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成り行きで異世界転生 〜チート能力、期限付き〜  作者: 乙坂創一
エマルカ編

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番外編「かいとくんの入学式」

2周年記念で執筆しました。

『わり、かいと』

『熱やばい』


壊斗が目覚めると、友也からそうメッセージが届いていた。

「まじ……か……」

思わずそう言葉を零した。


…


4月7日、高校の入学式だ。多くの生徒が期待に胸を馳せている中、壊斗はただ絶望を感じていた。


「休も……っかな……」

そう呟いた時、友也から電話が掛かってきた。

『もしもしぃ……』

スピーカーから、死にかけの声が流れた。

「友也……大丈夫か……?」

『全然へっちゃら……熱9度あるけど』

「めちゃくちゃやばいじゃん……」

友也は、それより。と話を変えた。

『壊斗、今日学校行くよな?』

その質問に、壊斗はドキっとした。

『……やっぱ、休もうとしてたろ?』

「……うん」

『なぁ壊斗。こんな事言いたくないけど、今日だけ1人で頑張ってみないか?』

「でも……」

『大丈夫。今日は金曜だろ? 土日挟むから、そこで完璧に治して月曜は絶対行くからさ。今日だけ!』

友也は、そう説き伏せた。

『一生に一度の晴れ舞台、壊斗ママに見せてやれよ』

「わかっ……たよ」

壊斗は、友也の言葉を受け、渋々了承した。

『ただ、無理はするなよ。辛くなったら、早退って手もある』

友也は、切り際にそう助言し、通話を切った。


…


電車に揺られ、40分ほどで学校の最寄り駅に着いた。駅から高校まで徒歩15分程度だった。その道を、ポッケに手を入れ、縮こまりながら歩いた。


…


午前8時半。名前、クラス、出席番号が掲示板に張り出された。

壊斗は、掲示板の前の人集りを避け、木下の日陰に向かった。


暫く経った後、掲示板の前から人が減ったのを見計らい、掲示板を確認しに行った。

「工崎……あった。3組の11番か……」


一通り目を通し、下駄箱で持参した上履きに履き替え、張り出されたクラスへと向かった。


自分でも分かるほどの心臓の鼓動。それを抑え、教室のドアを開けた。

クラスメイトの視線が、一気に壊斗に向けられた。しかし、それは一瞬だけだった。クラスメイト達はすぐに各々のしていた事に戻った。大半がスマホを弄っている中、机に突っ伏して寝る者、緊張かピシッと背筋を伸ばしたまま前を向いている者等に別れていた。極小数、会話をしている者たちも居た。話の盛り上がり的に、同じ中学校だったのだろう。

壊斗は黙々と自分の席に着き、ドキドキしながら携帯を取り出した。なんせ、学校で携帯を弄るのは初めてだったからだ。


数分後、見知らぬ女が教室のドアを開けた。それが先生である事は一目瞭然だったので、皆スマホをしまった。

「今年の1年生は偉いね〜 私が来たらすぐスマホしまった」

女教師は、感心した。

「えーと、皆まだ不安な事とか、色々あると思うけど、まずは入学おめでとう。先に軽く自己紹介から……」

そう言いながら、女教師は黒板に文字を書いた。

「絹川道子(きぬがわみちこ)。1年間君たちの担任をする事になりました。よろしく!」

先生はそう元気よく自己紹介をすると、トートバッグから資料を取り出した。

「入学式のしおりと、私が作ったパンフレットを配ります。後ろに回してね」


「パンフレットはクラスメイトの名前、学校のフロアガイド的なものを載せているので、後で目を通してみてください。9時から入学式が始まるので、館履きを持って体育館に移動しましょう。出席番号順に廊下に並んでください」

そうして、先生の一方的な話が終わり、壊斗たちは廊下に出る事になった。


1列に並び、体育館へ向かった。先輩立ち達と保護者、その他役員の人達や先生達の拍手で入場した。壊斗は死んでしまいそうな思いを堪え、先程廊下で指示を受けたように歩き、着席した。


入学式は、教頭の挨拶からスタートされた。その次に、生徒一人一人の呼称があったが、それも難なくこなした。


そこからは、式辞やらなんやらが小一時間程続いた。足が痺れ、尻が麻痺し、地獄のような時間だった。


その後、教室へと戻り、先生の話を聞いて解散となった。その間、クラスメイトとの会話も無く、壊斗は無事に入学式を終えられてホッと一安心した。


帰りは母親と待ち合わせしてレストランに入った。

「壊斗! 制服キマってたね! ほら!」

母は、撮った写真を見せた。

「ほんとだ」

壊斗はメニューを見ながらそう答えた。

「見てよほら」

母はメニューの上からスマホの画面を見せつけた。

「いい感じ」

壊斗はすぐにスマホを退けて、再びメニューを見た。


「……壊斗、どう? 学校頑張れそう……?」

母は恐る恐るそう尋ねた。

「うん。……次は友也も居るだろうし、頑張れそう」

「良かった……」

母は安堵で涙を流した。

「……今日は入学祝いだから、いっぱい食べて!」

「……大丈夫?」

「お金の事なら気にしないで、いっぱい食べよう!」

その日は、壊斗にとって良い1日となった。

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