き〜  作者: 乙坂創一
第二章『フロウザー家捜索』

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第七十八話「形勢逆転」

エメル達が壊斗を探している一方、当の本人は。


「───ヴぅ゙ッ!?」

壊斗は地面を蹴って、まるで瞬間移動したかのようにシオンの前に現れ、フルスイングで殴り付けた。

シオンは、反動で地面に強く叩きつけられた。衝撃でコンクリートが砕け散る。壊斗の虚ろな目は、一切の光を失ったままシオンを見下ろした。

続け様の壊斗の追撃を、何とか転がって躱した。

───おかしい……思考が全く見えなかった? 何故?

シオンは、突然の事に若干パニックに陥った。相対しているのは確かに壊斗の筈だが、何故だか思考を見ることが出来なかったからだ。


「───ンン゙ッ!?」

だが、壊斗はそんなことお構い無しに、シオンの口が半開きになっている事に気付き、一直線にシオンの口に左手を突っ込んだ。

───こいつ、口ん中に手ェ入れてきやがった……

しかしシオンは、これを不都合だとは思わなかった。

───馬鹿が。このまま噛み千切ってやる

血走った目で壊斗を睨み、手を噛みちぎろうとした手前、凄まじい速度で口から手を引き抜き、シオンの目論見は(たが)え、強く歯を噛み締めただけで終わった。

すかさずシオンの顎に下から膝蹴りをぶち込み、反動でシオンは仰け反った。

「ヴぅ゙ッ!?」

───こいつ、今度はどこに指を……!? ダメだ……投げ飛ばされる……!

壊斗は、シオンの肋に指をめり込ませて掴み、 片手で後方へ投げ飛ばした。


シオンが浮かされている間、壊斗は休むことなくシオンの方へ向かってきている。シオンは、回転しながら思い切り地面に着地し、散らばった瓦礫を全て壊斗に投げ付けた。


壊斗は、それを叩き壊しながらシオンの方へ歩みを続けた。

───何かを企んでるのか……?

再び壊斗の思考を見てみたが、また何も見えなかった。

シオンは警戒を続けた。すると壊斗は、地面に思い切り手を突っ込んだかと思いきや、メリメリと音を立てながら引っペがし、石つぶてのようにシオンへぶつけた。

「───ッ!!」

シオンは前蹴りでそれを砕いた。散らばる破片の中からヌルッと現れた壊斗に鼻っ柱を蹴り折られた。

「ウグッ!!!」

シオンは、一瞬白目を剥いたが、すぐに元に戻し、反撃を試みた。

壊斗は、敢えて片足立ちをし、足払いをモロに受けた。

───何故その足だけで立てる!? 右足(そっち)は確実に潰したはずだ。 軸足に出来るはずがない。

壊斗は、足払いによりバランスを崩した事を利用し、右手で着地し、左足でシオンを蹴り飛ばした。

壊斗は地面を蹴り付け、真横に吹き飛んだシオンにすぐさま追い付き、首を掴んで振り回した。

───こいつ、動きが変則的過ぎる。まるで野生動物と戦ってる気分だ……だが……

シオンは、振り回されている最中、自分の身体が下に向いた時、思い切り地面に両手を突き刺した。

───思考は見えずとも、まだお前の力は使える

地面に両手を埋めることで自身を固定し、壊斗の振り回しを阻止した。

シオンは、逆立ちのような体勢から、グイッと肘を曲げて壊斗の体勢を崩させた。

よろけた壊斗の腹を蹴り上げ、引き剥がした。

「はぁ……はぁ……」

息を切らすシオンとは裏腹に、壊斗はまるで獣のように静かに呼吸をした。


シオンは、壊斗に対する軽い恐怖感のようなものを感じ始めていた。しかし、それとは別に、気持ちの昂りも感じていた。

シオンは、トリッキーな動きで向かってくる壊斗から攻撃を食らう事を承知の上で、思い切り抱きついた。

「お前にこれが対処出来るか……?」

ジャーマン・スープレックス。相手の腹部に組み付き、背後に叩きつける技。シオンはそれに、確実に壊斗の首をへし折る為の角度調整を施した。

壊斗は、両腕ごとホールドされている為、受け身が取れない。絶体絶命だ。

しかし、見様見真似で繰り出されたシオンの技は、詰めが甘く、あと一歩のところで振りほどかれてしまった。もし、シオンがプロレス使いであったならば、こうはならなかっただろう。


壊斗は、ブリッジのような体勢になりながら、シオンと同じように地面に両手を突き刺し、スープレックスを回避した。

「振りほどかれたか。命拾いしたな」

壊斗は、突き刺さった手を引き抜き、後転をしながらシオンと距離をとった。


「なぁ、一旦休憩しねぇか? 休憩がてらに、マドカの話でもしてやるよ」

シオンの提案に、壊斗は全くの反応を示さなかった。それどころか、攻撃の隙を今か今かと伺っている。

「聞く耳無ぇってか……」

双方、睨み合いが続く中、シオンはダメ元で再び壊斗の思考を覗き見た。そして、暫くの沈黙の後。

───こいつ……!

「二重人格かよッ!」

シオンは、歯をグッと噛み締めた。束の間の休息。再び壊斗が攻めを始めた。

───だが、それなら辻褄が合う……俺が思考を見ていたのは、こいつであってこいつじゃなかったのか……!


シオンの能力は、《一方的結合(ユニラテラル・リンケージ)》。相手の能力、そして思考を一方的に自身へ結び付け、扱うことが出来る。言わば、自身というハードウェアに、相手というメモリーカードを挿した状態と言える。

力の1つ、能力結合(アビリティ・リンケージ)。その名の通り、相手の能力を自身へリンクさせ、自由に使えるようになる力。対象が非能力者である場合、この性質は消える。

そして、思考結合(ソート・リンケージ)。相手の現在の思考を自身へリンクさせた上で、自分の思考を併せ持つ事が出来る。端的に言えば、相手の思考を覗き見る力と言って過言ではない。


……この(かん)も、二人の壮絶な攻防が繰り広げられていた。ビルを何棟も突き破り、地面は大破し、旧オフィス街が崩壊してゆく。戦いの規模が今までと比べ物にならなくない。


シオンは、絶え間なく起こり続ける攻防の中、頭を巡らせていた。


シオンの能力の発動条件。それは、一分間相手と目を合わせ続ける事にあった。

今シオンが相対しているのは、壊斗であって壊斗でない。シオンが新たに思考結合をするには、能力を一旦解除し、再び発動条件をクリアしなければならなかった。

だが、一度(ひとたび)能力を解除してしまえば、その隙に殺されてしまう事をシオンは理解していた。自分自身で壊斗の能力を体感したからだ。シオンには、そこまでハイリスクな賭けをする事は出来なかった。


考えに考え抜いた結果、シオンは考える事をやめた。

「……もういい。こんなの、俺の性にあわねぇ」

一心不乱に攻撃を振る壊斗の隙を突き、思い切り蹴り飛ばす。

「悪かった。もう思考結合には頼らねぇ(ダサい真似はしねぇ)。小細工無しで殴り合おう」

シオンは、片手で自分の服を引き裂いた。ここからが本当の戦いだ。と言わんばかりに。

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