第六十六話「砂漠横断」
「ここ、通るのか……」
ガソスタを出発して早4時間。時刻は15時を回っていた。結輝は、他の車の邪魔にならないよう道外れに一旦停車させ、ナビとにらめっこしながらそう呟いた。
辺り一帯が赤い砂漠に覆われ、砂で少し黄ばんだコンクリートの道路が、先の見えない所まで続いていた。
良い安牌に置いてある大きな岩や枯れ草も相まって、壊斗は西部劇の中に入り込んだかのように感じていた。
「広ぇな〜」
「先が見えないね〜」
「皆暑くないの……?」
「……皆。ここでグダグダしてたらあっという間に日が暮れちまう。先を急ごう」
そう言うと結輝は急いで車を発進させた。
…
それから2時間もしないうちに、辺りがどんどん暗くなっていった。
「暗くなんの早いね」
「ちょっと寒い……」
「な〜んか静かすぎて気味悪ぃ」
幾らヘッドライトで前を照らしても、街灯はおろか対向車とも全くすれ違わないので、夜の砂漠の不気味さが際立った。
「今日はここまでしようか」
結輝は「ふぅ」っと息を吐いた。
「でもどこに泊まんだ? この辺にホテルなんかねぇぞ?」
「いいから」
トパーズの言葉を無視し、結輝は道路から外れた所に車を停車させた。
結輝は車から降り、バックドアを開けると、大きな袋を取り出した。
「それ……さっき結輝が買ってたやつか」
壊斗は、結輝が数時間前に一人でホームセンターに立ち寄り、大荷物を抱えて戻ってきた事を思い出した。
辺りが暗かったので、結輝は地面を転がる枯れ草にマッチで火を付けた。
「お、明るくなったな」
「それより! 結輝さん、そろそろその袋の中身を教えてくださいよ!」
「『後で教える〜』とか言って全然教えてくれなかったじゃん!」
昌幸と悟は、結輝への不満を垂れ流した。
「時期にわかるさ」
そう言ったっきり、結輝は無言で何かを組み立て始めた。
「……テント?」
それが何かにいち早く気づいたのはトパーズだった。
「テントだって? じゃあ、この袋の中身は……」
壊斗は袋の中を漁ると、沢山のキャンプ用品が出てきた。
「……黙っててごめん。俺から言い出すのはちょっと……気恥ずかしくて」
結輝は照れ隠しをするかのように顔を腕で隠した。
「───皆と、キャンプしてみたかったんだ」
「え、何結輝、めっちゃ可愛いこと言うじゃん」
思わぬギャップを見せた結輝に、壊斗は驚いた。
「うっせぇな……」
結輝は、赤くなった顔を上げて壊斗を睨んだ。
結輝が二つ目のテントを組み立てている時、ある問題が発覚した。
不良品を掴まされたのだ。何をしても組み立つ事はなかった。
「どうするか……」
結輝は頭を悩ませた。
「テントなぁ……ちゃんと見たこたぁねぇが、下位の奴らが遠征の際によく使ってたって聞いてるぜ」
そう言いながら、トパーズはテントの構造をじっくりと観察した。
「何してんだ……?」
結輝はトパーズに率直な疑問をぶつけた。
「……っし。これならいけそうだ。盾も完璧に回復してっしな」
トパーズは嬉しそうに《黄盾》を召喚した。
そして、完璧とまではいかなくとも、ほぼ正確に盾でテントを再現した。
「す、凄……」
「ったりめぇだろ?」
トパーズは誇らしげに笑った。
…
あれから、火を強める為にホームセンターで買っておいた木材を入れ、キャンプファイヤーをした。
「綺麗……」
「幻想的ですね……」
円香と昌幸は目を輝かせて人1人分の大きさの火を見つめた。
悟と結輝も、目を合わせて微笑みあった。
壊斗とエメルも、火を見ながら他愛のない話をしていた。
「勿体ねぇよなトパーズの奴、飯も食わずにすぐ寝ちゃってさ」
トパーズは、自分で作った方のテントでいち早く眠りについていた。
「……今日はよく起きてた方だよ。トパーズ、暇さえあれば寝ちゃうから」
壊斗は、胡座をかき、後ろに手を着きながら笑った。
誰かのお腹が鳴り響き、飯にしようという話が出た。皆は結輝が買っておいてくれた缶詰を円になって食べた。
「たまにはこういうのも良いね」
「ね! これも美味しい……ッ」
「あれ、そういえば乱子は?」
そう。ついさっき乱子は、結輝に一声かけてテントに戻ってしまったのだ。
「気分が良くないらしい。ちょっと見てくるよ」
そう言うと、結輝はテントの方へ歩いて行った。
…
「今、皆でご飯食べてるけど、まだ食べれなさそうか?」
テントの外でしゃがんだ結輝は、乱子に気遣いの一言をかけた。
「……結輝か。あぁ、後で食べるよ」
乱子は、結輝相手に珍しく素っ気なく返事をした。
「袋から缶詰を何個か持ってきたんだ。ここに置いとくよ」
結輝は缶詰を数個テントの中に置いた。
「ちょっと待って!」
缶詰を置くためにテントの中に入れた手を掴まれ、結輝は体を震わせた。
「ちょっと話し相手になってくれよ……」
「……わかった」
そう言うと、結輝はテントの中に入った。
「……アタシさぁ、昔から人多いとこが苦手でさ。だからちょっと気疲れしただけだから」
乱子は、膝を抱えながら言葉を零した。
「あの出来事のせいか……?」
結輝の表情が曇った。
「ううん。あれはもう乗り越えた」
そう呟くと、乱子は結輝の肩にもたれかかった。
「やっぱ結輝と居る時が一番落ち着く」
「そうか? なら良かった」
結輝と乱子は、お互いの顔を見て微笑みあった。
「───ありがと。ちょっと元気出た。皆のとこ行こう」
「そうだな」
…
飯も食べ終え、火も鎮火し、すっかり夜が更け、円香と昌幸はうとうとし始めた。
「ほら、二人とも。子供はもう寝る時間だよ?」
悟は二人にそう声をかけた。
「やだ……まだ寝ない……」
「僕も……」
二人は必死に目を擦り、眠気を覚まそうとした。
「今日くらい、ちょっと夜更かしさせてやろうぜ」
「壊斗……良いの? いつもは率先して寝かすのに」
悟は驚いたように言葉を発した。
「……円香、昌幸。上見てご覧?」
壊斗は空を指差し、円香と昌幸は言われるがまま空を見上げた。
すると、二人は眠気が吹っ飛んだかのように目を輝かせた。
「うわ……綺麗……!」
思わずそう口にした円香とは反対に、昌幸は感動のあまり声が出なかった。
「空がくっきりとしてるから星が良く見える」
壊斗も、夜空を見上げて笑みを浮かべた。
「ほんとだ。凄い綺麗だね……!」
普段空なんて見ない悟もそう口に出てしまう程に、綺麗な空をしていた。
「私、今が一番楽しい……! 皆と一緒だから……!!」
皆も口を揃えて同調した。
「後はあの変な奴らが居なくなりゃ最高だな」
「うわッ! びっくりした、起きてたのかよ……」
隣で寝転びながらそう呟いたトパーズに、壊斗は肝を冷やした。
「確かにそうですね。あの人たち、しきりに壊斗さんを狙ってますが、何が目的なんでしょうね……?」
「……一応芹沢さんにも相談した。今調べてくれてるらしい」
「いつの間に?」
「昨日電話したんだ。携帯も買った事だし、近況報告も兼ねて」
「でもよォ、アイツら───」
「今はこの話は辞めよう。せっかくの雰囲気もぶち壊しになっちまう」
空気が重くなってる事を察した結輝は、話を打ち切った。
「……皆でゆっくり話す機会もあんま無いし、駄弁ろうぜ。普通にさ」
それから、暫くお喋りを続け、皆結構はしゃぎ疲れていたようで、すぐに眠りについてしまった。
王様ランキングのOP採用担当の人センスの塊だよね。しかも今期他のアニメもアーティストめっちゃ豪華すぎる。個人的にはメフィストが一番好き




