第七十四話「交戦」
時は少し遡る。
壊斗は、エディの背後に居る奴に睨みを利かせていた。
「……化けモンが」
その男は、恐るべき跳躍力で直ぐに退却した。
「……くそ……円香の事、未だに聞けずじまいだ」
壊斗は、ため息をついてそんな事をボヤきながらパーカーを脱いで腰に巻き直した。
その時、背中に痛みが走る。
後ろを振り向くと、バズニグロヘアーの男が拳銃を構えて立ち尽くしていた。
「우와. 총이안통한다니정말?」
後ろから壊斗を撃った男は、驚きながらも、ニヤついてみせた。
「……お前らが、円香たちを殺したのか」
壊斗は、恐ろしい剣幕で男を睨みつける。
「おい待てよ……誰だそいつァ。聞いた事もねぇぞ」
「黒髪のポニーテール……髪を後ろで結んだ小さい女の子だ」
「ん……あぁ、アイツね。マドカっつうのか……初耳だな」
「質問に答えろ。じゃねぇと、怒りを堪えきれねぇ」
壊斗は、手の平に爪が食い込み、血が滲むほど強く拳を握り締めた。
「怖いな。自制心のない人間はこれだから……」
「そうさせたのはお前らだろ……答える気がないと受け取るが、それで良いか?」
「勝手にしろよ。俺だって、端からこんなおもちゃで殺れるなんて思ってねぇわ。盛ってんじゃねぇよ雄犬が───」
壊斗は、地面を蹴って男の元へ移動し、顔面を殴り付けた。
かと思いきや、地面が深く抉れるほどの助走を付けた一撃を、男は片手で軽々と受け流した。
「ベタな手法で時間を稼がせてもらったが、案外上手くいくもんなんだな」
壊斗は驚いた。この世界に来てから、自分の攻撃をまともに受け止められた事が無かったからだ。
「俺は박시온(パク・シオン)。お前が最期に見る事になる男だ」
シオンの膝蹴りが、腹に命中した。
「───お゙えッ!!」
「この力……中々楽しめそうだ」
【上位四讃會 無所属 『박시온』】
…
「何だこの音……皆が心配だ」
どこからか聞こえてくる轟音を聞き、結輝は心底不安に陥った。そしてまた、どこからかエンジン音が聞こえてくる。
「……あれは、バイク?」
黒塗りの単車に乗った何者かが、前からやってくる。
「……これ以上厄介事に巻き込まれんのはごめんだ……ビルに隠れてやり過ごそう」
結輝は、近くにあった廃ビルの中に隠れ、バイクが通り過ぎるのを待った。
「エンジン音がしなくなった……?」
2階に上がっていた結輝は、窓から男の方を見てみると、そこには、バイクだけが置いてあった。
「───こいつッ! 中に入ってきやがったのか!?」
結輝は咄嗟に窓を蹴破り、飛び降りた。
───抗力を足に集中させて、落下ダメージを軽減するッ!!
「───ちょっと痛ぇけど……足は無事だな」
痺れる足を摩って、結輝はバイクの方へ一直線に向かう。
「バイク、借りてくぞ」
そう言ってハンドルに手を掛けようとした瞬間、バイクのボディがベッコリと凹み、爆発した。
「くそッ! 罠だったかッ!?」
全身に抗力を纏ってダメージを軽減させた結輝の元へ、薄い桃色の髪色をした、センター分けに波巻きパーマの男が、ゆっくりと歩いてくる。
「……まぁいいさ。この能力、男相手だと存分に試せそうだ。躊躇なく足が使える」
結輝は、吹っ切れたようにそう言って笑った。




