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成り行きで異世界転生 〜チート能力、期限付き〜  作者: 乙坂創一
第二章『フロウザー家捜索』

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第七十六話「血祭り」

あけましておめでとうございます。

この話は2023年の12頭から試行錯誤を重ねて、やっと投稿出来るレベルになりました。

「……ほら立てよ。 何(うずくま)ってんだ?」

シオンは、まるでサッカーボールを蹴るかのように壊斗の腹を蹴飛ばし、再び外に出した。

「立てねぇなら、俺が立たせてやるよ」

シオンは、蹲り立てずにいる壊斗の髪を掴み、アンダースローの球を投げるが如く、乱雑にビル目掛けて投げ飛ばした。少し前までただの大学生で、この世界に来てからも圧倒的なチート能力だけで敵を倒してきた壊斗には、技術の技の字も無く、ただただシオンのサンドバッグになるしか術はなかった。

「───グッ!?」

「まだまだァ!!」

追い打ちをかけるよう、壊斗の腹に飛び蹴りを食らわせた。壊斗は、内蔵がいくつか潰れた感覚を味わった。

二度の強い衝撃により、ビルは崩壊する。シオンは、崩れゆくビルの下で、動けずにいる壊斗を救い出した。


「おい……気絶してんのか?」

シオンは、目と口を開けたまま倒れている壊斗の頬を叩き、起こそうと試みた。しかし、壊斗は一向に起きなかった。

壊斗の戦意は、とっくのとうに喪失していた。意識はあるものの、壊斗は徐々に近付いてくる死を受け入れつつあった。


「やる気が出ねぇってなら、マドカとやらの話でもしてやろうか?」

薄ら笑いを浮かべ、男はそう言ってのける。その言葉で壊斗の目に光が戻る。

「俺に一発でも食らわせてみろ。それが出来れば話してやるさ」


壊斗は、その言葉で活力が湧き、起き上がりざまに不意打ちの反撃を繰り出した。

「そう来ると思ったぜ。単細胞」

シオンは、顔面へ繰り出された壊斗の攻撃を完璧にさばき、壊斗の脹脛を蹴りつけた。

───足がもげるッ!!!

あまりの激痛に、顔を顰める。シオンはそんな事お構い無しに、冷たい言葉を吐く。

「ガキの喧嘩じゃねぇんだ。真面目にやれよ」

壊斗は、一心不乱に拳を振り回した。しかし、シオンはそれを全て躱し、壊斗の顔面にバックエルボー食らわした。

「あぁ……もしや、それがお前の"真面目"だったのか。……口ほどにもないな」

肘を壊斗の鼻にグリグリと押し付け、シオンは真顔で平謝りをする。

「や……めろォ!!」

壊斗は、気合いでシオンの首の後ろに両手を回し、首相撲の体勢に持ち込んだ。壊斗は反射的にシオンの顔面目掛け、膝蹴りを放つ。シオンは、それを自身の膝で阻止し、ニヤリと笑った。

「何で防がれたか、分かるか?」

壊斗は、これ以上の追撃を食らわぬよう、後ろにステップを踏み、一旦シオンと距離を取った。

「分かんねぇよな。分かるわけが無いよな? お前如きに」

壊斗は、片鼻を抑え、フンッと血を吹き出し、気持ちをリセットした。鼻にじんわりとした痛みが走る。


「フッ……さっきまで気ィ失ってた割に、随分と回復したみたいだな?」

「……へへ。いいや? 本当はこのまま倒れちまいてぇよ。……でもな、そうはいかないんだよ」

「……マドカとやらの為か?」

「それだけじゃねぇよ」

壊斗の中には、何人もの仲間の姿が浮かんでいた。これ以上仲間を傷つけさせまいと、身を呈して守ると、壊斗は決意していた。


「それに、お前の攻撃なんかより、もっと強烈な痛みを俺は知っている。それに比べりゃ、お前の攻撃なんざ、蚊が止まった程度だね」

壊斗は、この世界に転生する前。死ぬ前に轢かれた列車の痛みを思い出していた。あれと比べたら、シオンの攻撃は蚊が止まった程度。壊斗はそう自分に言い聞かせた。

「……俺も、簡単にお前を殺さないよう、丁重に扱うのにも飽きてきた。デカい口叩いたからには、その威勢のままでいてくれよ? 死ぬまでな」


壊斗は、シオンが喋っている途中に攻撃を繰り出していた。だが、その全てを躱し、いなされ、受け止められた。壊斗の攻撃を尽く防ぐシオンに、軽く絶望すら感じていた。しかし、壊斗は手をとめなかった。攻撃の最中(さなか)、チャンスを伺っていた。

───ここだッ!!

壊斗は、全身全霊をかけて、的確に足を伸ばし、金的を繰り出す。

「……下劣な奴め」

だが、それも失敗に終わり、壊斗はバックスピンキックで蹴り飛ばされた。

「そろそろ、こっちから仕掛けるぞ?」


シオンはそう言って地面を蹴り、一気に間合いを詰めようとした瞬間、壊斗に攻撃を当てる直前で踏みとどまった。

壊斗が右足を思い切り踏み込み、地面を壊したからだ。

───これは……ッ!?

地面は砕け、無数に散らばる。シオンは、壊斗が踏み込んだ衝撃により散らばった破片から身を守るように目を瞑り、ガードを固めた。

壊斗は、今だと言わんばかりに顔面へストレートを放つ。

「……短絡的な考えだな」

シオンは、目を瞑っているのにもかかわらず、壊斗の渾身の一撃を受け止めた。まるで、そのタイミングでその場所に攻撃が来る事を分かっていたかのように。


「少しばかり頭を使ったようだが、所詮馬鹿が導き出した答えだ。それが最善策かも分からねぇのに、一か八かで試してきやがる」

シオンは、もう一度同じ足の脹脛を蹴り抜き、壊斗が体勢を崩したところで髪をガシッと掴んだ。

「窓が汚れてるな? 俺が代わりに拭いてやるか」

シオンは、壊斗の顔面をビルの窓に叩き付け、外壁を削りながら壊斗を横にスライドさせて歩いた。壊斗を雑巾に見立て、窓拭きをするように。

「右足、もう力入んねぇだろ? 感覚で分かる」

飽きたのか、シオンは手を離し、腹を思い切り蹴りつけた。壊斗の体はビルを突き破って飛んでゆく。


「……デジャブだ。つまらねぇ」

シオンは、ため息をついて壊斗の元へ歩いた。横たわる壊斗の顎を掴み、言葉を吐く。

「せっかく面白い能力(ちから)が使えるんだ。もっと派手にいかないとな」

不敵な笑みで壊斗の顔を覗いた。

「この力がどれ程のものなのか……ちょっと付き合ってくれよ」

その瞬間、壊斗の首をガッシリと掴み、思い切り地面を蹴って跳躍した。その高さは、旧オフィス街のどのビルをも凌駕した。

「ここがマックスか」

シオンはそう呟くと、空中で体勢を変えた。

「じゃあ、後は(くだ)るだけだな」

壊斗を下にして身代わりにし、急降下した。壊斗の身体でビルを突き破り、地上に叩きつけられた。


「……おかしい。あまり手応えを感じなかった。この能力(ちから)、一体……」

シオンは、壊斗の能力に疑問に感じていた。空高くから地面に叩きつけるより、自分の手で攻撃をした方が手応えを感じたからだ。

「……おい、起きろ。起きないと、マドカの話はお預けだぞ?」

シオンは、更に壊斗を煽った。

───まぁ、そんな話最初から無いけどな。



時は数分前に戻る。壊斗とシオンが出会った時の事だ。

「……お前らが、円香たちを殺したのか」

───こいつ、銃を持ってやがる。銃撃部隊とやらの奴だな?

「おい待てよ……誰だそいつァ。聞いた事もねぇぞ」

「黒髪のポニーテール……髪を後ろで結んだ小さい女の子だ」

ここで、シオンは思った。マドカとやらを知っている体で話す方が、能力の発動条件の為の時間を稼げそうだ。と。

「ん……あぁ、アイツね。マドカっつうのか……初耳だな」

───話が良い方向に進んでいる。やっぱり奪っといて正解だったな

シオンは、心の中でそう思っていた。



更に時を遡ること、数十分前。シオンが壊斗と出会う前。

「……ひでぇな」

シオンは、銃撃部隊の屍を目の当たりにし、そう声を漏らす。

「こいつら……銃で撃たれたのか? それに、的確に頭を撃ち抜かれている。相手は相当の手練だな」

シオンは、手当り次第に死体のポケットをまさぐった。

銃を探していたが、ほとんどはポケットごと撃たれて再利用できない状態に破壊されていた。だが、1人の拳銃だけは、持ち手部分が少し壊れていただけで、使うすることが出来た。

「こんなんでクザキが殺せるとは思わねぇが、クザキのお仲間が居たら儲けだな」



「……そうだ。こいつを殺した後は、仲間も全員殺そう。皆仲良くあの世に送ってやれば、誰も寂しくねぇだろ」

───これだけ言やぁ、また立ち上がってくれるか?

シオンは、壊れた玩具を直してもらっている最中、今か今かと待ちわびる子供のように、とてもワクワクしていた。


その時、壊斗には芹沢との記憶が蘇っていた。



「……もしもし。壊斗です」

「おお、久しぶりだな」

「お久しぶりです」

「……何か、あったのか?」

芹沢は、壊斗の声色から、何か悪い事があったのではと察した。

「……円香が死にました。乱子と、悟も」

暫く沈黙が続いた後、芹沢が口を開く。

「……殺されたのか。奴らに」

芹沢は、少し声を震わせていた。

「連絡が遅れてすみません。僕自身も、暫く正気を失ってました」

「いや、大丈夫だ。辛い時に、連絡をくれただけでもありがたいさ」

「……ですが、奴らが僕個人を呼び出してきました。罠なのは分かっていますが、行くつもりです」

「殺すのか?」

「そのつもりです」

芹沢は、ふぅ。と息を吐く。

「……止めはしないが、一つアドバイスをしてやる。『復讐は何も生まない』仮に生まれるものがあるとしても、それは負の感情だけだ」

「……それ、止めてんのと一緒っすよ」

「だからこれ以上は何も言わない。……仲間には話したのか?」

「一人には言いました。色々話しまして……その人だけ連れていく予定です」

「そうか。……その口ぶりからして、新しく出来た仲間か?」

「仲間……なんですかね。よく分かんないです。でも、昨日、二人きりで話す機会がありまして、その人の能力を見せてもらいました。その時思ったんです。この人なら大丈夫って」

これ以上仲間に傷ついて欲しくない壊斗にとっては、強さが全てだった。この人なら絶対に負けないと思う程の強さが。

「そうか……分かった。こっちも何か情報が掴め次第、追って連絡する」

「分かりました。僕の方も、奴らを何人か生け捕りにして、情報を吐かせようと思ってます」

「頼んだ。……余裕が出来たら、顔見せに来いよ」

「はい。失礼します」



───あぁ。結局、復讐は疎か、情報を掴む事さえも出来ないで、玩具みてぇに弄ばれてる。……本当の馬鹿だ。俺は。


様々な感情が渦巻く中、必死に溢れ出す感情をコントロールしようと努力した。

───あぁ……クソ……ダメだ……落ち着け……出て……くるな……ッ!!

しかし、その甲斐も虚しく、感情は爆発してしまった。怒り、憎しみ、悲しみに絶望。嫌悪、不安、喪失感。あらゆる負の感情がグチャグチャに入り交じり、爆ぜる。それは既に、壊斗自自身にも抑え込むことは出来なかった。


「……もう飽きたな。こいつ。……そうだ。この力なら、ここら辺一帯を更地にだって出来そうだ。じゃ、さっさとこいつの息の根を───」

その時、壊斗に微細な変化が起きたのを感じ取ったシオンは、少し距離を取った。

───何だ……? 雰囲気が変わった……?

壊斗は虚ろな目付きのまま、ゆっくりと立ち上がった。まるで生きる屍のように。

細かいかもですが、壊斗の僕のイントネーションは、ぼ→く→では無く、ぼ↓く↑です。

分かりやすくいうと、目上の人と喋る時の僕です。分かりにくかったらすみません笑

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