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成り行きで異世界転生 〜チート能力、期限付き〜  作者: 乙坂創一
第二章『フロウザー家捜索』

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第七十三話「発見」

男の襲撃を決死の覚悟で阻止した二人は、荒い呼吸を整え、お互いに顔を見合せていた。

「やった……か?」

「たぶん……死んじゃったかな……?」

「まぁ、自業自得だな。相手も俺たちを殺すつもりだったんだ。死ぬ覚悟は出来てただろ……」

結輝は、そう自分に言い聞かせるように頷いた。


「てか……立てんのかよ悟。無理しない方がいいぞ」

「それはこっちのセリフだよ! 体中傷だらけじゃないか」

結輝は、ニヤッと笑い、安心した顔で地面に倒れた。

「え……結輝!? 死ぬなよッ!?」

「死なねぇよ……ちょっと疲れただけだ」



結輝は、悟に肩を借りて何とか店を出る事が出来た。


「君たち、無事だったか……!」

そこには、店主のおじいさんが立っており、二人に飛びついた。

「痛ってッ! 急に飛びついてくんなよ!」

普段は冷静な結輝も、こればかりは文句を言わざるを得なかった。


「店は滅茶苦茶になったが、君たち以外に被害者を出さずにすんだ……本当にありがとうッ!」

おじさんは、頭を深々く下げた。

「感謝より、応援呼んでくれたら嬉しかったっすけどね」

結輝は、嫌味のひとつでも言いたくなったのだろう。

「すまなかった……ワシも応戦しようと思ったが、割り込む隙が無くて……かえって邪魔になってしまうかもしれないと……」

「い、いえ……お気持ちだけで良いですよ。それより、ここの近くに少し休める場所はありませんか?」

悟は、結輝をチラ見しながらおじいさんに尋ねた。

「それなら、今日は(うち)に泊まっていってくれ。せめてもの恩返しがしたい」

「いや、悪いですよ……」

「悪い事などあるものか! じゃなければ、ワシの気が済まんッ!」

悟は断ろうとしたが、おじさんは意地でも恩を返したいようだ。

「こう言ってくれてんだ。少し厄介になろうぜ」

もう限界が近い結輝は、今すぐ休める場所を欲していた。

結輝が言うなら。と、悟も了承した。



二人は、当分の間、客室を貸そうとしてくれたおじいさんに、明日には出発する。と言い切った。最初は反対していたおじいさんも、事情を聞くと、渋々了承してくれた。


「痛って。……流石に染みるな」

結輝は、体に包帯を巻きながらそう呟いた。


「今になると、エメルの存在の有り難さを改めて実感するね。って───」

悟は、結輝の体をまじまじと見た。

「それよりさ。前から思ってたけど、結輝……良い体しすぎ」

肩から脇腹にかけて包帯を巻く結輝に、悟は嫉妬の目を向けた。

「そうか? まぁ、鍛えてるからな」

「俺なんて、見てよ。ただの骨だよこんなの……」

悟は負けじと力こぶを作ってみたが、細い腕が際立っただけであった。


「んな事より、さっきのは何だったんだ? 突然起き上がって、何かに覚醒したみてぇに……」

結輝は、上手く言葉に言い表せられなかった。

「う〜ん。俺もよく分からないんだけど、突然意識を失ってから、目が覚めたかと思ったら、暗闇の中でさ。そこで見えた微かな光に手を伸ばしたらさ、一瞬で記憶がブワッで舞い込んできたんだ。まるで失ってた記憶を取り戻したみたいに……」

結輝は、悟の現実離れした言葉に引き込まれていた。

「結輝の言った通り、能力が覚醒したんだと思うけど」

「……その覚醒した能力って、どんな力だ?」


悟は結輝の言葉を噛みしめ、口を開いた。

「どうやら、俺の新しい能力(ちから)は、自分の知ってるものに限り、触れないでも、念じただけで引き寄せたり、逆に俺自身が移動したりできるようになったのと、前と違って、その速度を変えられるようになったんだ」

悟は、「試しに……」とベッドの枕元に置いてある包帯の本体を勢いよく手に引き寄せた。

「痛ったッ! ……ほらね」

「すげぇ……見ただけで引き寄せたのか」


「次に……そこにある本を、この部屋のどこかに隠してよ。なるべく静かにお願い」

悟は引き寄せた包帯を目にグルグル巻いて、枕に顔を伏せたまま「いいよ」と声を掛けた。


「……隠したぞ」

数十秒後、結輝は本を隠し終え、悟に声を掛けると、悟は包帯を取らずに、静かに歩き出した。


「うわ、凄……」

悟は、結輝の隠した本を探し当て、手に取ったのだ。結輝は語彙力を失う程、驚いた。

「本当は見えてるんじゃないのか?」

「もう! そんなしょうもない事しないってッ!」

「ははっ。……くそ。笑うと痛ってぇな」

結輝は胸を摩りながらボヤいた。

「そう言えば、皆に連絡しないと。近況報告も兼ねて……」

そう言って悟は携帯を取り出すと、バキバキに壊れた携帯の残骸が出てきた。

「うわ、最悪……バッキバキだ」

「きっとあの戦いで壊れたんだろう」

俺が変わりに。と言い出した結輝の携帯は、いくら電源ボタンを押しても起動することはなかった。

「……電池、切れてんな。連絡出来ね〜」

結輝は、あ〜あと言わんばかりにベッドに倒れ込んだ。


「てかさぁ、悟の能力があれば、円香達見つけんの余裕なんじゃね……?」

「……確かにッ!」

「でも、悪い。今ちょっと……眠い……」

結輝の声は、少しずつ小さくなっていった。

「……明日こそ、乱子達を見つけようね」

「あぁ」

二人はそう言葉を交わすとすぐに眠りについた。



「お〜い、英雄さん達よぉ。夕飯の支度が出来たぞ〜」

午後七時。おじいさんは陽気に客室の扉を開けた。

「あっちゃあ……寝ちまったか。しゃあねぇ。明日また美味い飯作ってやろう」

そう呟くと、おじいさんは扉をそっと閉めた。



翌朝。厳密に言えば、朝では無いが。

二人は前日の疲れにより昼が過ぎた頃に目を覚ました。


「やぁ御二方。随分と遅いお目覚めだな!」

食卓には、豪勢な食事が並んでいた。

「うわ、すっごい……」

「ご飯まで頂くのは悪いと思ったけど……せっかくだし……」

悟はヨダレを垂らしながら結輝をチラチラと見た。

「……頂こうか」


数十分後、食卓からは綺麗さっぱり食事が無くなっていた。

「凄い食いっぷりだなぁ……」

おじさんは、悟の食べっぷりにたまげていた。

「……え? 何ふぁっへ?」

口に食べ物を頬張りながら悟は尋ねた。

「よく食うな。だってさ。てか口ん中のもん飲み込んでから喋れし」

頬杖をつきながら、結輝は笑った。



『お世話になりました』

「いやいや。こっちこそ、久しぶりに賑やかで楽しかったよ。またいつでもおいで」

おじさんは、寂しそうにお見送りしてくれた。


「いやぁ、良い人だったな〜」

「世の中、昨日の奴みたいなゴミも居ればおじさんみたいな良い人も居るんだな」

「皆優しければ、争いなんか起きないのにね」

そんな事をボヤきながら、二人は歩み始めた。


「よし、じゃあ……始めるよ」

人通りが少ないところまで歩いた後、そう言って目を瞑る悟を、結輝は黙って見守った。

「……こっちみたい」

南の方角に、体が勝手に動いた。

「確か、速度も変えられたんだよな? だったら……」

「そんな事したら、乱子達を昨日の奴と同じ目に合わせちゃうでしょ」

悟は、結輝が言おうとしている事を察し、口を挟んだ。

「……それもそうだな」



「そう言えば、さっき。何て念じたんだ?」

結輝は、乱子達の元へ向かっている途中に疑問をぶつけた。

「え、えっと……」

言葉に詰まった。

「……乱子の所……って……」

悟は、顔を真っ赤にして呟いた。

「乱子の所? 乱子"達"じゃなくて?」

「うん……」

「……お前、もしかして乱子の事」

悟は、黙ったまま頷いた。

「───嘘だろ!? そんな素振り一切見せてなかったじゃねぇかッ!!」

突然大声を上げたことで、傷口が開き、結輝はもがいた。

「だ、だって……結輝とすっごく仲良さそうだったし……俺、恋愛には奥手だし……」

「先に言っといて欲しかった。そしたらくっつけてやれたのに」

結輝は、深いため息をついた。

「そ、それに! 最初は二人の事を念じたんだ……! そしたら、何故か能力が発動出来なくって……」

「───じゃあ、まさか二人は別々の場所に居るかもって事か……?」

「多分、そうかも……」

「そうか……なら、どっちか選ばなきゃいけないって事になるな」

「うん……」

「なるべく急ごう」



歩く事、三時間程。悟は、とあるマンションの前で止まった。

「ここに、乱子が?」

「多分……」

悟は、体が斜め下に引っ張られるのを感じ取った。

「───地下だ。この建物の地下に、乱子はきっと居るッ!」

「地下か……地下には何があるんだ」


すると、丁度良くマンションに入りそうな女性を見かけ、結輝が声を掛けた。

「すみません。突然なんですが、この建物の地下って何がありますか?」

イケメンオーラを全開にし、言動の怪しさをオーラでかき消した。

「ひゃっ! ……た……確か、地下には"貯水槽"があったと思います……」

「貯水槽……」

「……なら、鍵がなきゃ入れなさそうだな」

結輝は、バツが悪そうに小さな声でボソッと呟いた。

「なら、管理人室に行こう」

悟は、そう結輝にもちかけた。

「良ければ、案内しましょうか……?」

女性は、頬を赤らめて提案した。

「大丈夫です。後は僕達で探します」

女性の提案に、結輝はペコリとお辞儀を返した。

「そ、そうですか……」

残念そうな顔をして俯く女性に、結輝はポケットからメモ帳とペンを取り出し、サラサラと描き始めた。


「これ、僕の連絡先です。今は予定があるので、後ほどお礼をさせて下さい」

「わぁ……ありがとうございますッ」

女性はルンルンでマンションの中に入っていった。


「その連絡先、本物なの?」

「なわけないだろ」

「……」



「どうだ? それっぽく見えるだろ」

「だね」

結輝の提案で、二人は作業着を購入した。整備士だと偽装する為だ。二人は、それに着替えた状態でマンションの中に入った。中に入ると、小さなエントランスがあり、二人はドア付近に備え付けられていた呼び出しボタンを押した。


『はい。どちら様でしょうか?』

インターホンに慣れていない悟は体をビクつかせた。

「ご依頼があって来ました。えっと───」

「貯水槽室はどちらにありますでしょうか?」

「ば、ばか……! 貯水槽室なんてある訳───」

結輝は悟に小声で注意した。

管理人は、社名を名乗らない結輝達を不審がりはしたが、結輝の美貌に目を取られ、確認を怠った。

「確かに、ご依頼しましたけど、あれ……それって今日でしたっけ?」

「はい。他の現場で一つキャンセルが出ましてね。予定より早めにお伺いするとお伝えした筈ですが……?」

苦し紛れの言い訳しか思いつかず、二人が作戦の失敗を覚悟した瞬間。

「失礼しました。扉を開きますので、入って右手奥の管理事務室に来てください。貯水槽室の鍵をお渡しします」

貯水槽室。その名前を知っていた事が、確認を怠った2つ目の理由だった。



二人は、虚偽による自信の無さが表面に出ないよう、必死に元気を取り繕いながら、管理事務室のドアをノックした。

「お待ちしておりました。こちら、貯水槽室の鍵です」

管理人は、結輝に鍵を手渡した。

「ありがとうございます」

結輝の爽やかなスマイルに、管理人は数年ぶりに心がときめいた。

「い、異臭が漏れているかも知らないので、貯水槽室に入る前にマスクを着用する事をおすすめします……」

「はい。分かりました……?」



「異臭って、何の事だろ……」

貯水槽室へ続く階段を降りながら、悟は話を振った。

「さぁな。ゴミでも詰まってんだろ……」

「貯水槽にゴミって……」

悟は、あはは。と人差し指で頬を掻いて苦笑いした。



二人は、貯水槽室の前に到着した。扉の隙間から、冷気が漏れ出している。鍵を開けて中に入ってみたが、"臭い"はほとんど感じられなかった。

「俺、閃いたんだけど」

「……何だよ」

突然変な事を言い出す悟に、結輝は少し嫌悪感を抱いた。

「きっと乱子は、俺と同じように能力に覚醒したんだよ! 敵に追われてたんだろう。その力を使ってこの貯水槽にたどり着いたんだ! それで、中の水を抜いて貯水槽に隠れたんだよ! ……異臭ってのは、隠れてた間お風呂に入れてなかったからで───」


悟が喋っている間に、結輝は貯水槽のハシゴを登り、蓋を開けていた。そこには、乱子が居た。




……水に浮かんだ。




水を吸っているせいか、体が少し膨らんでおり、色は青白く変色していた。発見が早かったのもあってか、髪の毛も抜け落ちておらず、それが誰か判別するのに申し分なかった。


「こ、これは……こんなの、乱子じゃない……」

結輝は、異臭の話が出た時から、感ずいていた。だが、考えたくなかった。気づきたくもなかった。悪い予感が、現実として叩きつけられた今も、結輝は信じていなかった。それが乱子だとは。


結輝は、咄嗟に倫理観に欠けた行動に出た。水を含み、重くなった水死体を貯水槽から引きずり出し、ズボンのポケットをまさぐった。すると───


「……ッ」

水死体のケツポケットから、綺麗なピアスが出てきた。



『これは…?』

とある日の夜。乱子は結輝にピアスを差し出した。二つあるうちの一つを。

『……これ、アタシのお母さんの形見なんだ。綺麗なピアスだろ?』

『何で、そんな大事なもん……俺に?』

『片方は結輝に持ってて欲しいんだ。これで、例え離れ離れになったとしても、お揃いのものを持ってるって考えたら、少し安心するだろ? それに……』

『このピアス、磁気を帯びてるんだ。だから、アタシ達がこれをお互いに持ってたら、ピアス同士が引き寄せあって、いつでも会える気がするでしょ?』

乱子はそう言って笑った。



「何で……何でピアス、持ってんだよ……乱子……ッ」

乱子の、少しプリンが目立つツムジ。そして、決定付けるかの様に所持していたピアス。この水死体は乱子だと、ここまでの証拠を突きつけられたら、認めざるを得なかった。



「……ひ、人呼ばねぇと」

「───す」

「……え?」

「殺す……アイツら全員……」

唇から血が出る程力強く噛み締め、悟はそう呟いた。

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