第六十八話「死闘」
「あ! 無いッ!」
「うわ! 何急にッ!?」
その頃、車内では円香の大声に昌幸が驚いていた。
「ぬいぐるみ、ボーリング場に置いてきちゃったかも!」
皆は車内を隈無く探してみたが、見つからなかった。
「ほんとだ……ごめんね。俺がもっと気にかけておけば良かった……」
悟は誠心誠意円香に謝った。
「謝らないでよ。私の管理不足が原因だから……」
「……取り行くか?」
乱子は優しく円香に尋ねた。
「うん! ……って」
円香は不意にトパーズを見ると、既に深い眠りに入っていた。
「困ったな。こうなったら全然起きないんだ。おいトパーズ、起きろッ!」
悟はトパーズの体を揺すった。
「……寝させてあげようよ。今日のトパーズ、珍しく私たちの為に色々してくれたし」
皆も円香の意見に賛同した。皆はトパーズを起こさないよう、静かに車から降りた。
…
それから数十分が経過し、何者かの殺気に感ずき、トパーズは目を覚ました。
眠気まなこでフロントガラスに目をやると、黒のタンクトップ姿になったコーンロウ男がこちらに向かって歩いてきているのが見えた。
「……誰だテメェ」
トパーズは車から降り、男にそう尋ねた。
男は何も答えず、トパーズに近づく。
「───近づくんじゃねぇッ! ぶっ殺すぞッ!!」
トパーズは警戒心を強めて構えを取ったが、男はそんな事気にせず近づくいてくる。
「言ったかんな。ぶっ殺すって」
忠告を聞かない男を瞬時に敵と判断したトパーズは、挨拶代わりのストレートを放った。
男はトパーズの拳を片手で掴み、自分の元に引き寄せて、もう片方の手でトパーズの肩を鷲掴んだ。
「───ッ!?」
男は肩と拳を強く握り、トパーズの骨を砕いた。
トパーズは痛みに耐えながら砕けた肩と拳を男に預けて、ドロップキックを食らわせた。重い一撃を腹にぶち込まれたはずが、男はトパーズの腕を離す事は無かった。
───こいつッ! 意地でも離さねぇ気か……!? 肩と手ぇ、もうとっくに砕けちまってんだぞッ!!
駐車場は、光がほとんと入ってこない為、薄暗く、人目につかない。思う存分暴れられると確信した男は、更なる追撃を試みた。
男は一旦手を離し、開放されたトパーズの髪の毛を掴んで、腹に膝蹴り、そのまま手を離さず顔に肘打ち。最後にボンネットにトパーズの顔面を叩きつけた。
「……死んだか」
男はそう声を漏らすと、トパーズの頭突きをもろに食らった。
「……オレァ、兄弟随一の石頭だ」
トパーズは、額から血を垂れ流しながら、目をかっぴらいてそう豪語した。
男は何も言わずにトパーズを背負い投げた。頭突きを食らったせいで赤くなった顎を撫で、地面に横たわるトパーズを睨みつけた。
男は、立ち上がりヨロヨロと向かってくるトパーズを蹴り飛ばし、トパーズは強く背中と後頭部を地面に打ち付けた。
「グッ……!?」
トパーズが反応する間も与えず、いつの間にか男は既にトパーズの目の前に居た。再びトパーズの髪の毛を掴み、車の上に放り投げた。
男も車の方へ移動し、馬乗りになる形でトパーズを殴り付け、フロントガラスを突き破った。
「───ッ」
男は、何も言わなくなったトパーズを車内から引き摺りだし、トパーズの鳩尾を殴り潰した。その衝撃は、ボンネットをも破壊した。
トパーズの口からは、内蔵を潰されたせいか大量の血が吹き出した。
それからトパーズは、車の上で腕を広げて動かなくなった。
「……やっと死んだか」
今度こそそう確信した男だったが、トパーズは震えながら男の襟を掴み、タンクトップを破いた。
「まだ意識があんのか。テメェは工崎を釣る餌だから、安心してくたばっとけ」
そう一声掛けると、男はトパーズの顔面を殴り砕いた。
男は、顔に飛び散った返り血を破れたタンクトップで拭った。
───もういいよな? カイト。殺すぜ?
男は、自身の腕がガシッと掴まれ、再び目を開けたその時。黄色い魔法陣のようなものが目の前に現れた。
今はまだ詳しく言えんけど、いずれドレッドの奴とブレイズの奴出します。




