第六十一話「速攻退勤」
「良いぞサトルッ!」
トパーズは「よっしゃあッ!」とガッツポーズをとった。
「───はぁ…はぁ」
悟は、体の緊張が解け、疲労が一気に押し寄せてきて、息を荒らげた。
「一応"クルマ"とかいうやつ、爆発させてみるか?」
「いや…あのスピードで押し潰されたんだ。確実に死んでるよ。一応確認してみよう」
そう言った悟本人も、恐る恐るといった感じだった。
「…あんまり確認したくないな」
車の下がどうなっているか、想像しただけで壊斗はとても嫌な気持ちになった。
「───危ねぇ、もう少し遅かったら死んでたな」
たった今、押し潰されたハズの男が、血に塗れた状態で車の下から這い出てきた。
「生きてんじゃねぇかッ!!!」
慌てふためくトパーズ。それは悟も例外ではなく。だが、壊斗は一人、冷静に言葉を綴る。
「…トパーズ、悟。アイツらの後を追ってくれ」
「は……何でだよッ!?」
「そうだよ!…どうして?」
「もし、向こうに敵が待ち構えていたら」
『!?』
「…そうならない為だ。トパーズ…お前の盾はもう壊れちまった。戦えないお前に無理をさせたくないんだ」
壊斗は、修二の件を未だに引き摺っていた。もう、自分のせいであんな思いをして欲しくない。常日頃からそう思っていた。
「悟。トパーズを守ってやってくれ」
口では強がってはいるが、悟は壊斗の微かな震えに気が付いていた。
「せ、せめて俺だけでも!」
「俺は……自分がぶっ殺されることよりも、俺のせいで皆を巻き込む方が嫌なんだ。今頃危ない状況になってるかも知んない。…頼んだ」
それがただの強がりということが透けて見え、何故か悟の目には涙が溢れ出す。
「───壊斗は強い! 俺は知ってるからッ! 絶対死ぬなよッ!!」
悟は、走り際にトパーズにちょいと触れた。
「…オレはぜってぇ逃げねぇかんなッ! 共闘だッ!! カイトッ!!!」
そう声を大にしていたが、悟の能力によって問答無用でトパーズは悟の元に引き寄せられていった。
「…悪いな。待たせちまって」
「良いんだ。お前が大人しく投降してくれるってんだからな」
壊斗は男の発した言葉に、クスッと笑った。
「生憎だけど、投降するつもりなんてさらさらねぇよ。馬鹿が」
それが、精一杯の強がりだった。
「…安全圏から言われてもなぁ? もっと近づいて来いよ」
「敵の能力が大体分かってんのに、わざわざそれに引っ掛かりに行くアホが何処に居んだよ」
「…」
男は黙りこくった。
「…?」
それを見た壊斗は、どうしたんだ? と不思議がった。
「…はぁ、仕方ない。"暗記したもの"だけじゃ射程距離が短いし、範囲も狭まる。…あれ開きたくないんだけどな」
男はそう言って嫌そうにコートの内ポケットから古びれた本を取り出した。
下手な事をされる前に、壊斗は手首を下に曲げ、上に仰いだ。
たったそれだけの行動で、驚く程の強風を生んだ。コンクリートの地面は剥がれ、辺りの車は風によって吹き飛んだ。勿論、男の体も。
男は、本を両手で抱きかかえ、後方に飛ばされた。
「…最悪だ。被害が酷い」
惨事を目の当たりにした壊斗は、やっぱりな。という表情になった。
「───ッ!!!」
壊斗と男との間には、相当な距離があったが、何かを叫んでいるという事は分かった。
直後、壊斗を目掛けた風がとてつもないスピードでやってきた。
その生暖かく、不気味な風は、「何事か」と現場を確認しに来た野次馬の一人に直撃し、瞬時に頭部が切断された。
「きゃあァァァァァ!!」
「おい!…んだよこれッ!」
「───うッ!」
集まってきた人々が混乱する中、壊斗も思わず口を押さえた。遠目で見るのと、間近で見るのとでは訳が違った。
その異様な光景に逃げ惑う者、怖いもの見たさで死体に集まる者で、沢山の人々が行き交った。
「人が多すぎる…」
謎の力で一瞬にして戻ってきた男は、唖然とした顔でそう吐き捨てると、壊斗に背を向けて歩き出した。
「───待てよ! 最後に聞かせろッ!!」
壊斗は、逃げる男を見つけ、声を荒らげた。
「お前らの目的は何なんだッ!? 何で俺を狙うんだよッ!!」
男は、壊斗の問いかけに答えることはなく、混乱に乗じて人混みに紛れた。
紅白のサウシーとキングヌー良かったっすね〜vaundyと藤井風も楽しみです。
来年はキタニとimase出て欲しい




