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成り行きで異世界転生 〜チート能力、期限付き〜  作者: 乙坂創一
第二章『フロウザー家捜索』

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第六十八話「抗争開始」

タクシーで目的地であるホテルに向かう道中、昌幸が口を開いた。


「……エメルは、どう思う?」

「……え」

エメルは、ほとんど口を聞かなかった昌幸が、自ら話しかけできたことに驚いた。

「皆の事」

昌幸がそう質問した後、少しの間沈黙が生まれた。

「私は……私は、皆の事が心配だよ……復讐なんて……しないでほしい……」

「……何でそれを言わなかったの?」

「そんなこと……言えないよ! 本当は……私は……私はッ! 簡単に人を殺すとか、言わないでって、言いたかった……復讐なんかしても、マドカちゃんはかえってこないって、言いたかったッ! でも、言える訳ない……言えっこないよ……」

「でも、もしそれが言えてたら、少しは変わってたかも知れない。エメルの言葉が、壊斗さんの心に響いたかも知れないのに」

「響かないよ、きっと。……分かったって。分かったって……言ったのに……結局カイトは行っちゃった。トパーズたちも、最初からカイトがそうする前提で、計画を進めて、私たちを置いてけぼりにして……」

「……だから空気をよんで、留守番を任されたの?」

エメルは、その言葉でハッとした。

「本当は、壊斗さん達に着いて行きたかったんでしょ?」

「何で……それを……」

「……分かるよ。どれだけ長い時間、一緒に居たと思ってるの?」

昌幸は、そう言って苦笑した。


「いいよ。行ってきても」

「え……」

「僕だって、皆に言いたいことはたくさんあった。円香はさ……凄い、優しいんだ……きっと、円香自身は今も復讐なんて望んでないと思う。自分の為に皆が傷つく事は望まない。そういう、優しい子だった。僕は皆に、その事を伝えるべきだった。けど、その一言が言えなかった。復讐をする雰囲気に、同調してしまったから。だから、僕もエメルの事を責められない。そんな資格無いんだ」

エメルは黙ったまま、昌幸の言葉を聞いていた。

「僕だって、出来ることなら円香を痛めつけた奴を、この手で同じ目に合わせてやりたい。けど、ちゃんと弁えてる。自分が1番足でまといだってことを」

「そんなこと……」


「……着きました」

極力話を聞かないようにしてくれた運転手は、二人に到着を伝えた。


「僕の代わりに、行ってきて」

「……本当にいいの? マサユキは……その……」

「うん、大丈夫。これ以上円香を危ない目に合わせられないし、かと言ってひとりぼっちにもさせられないから」

「でも……」

「……安心して。死のうだなんて考えてないから。そんな事したら、円香に怒られちゃうよ」

昌幸は、親指で鼻を啜って、滲む涙を退けるよう瞬きをして言葉を続けた。

「……皆のこと、宜しくね」

「……任せて」

そう言って、タクシーから降りた昌幸は、円香を背負って、エメルを見送った。

「……行こっか。円香」



結輝は、一旦ビル街の近くの安全な場所に車を停車させ、考え事をしていた。非力な自分が、足でまといにならないよう、戦いに参戦する方法を。

少し考えると、ある結論に辿り着いた。

「そうだ。武器。武器を使えばいい。何でこんな事思いつかなかったんだ」

そこから、車内で武器になりそうなものを手当り次第に模索した。すると。


「これにしよう」

テントの骨組みを発見した。結輝は骨組みを2本両手に持ち、車を降りた。

「───何持ってるの? カミサキくん」

結輝は、後方からの声にギョッとした顔でゆっくりと後ろを振り返る。

「お前……誰だ……?」

そこには、綺麗な黄緑色の瞳に、白髪のボブヘアーの女が立っていた。

「私? 私の事なんて、気にしなくて良いよ。それより、自分の身を心配した方が良いんじゃないかな?」



「遊びに来たのか? その格好はよォ」

「あぁ、そうさ。本命探しのついでに、小遣いでも稼ごうと思ってね」

エディの身なりは、ピンク色のレンズをしたサングラス、額に巻いている黄緑色のヘアバンドは、明るめの茶髪によく似合っていた。

「随分浮かれてるみてぇだが……自分が死なねぇとでも?」

「うっせぇよ。小遣い風情がべちゃくちゃ喋んな」

エディは、隠し持っていた拳銃を数発、発砲した。トパーズは、それを全て躱し、エディに接近した。

「《断ち切る盾(セヴァ シールド)》」

トパーズは、〈黄盾(イエローシールド)〉を召喚し、螺旋状の攻撃を放ち、エディを襲った。


「うわ……服がズタズタ……」

射程範囲外に逃れたエディは、服がズタズタになるだげ済んだ。

「ま、いいや。この服、気に入ってなかったし」

エディはそう言いながらズタズタに切り裂かれた服を剥ぎ捨てた。エディの胸には、大きい黄緑色の蝶のタトゥーが刻まれていた。

───やっぱり……この技はダメだ。《断ち切る盾(セヴァ シールド)》を使ってる間、黄盾が全く使えなくなるのもネックだしな……


「何考え事してんだ?」

エディは、飛び上がりながら前進し、すかさず銃弾を発砲した。

発射された弾を全て避ける事は出来たが、一発だけ頬を掠った。

「はは……エメラルドも居ねぇから、本当に死ぬかも知んねぇのに……俄然燃えてきた」

トパーズはすぐに黄盾をしまい、構えを取った。

「───誰だって? キメェからさっさと死ねよ……!」

トパーズは、銃弾か発射されるよりも早く、エディに向かって勢いよく突進し、エディの腹に膝を叩き込んだ。

「ぐあッ!?」

トパーズは、間髪入れず、拳銃を持っている方の腕を叩き折る。エディは、あまりの速さに対応が出来なかった。

「あぁッ!! 痛ぇ!!」

「痛ぇか? ……安心しろ。すぐに何も感じなくなる」

トパーズは、エディの折れた手を掴み、エディのこめかみに拳銃を突き付けさせた。

「や、辞め───」

トパーズは躊躇なく引き金を引いた。


エディの力が抜けたように地面に倒れ、こめかみから血が流れた。


「……しくった。うっかり殺しちまったぜ。マドカたちを殺した奴のこと、聞かなきゃいけねぇのに」


トパーズはそう呟きながら再び壊斗を探しに向かった。

しかし、トパーズは嫌な予感がした。しっかりと殺した感覚がしなかったからだ。

トパーズが後ろを振り向くと、既にエディは仲間に救出されていた。


「───まてごらッ!!!」

今から追いかけようにも、エディを抱えている奴は恐ろしい跳躍力でビルの屋上まで飛んで行ってしまった。


「───ひとまず今回の目的は偵察だ! お前はまた後で殺しに来てやるッ!! あぁ痛ぇなクソッ!!!」

エディはそう叫ぶと、屋上へ姿を眩ませた。


「……だァくそッ!! 逃げられたッ!!!」

むかっ腹をたてながら、タイミングよく掛かってきたリアムの電話に出た。

『敵の数を大分減らした。後はビル街の中央付近に数人───』

「どーなってんだリアムッ!! 明らかに能力者がいた! しかも2人ッ!!!」

『……遠くからだと、一般人との見分けもつきづらい。それに、俺だって、自分の所属部隊以外の奴らについてはあまり把握していないんだ』

「ソイツはジュウを持っていやがった!! お前が知らねぇはずがねぇだろッ!!」

『そいつの特徴は?』

「ピンクのサングラスに、額に黄緑色の何かを巻いてやがった」

『……おかしい。奴なら既に殺した筈だぞ』



「まさか、一日で二回も死んだフリするハメになるなんてな」

「あ〜、さっきの狙撃の? 直前で俺が教えてなきゃ危なかったな……って」

男は、エディのこめかみを指して質問を投げかけた。

「おい、腕……大丈夫か? それに、こめかみから血が出てるぞ?……能力使わなかったのか?」

「ん? あぁ、そうだよ。腕は……油断しちまってさ。こめかみは死んだフリする為に、頭蓋骨の一歩手前で弾丸を受け止めたんだ。アイツ馬鹿そうだから、騙せると思ったんだけど、感が鋭かったな」

「そうか……まだやれるか?」

「ったりめぇだろ?」

「良かった。……このままダイキと合流しよう。三人で畳み掛ければ、クザキの野郎もイチコロだ」

「だな」

そう笑い合い、二人は仲間との合流を図った。

タクシーの中で踏み込んだ話をするのはあんまり良くないですね

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